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ぱりすたー-ほーるしょうこうぐん
パリスター-ホール症候群Pallister-Hall syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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[Orpha番号:ORPHA672]

パリスター-ホール症候群(Pallister-Hall syndrome:PHS)は、症状発現に多様性がある(pleiotropic)常染色体優性遺伝の先天異常症候群であり、視床下部過誤腫、下垂体機能障害、二分喉頭蓋、多指症のほか、まれであるが腎臓の異常や泌尿生殖器の先天異常などを特徴とする。

病気・治療解説

疫学

現在までに約100例が報告されている。

臨床像

PHSの患者のほとんどは、出生時に第3指もしくは第4指の骨性多指症または軸後性多指症(postaxial polydactyly)を呈する。いずれも皮膚性合指症および爪異形成を伴うことがある。顔面の特徴としては、短鼻、平坦な鼻梁、耳介低位、耳介後方回転などがある。口蓋裂、口蓋垂裂および多発性の頬小帯(buccal frenulum)を一部の患者で認める。無症候性の二分喉頭蓋はほぼ本症に特有の症候と言ってよいが、なかには重度の後部喉頭裂(posterior laryngeal cleft)で致死的な呼吸機能不全に至る患者もいる。視床下部過誤腫は無症状のことが多いが、汎下垂体機能低下症と関連している場合がある。重症例では急性原発性副腎不全(この用語を参照)を発症する場合もあれば、比較的軽度の副腎不全の場合もある。一部の症例では思春期早発症を認める。神経学的症候としては、笑い発作(顔しかめ、微笑みまたは笑いを呈する発作)やその他の発作などがある。無形成腎または異形成腎ならびに他の泌尿生殖器の異常が報告されており、具体的には腟閉鎖、水子宮腟症(hydrometrocolpos)、小陰茎または停留精巣などがある。その他の所見として、子宮内発育遅延、肺分葉異常、中間肢節短縮(mesomelic shortening)および上肢橈側の弯曲を伴う全身性の骨格形成異常、鎖肛、先天性心疾患(この用語を参照)などがありうる。

病因

PHSは、ソニックヘッジホッグ経路によって活性化される転写因子をコードするGLI3遺伝子(7p13)の変異に起因する。変異があると、胎児期の遺伝子の発現に異常が生じる。

診断方法

少なくとも1名の家系員にPHSがある患者の臨床診断基準として、次の2つの所見を要する:視床下部過誤腫(MRIで造影されない正中の視床下部腫瘤としてみられ、全てのパルスシーケンスで灰白質と等信号である)および中軸性多指症(mesoaxial polydactyly)。診断はGLI3の全配列解析によって確定される。

鑑別診断

鑑別診断としては、口-顔-指症候群6型(oral-facial-digital syndrome type 6)、Holzgreve-Wagner-Rehder症候群、McKusick-Kaufman症候群、Holt-Oram症候群、Bardet-Biedl症候群、Smith-Lemli-Opitz症候群のほか、頭蓋咽頭腫、Greig頭蓋多合指趾症候群(Greig cephalopolysyndactyly syndrome)、Ellis Van Creveld症候群(これらの用語を参照)、先天性視床下部過誤腫症候群などがある。

出生前診断

PHSを引き起こすGLI3変異の存在が判明している家系では、出生前遺伝子検査を考慮してもよく、胎児MRIでは視床下部過誤腫を除外できる。しかしながら、家族性のPHSは孤発性症例と比べて一般に軽症である。

遺伝カウンセリング

PHSは常染色体優性遺伝形式で、子世代の50%に継承されるが、表現型は非常に多様で、また多くの症例がde novo変異による孤発性である。

管理および治療

治療は対症療法による。画像検査として、MRIによる視床下部過誤腫の評価、手足および全骨格のX線検査、ならびに腎臓超音波検査を行うべきである。全ての内分泌機能の検査およびコレステロール生合成などの臨床検査を行うべきである。出生時には多指症のある患者の呼吸をモニタリングすべきであり、間接喉頭鏡検査を行うべきである。気管切開が必要になることもある。鎖肛があれば外科治療が必要である。複数のホルモン補充療法を生涯続けなければならない可能性がある。

予後

予後は反証が現れない限り極めて良好と考えてよいはずである。ただし、最重症の病型では、汎下垂体機能低下症と重度の気道奇形から死に至ることがあり、鎖肛も看過されると致死的となりうる。知的障害および行動異常は、本症候群と直接の関連がみられない。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Leslie BIESECKER
日本語翻訳版の監訳
岡本 伸彦(難治性疾患政策研究班「稀少てんかんに関する調査研究」)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/PallisterHallshokogun_JP_ja_PRO_ORPHA672.pdf
英語原文URL
http://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?lng=EN&Expert=672

最終更新日:2013年05月
翻訳日:2019年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断(出生前診断・着床前診断を含む)・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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