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あるぽーとしょうこうぐん
アルポート症候群Alport syndrome

小児慢性疾患分類

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[Orpha番号:ORPHA63]

血尿を呈し末期腎臓病(ESRD)に進行する糸球体腎炎を特徴とするまれな疾患であり、しばしば感音性難聴、ときに眼の異常を合併する。

病気・治療解説

疫学

アルポート症候群(AS)の世界的な有病率は不明である。フィンランドでの出生時の有病率は1/53,000と推定されている。米国では、新規にESRDに至る小児患者の最大2%をアルポート症候群が占めると報告されている。

臨床像

ASの臨床病型は、X染色体連鎖(XL)型、常染色体潜性(劣性)(AR)型、および常染色体顕性(優性)(AD)型に分類され、それぞれASの全症例の80%、15%、5%を占める。ASは小児期から高齢期までのいずれの時点でも発症するが、XL型およびAR型は一般に早期(小児期または青年期)に発症する。XLASの男性は重症の臨床像を呈し、非常に早期から顕微鏡的血尿が生じ、続いて微量アルブミン尿、高度蛋白尿へと進展し、40歳までにESRDへと進行する。XLASの女性は、無症状または顕微鏡的血尿が生涯続く(腎機能は保たれる)ものから若年で腎不全を来すものまで極めて重症度に差がある。XLAS患者では感音性難聴がよくみられる。ときに眼の異常(例、前部円錐水晶体、斑点網膜、角膜病変)が小児期後期または成人期早期にみられ、これらは一般に女性より男性に多くみられる。まれに、平滑筋腫(食道、気管気管支、または女性器)を合併することがあり、その場合はXL型びまん性平滑筋腫合併アルポート症候群(X-linked diffuse leiomyomatosis-Alport syndrome:XL-DLAS)と呼ばれる。ARASの重症度はXLASの男性に類似するが、その経過に性差はなく、家族歴もみられない。ADASは無症状のもの(通常、良性家族性血尿として知られている)から、AD形式をとる蛋白尿や巣状分節性糸球体硬化症(血尿がないか、初発時にはみられない症例)まで、多様な臨床像を呈する。ESRDへの進行は通常XLASの場合より遅く、腎外症候はよりまれである。

病因

ASでは、糸球体基底膜の構成に不可欠なIV型コラーゲンに構造的異常がみられる。XLASは、IV型コラーゲンα5鎖をコードする遺伝子COL4A5(Xq22.3)の変異により発症する。ARASおよびADASは、それぞれIV型コラーゲンα3鎖およびα4鎖をコードする遺伝子COL4A3(2q36.3)およびCOL4A4(2q36.3)のどちらの変異でも発症する。XL-DLASはCOL4A5(Xq22.3)およびCOL4A6(Xq22.3)の両方にまたがる異常で発症する。

診断方法

診断は、家族歴、臨床徴候、腎生検検体の電子顕微鏡所見(糸球体基底膜の異常を認める)、ならびに腎および皮膚生検検体の免疫組織化学所見に基づく(ただし全ての患者で確定診断できるわけではない)。分子遺伝学的検査により確定診断に至る。

鑑別診断

鑑別診断としては、泌尿器疾患および癌に関連した血尿、IgA腎症、MYH9異常に関連した腎症、良性家族性血尿などがある。

出生前診断

家系内の患者で原因遺伝子変異が判明している場合は、リスクのある妊娠では出生前および着床前診断が可能である。

遺伝カウンセリング

AS症例の大半はXL顕性(優性)遺伝形式で遺伝するが、ARおよびADの症例も報告されている。家系内の患者には遺伝カウンセリングを提案すべきである。

管理および治療

ASの治療は対症療法のみであり、その主な目的はESRDへの進行を遅らせることにある。具体的にはアンジオテンシン阻害薬(例、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬)や利尿薬の投与、塩分制限などが考えられる。重症例には透析や腎代替療法が必要になる。定期的な聴力検査および眼科的フォローアップが推奨される。必要であれば補聴器を処方すべきであり、眼の異常には外科的介入を考慮することができる。

予後

ESRDに進行(しばしば若年成人でみられる)するため、ASの予後は不良である。しかしながら、腎移植は通常問題なく行うことができる。ただし、まれに抗IV型コラーゲン抗体が産生される。腎外症状が生活の質に影響を及ぼすことがある。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Laurence HEIDET
Pr Rachel LENNON
日本語翻訳版の監訳
野津 寛大(IRUD臨床専門分科会 腎疾患 委員/神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野 教授)
日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Alport_syndrome_JP_ja_PRO_ORPHA63.pdf
英語原文URL
http://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?lng=en&Expert=63

最終更新日:2020年3月
翻訳日:2023年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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