AlströmしょうこうぐんAlström症候群Alström syndrome
小児慢性疾患分類
- 疾患群-
- -
- 大分類-
- -
- 細分類-
- -
[Orpha番号:ORPHA64]
錐体-桿体ジストロフィー、難聴、肥満、インスリン抵抗性および高インスリン血症、2型糖尿病、拡張型心筋症(DCM)、ならびに進行性の肝および腎機能障害を特徴とするまれな多系統疾患である。
病気・治療解説
疫学
Alström症候群(AS)の有病率は、欧米では100万人に1人とされている。血縁度の高い集団や地理的に隔離された集団でははるかに高い頻度が報告されている。世界的にも950人以上の症例が確認されている。
臨床像
臨床的特徴、発症年齢、重症度は家系間および家系内で大きく異なる。網膜の錐体-桿体ジストロフィーは通常、生後数週間以内に発生し、初発症状は眼振と極度の羞明または光過敏である。これは進行性の眼病変であり、通常は20歳までに失明に至る。ほとんどの患者で、緩徐に進行する軽度から中等度の両側感音難聴が生じる。ASには多臓器線維症の兆候がある。拡張型心筋症は約2/3の患者において、乳児期または青年期に発症する。患者は年齢にかかわらず突然うっ血性心不全になるリスクがある。過食を伴う肥満、インスリン抵抗性、および高インスリン血症は、一貫してみられる早期の特徴である。肝機能障害は通常、脂肪肝を伴って小児期に始まる。一部の症例では、肝硬変、門脈圧亢進症、および肝不全が生じることもある。慢性呼吸器疾患(気管支炎/肺炎)、肺高血圧症、再発性中耳炎、および高トリグリセリド血症がしばしばみられる。緩徐進行性の腎症から末期腎不全に至ることもある。患者には特異顔貌(薄毛、早発性の前頭部脱毛、深く窪んだ眼、丸い顔と厚い耳)がみられる。ほとんどの患児で広く、厚く、平坦な特徴的な足と短く太い指趾(多指症や合指症はない)がみられる。男性での性腺機能低下症と女性でのアンドロゲン過剰も報告されている。知能はほとんどの患者が正常であるが、精神運動発達および知能発達の障害を示唆している報告もある。時間をかけて緩徐に発生する表現型もあるように、非古典的な臨床像も報告されている。
病因
ASは、ALMS1遺伝子(2p13.1)の変異により生じる。その分子生物学的機能は現在のところ不明であるが、線毛機能、細胞周期の制御、および細胞内輸送における役割が示唆されている。
診断方法
診断は観察される臨床的特徴(大基準/小基準)に基づいて行われ、典型的には遺伝子検査で確認される。家族歴はASの診断において大基準とされている。
鑑別診断
鑑別診断としては、バルデー-ビードル症候群(Bardet-Biedl syndrome)、Biemond症候群2型(Biemond syndrome type 2)、ウォルフラム症候群(Wolfram syndrome)、Cohen症候群(Cohen syndrome)、家族性孤発性拡張型心筋症(familial isolated DCM)、ミトコンドリア病などがある。
出生前診断
以前にALMS1変異が家族で同定されている場合は、出生前検査を勧めてもよい。
遺伝カウンセリング
ASは常染色体劣性形式で遺伝し、遺伝カウンセリングが推奨される。
管理および治療
管理には、慎重なモニタリングと出現した臨床症状に対する治療を含めるべきである。羞明は赤橙色の処方レンズにより軽減できる。全例で失明に至るため、点字、コンピュータスキル、および適応的な生活技能を早くから患者に教示していくことが不可欠である。両側にデジタル補聴器を使用することで聴力が向上できる。心不全の主な治療は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、β遮断薬、利尿薬、およびジゴキシンによる。糖尿病は低脂肪低糖食、運動、メトホルミン、チアゾリジン系薬剤、インクレチンアナログ、およびSGLT2阻害薬で管理できる(2/3の症例で有益)。門脈圧亢進症は通常、β遮断薬、食道静脈瘤の硬化療法、および結紮術により治療される。これらが不成功に終わる症例では、経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術が必要になることがある。腎疾患のある患者では、ACE阻害薬を考慮してもよい。数例で腎移植が成功している。新薬が臨床試験に入っており、その中には抗線維化および抗炎症特性を有する化合物であるPBI-4050(第2相試験が完了)や、ASを含む遺伝性肥満のまれな型における過食の治療のためのセトメラノチド(setmelanotide)が含まれる。
予後
AS患者は寿命が短くなることがあるが、早期の診断および介入により、進行を遅らせて寿命とQOLを向上させることが可能である。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Dr Pietro MAFFEI
日本語翻訳版の監訳
小川 渉 (神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門)
小島 伸介(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Alstroemshokogun_JP_ja_PRO_ORPHA64.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/64
最終更新日:2019年8月
翻訳日:2021年2月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
この疾患に関するピックアップ記事、イベントはありません