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こてんがたゆうもうさいぼうはっけつびょう
古典型有毛細胞白血病Classic hairy cell leukemia

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA58017]
血液または骨髄中に異常なBリンパ球(中型の細胞で、豊富で不整な淡い細胞質、毛状の細胞質突起/波立った細胞質境界、球状または豆状の核、核小体の欠如を伴う)がみられ、脾臓および末梢血中の汎血球減少、著明な単球減少、顕著な易感染性を特徴とする、緩やかに進行するまれなタイプの慢性白血病である。特徴的な免疫表現型は、CD11c+、CD25+、CD103+、CD123+で、ほとんどの症例でBRAF変異を認める。

病気・治療解説

疫学

古典型有毛細胞白血病(HCLc)は、白血病全体の2%を占める。年間発生率は、全世界で1/213,000~2,860,000と推定される。HCLcは白人に多くみられる。男性に多く、男女比は4:1である。

臨床像

発症は一般に中高年にみられ、平均年齢は55歳である。HCLcの症状は、正常な血球産生の障害に関連するものである。赤血球の産生低下は貧血に、白血球の産生低下は感染症の増加に、そして血小板数低下は出血または皮下出血傾向につながる。肝脾腫に起因する腹部不快感もよくみられる症状である。ほとんどの症例で脾腫が認められ、かつては80%以上の症例で巨大脾腫に分類されていた。近年では早期診断のおかげか巨大脾腫は少なくなっている。軽度の肝機能障害を伴う肝腫大は20%に、リンパ節腫脹は10%に認められる。合併症として、繰り返す感染症、出血、皮下出血、貧血、および脾腫による腹部不快感などがある。脾破裂を起こすこともある。HCLcの患者では、しばしば単球減少が認められる。また、本疾患に起因する免疫不全や免疫抑制治療により免疫力が低下しているため、日和見感染症にかかることがある。

病因

病因は不明である。造血器腫瘍の家族歴、アシュケナージ系ユダヤ人、化学物質(例、殺虫剤)への職業的または環境的曝露が危険因子として考えられている。MAPキナーゼ経路の恒常的活性化を引き起こすBRAFV600E変異もHCLc患者の大半に認められる。

診断方法

診断は身体診察、血液検査、および骨髄生検の結果に基づく。腹部CTにより、リンパ節腫脹が同定されることもある。診断の確定には、末梢血または骨髄の免疫表現型の評価が不可欠である。特徴的な免疫表現型マーカーにはCD11c、CD25、CD103、CD123陽性などがある。ほとんどの患者でBRAF-V600E変異も認められる。

鑑別診断

鑑別診断として、有毛細胞白血病亜型(hairy cell leukemia variant)、脾辺縁帯リンパ腫、脾臓びまん性赤脾髄小細胞型B細胞リンパ腫(splenic diffuse red pulp B-cell lymphoma)などある。

管理および治療

HCLcは、化学療法(クラドリビンまたはペントスタチン)または生物学的療法(インターフェロンα、リツキシマブ)により治療できる。プリンヌクレオシドアナログであるクラドリビン(欧州および米国で適応が承認されている)またはペントスタチンは、生物学的療法と比ベて完全寛解の割合が高い。化学療法による完全寛解または部分寛解は、約80~90%の患者で達成される。活動性感染症がある患者では、骨髄抑制が深刻化かつ長期化するおそれがあるため、クラドリビンの使用前に感染症の制御を試みることが重要である。感染症が制御されていない患者の治療は困難である。Vermurafenibは、生命を脅かす制御不能な感染症があり、BRAF変異陽性が証明されている一部の患者において、有効な治療を行うまでの橋渡しとして使用されている。このような患者では、感染症の制御により血液学的パラメータに改善がみられたという報告もあるが、さらなるエビデンスが必要である。有毛細胞白血病におけるvermurafenibの適応外使用の有効性が報告されており、特に再発または抵抗性症例における寛解の達成に貢献している。現在、化学免疫療法におけるこの薬剤の使用について研究が進められている。初回寛解が長期間続いた後に再発した有毛細胞白血病患者では、プリンアナログもしくはプリンアナログと抗CD20モノクローナル抗体(リツキシマブ)の併用により再治療が成功することがある。再発を繰り返す患者および標準治療に抵抗性を示す患者には、抗CD22免疫毒素結合体(anti-CD22 immunotoxin conjugate)であるmoxetumomab(米国で承認)を検討することもある。軽症例で増殖が遅い場合、即時の治療を必要とせず、何年間も安定した病勢を維持する患者も少数いる。しかし、血液学的パラメーターの密なフォローアップにより、重篤な汎血球減少を避けることが必要である。

予後

ほとんどの患者が10年以上生きられる。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Michael GREVER
日本語翻訳版の監訳
山下 浩平(IRUD臨床専門分科会 血液疾患 委員/京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学 准教授)

日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Classic_hairy_cell_leukemia_JP_ja_PRO_58017.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/58017

最終更新日:2020年4月
翻訳日:2022年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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