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ぬーなんしょうこうぐん
ヌーナン症候群Noonan syndrome

小児慢性疾患分類

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[Orpha番号:ORPHA648]

主に低身長、特異顔貌、先天性心疾患、心筋症、ならびに小児期の腫瘍発生リスク増大により特徴付けられ、多様な臨床像を示すまれな多系統疾患である。

病気・治療解説

疫学

ヌーナン症候群(NS)の出生時有病率は1:1000~1:2500と推定されている。

臨床像

NSは、典型的には新生児期に哺乳困難および発育不良の形で現れる。特徴的顔貌は、しばしば乳児期に明白になり、高く幅広い額、眼間開離、眼瞼下垂および眼瞼裂斜下、低位で厚く後方に回転した耳、深い人中、小顎症、巻き毛、ならびにときに翼状頸を伴う短頚がみられる。成長に伴い、顔は三角形に近づいていき、皮膚の皺が顕著になる。最も多い先天性心疾患は肺動脈弁狭窄症(50~60%)で、これに肺動脈弁形成不全症および種々の心奇形(心房中隔欠損症、心室中隔欠損症など)を伴う。出生前発症の肥大型心筋症はよくみられ(20%)、安定して経過することもあれば、急速に進行することもある。冠動脈の拡張やもやもや病が成長とともに発症することがある。成長障害は50%の患者に認められ、まれに成長ホルモンの欠乏を伴う。体重増加が困難で、多くの患者は生涯を通じて痩身である。主要な整形外科的症状として、胸骨変形、内反尖足、進行性の弯症(青年期に発症)などがある。皮膚が乾燥していることが多く、ときに手足の角化増殖がみられる。毛髪は巻き毛であるが、濃いこともあれば薄毛のこともある。末梢リンパ浮腫がみられることがあり、ときに進行性で広範囲に及ぶ。眼の異常(斜視、屈折異常)および歯叢生がよくみられる。難聴が10%に認められる。発語の遅延や学習障害が30~40%にみられる。知的障害(多くは軽度)が10~20%にみられる。統合運動障害(不器用)、注意欠陥障害、興奮、気分障害、および情動障害のほか、感情の識別や表現が困難なこともまれではなく、それにより対人関係が苦手になることがある。運動発達と思春期が遅れ、50%に低身長がみられる。片側性または両側性の停留精巣が3分の2の男児にみられ、男性では妊孕性の低下がみられるが、女性ではみられない。甲状腺機能障害が起きることがある。凝固異常が頻繁にみられるが、臨床的に有意となることはまれである。小児期では、腫瘍および白血病(特に若年性骨髄単球性白血病)のリスクが高く、20歳までの累積癌リスクは約4%である。一般的な成人期の癌のリスクは高くないようである。

病因

NSは全症例の50%がPTPN11(12q24.13)、15%がSOS1(2p22.1)の変異に起因し、さらにRAF1(3p25.2)、RIT1(1q22)、LZTR1(22q11.21)変異のほか、より頻度は下がるがRAS/MAPKシグナル経路に関連するその他の遺伝子変異に起因することがある。NSの臨床スペクトラムは原因遺伝子によって若干異なり、一部の病型は「ヌーナン様」(若年性骨髄単球性白血病を伴うNS様疾患、成長期脱毛を伴うNS様疾患)と記載される。

診断方法

診断は臨床像に基づいて行われるが、臨床像が非常に多様であるため、しばしば困難である。原因遺伝子の分子遺伝学的検査が診断および遺伝カウンセリングに役立つ。軽症例では診断がつかず、成人になってから重症度の高い子供が生まれて初めて臨床的に認識されることもある。

鑑別診断

鑑別診断としては、心臓-顔-皮膚症候群、コステロ症候群、神経線維腫症1型、多発性黒子を伴うヌーナン症候群(いずれもRASopathy)、Baraitser-Winter症候群、Aarskog症候群、Escobar症候群などが挙げられる。

出生前診断

絨毛または羊水細胞を用いた出生前診断が可能である。NSの出生前の徴候は非特異的であり、具体的には頸部腫脹(nuchal translucency肥厚)、嚢胞性ヒグローマおよび/または腹水(胎児死亡につながることがある)、羊水過多、心筋症、先天性心疾患などが挙げられる。

遺伝カウンセリング

NSの遺伝形式は常染色体顕性(優性)であるが、例外的にLZTR1の場合は顕性(優性)と潜性(劣性)の両方がありうる。罹患家系には遺伝カウンセリングが勧められる。

管理および治療

治療には集学的なアプローチが必要である。心血管系の異常は標準的アプローチにより治療する。成長障害に対する成長ホルモン治療は、依然として議論がある。発達障害には早期から対処すべきである。

予後

臨床像が、成人期に軽い/認識されない症候を呈する程度のものから、乳児期から生命を脅かす心疾患や悪性腫瘍を伴う重症例まで多岐にわたるため、予後も様々である。重度の心筋症は早期死亡につながることがある。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Alain VERLOES

日本語翻訳版の監訳
緒方 勤(IRUD臨床専門分科会 小児科(一般)委員/浜松医療センター 院長補佐)

日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Noonan_syndrome_JP_ja_PRO_ORPHA648.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/648

最終更新日:2020年4月
翻訳日:2023年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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