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らんばーと-いーとんきんむりょくしょうこうぐん
ランバート-イートン筋無力症候群Lambert-Eaton myasthenic syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA43393]

ランバート-イートン筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome:LEMS)は、シナプス前終末の異常による自己免疫性の神経筋伝達障害であり、変動する筋力低下および自律神経機能障害に、しばしば小細胞肺癌を合併することを特徴とする。

病気・治療解説

疫学

世界における有病率は1/250,000~1/333,300と推定されている。

臨床像

典型例の発症年齢は40歳以降であるが、どの年齢でも発症しうる。LEMSは、近位筋の筋力低下、自律神経障害、および腱反射の減弱の三徴を特徴とする。腫瘍、その多くは小細胞肺癌(この用語を参照)が、LEMS患者の50~60%にみられる。小脳失調が生じることがあり、その場合はほぼ必ず小細胞肺癌を伴う。

病因

LEMS患者の約90%が、シナプス前P/Q型電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)に対する病原性自己抗体を有する。これらのチャネルの機能障害または減少により、アセチルコリンがシナプス前終末から放出されるのが阻害され、その結果神経筋伝達が障害され、筋力が低下する。

診断方法

古典的三徴に加えて(常に全てがそろうとは限らない)、LEMSの診断は、放射性免疫沈降法によるVGCC抗体の同定および/または反復神経刺激(RNS)試験における次の典型的な異常所見に基づく:低振幅の複合筋活動電位(CMAP)、低頻度の刺激に対する漸減反応、高頻度の刺激に対するまたは短い運動後の漸増反応(運動後増強[postexercise facilitation])。単線維筋電図(SFEMG)の異常により、神経筋接合部疾患を同定できるが、非特異的である。LEMSの診断は、ほぼ常に小細胞肺癌の発見に先立つ。

鑑別診断

LEMS患者の60%には当初、重症筋無力症(MG)、封入体筋炎、ギラン-バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)(これらの用語を参照)、腰部脊柱管狭窄症、早期のパーキンソン病(Parkinson disease)、下肢のパーキンソニズムといった別の診断が下される。

管理および治療

LEMSを根治できる治療法はなく、対症療法が主体となる。具体的には3, 4-diaminopyridine phosphate(DAP)などが使用され、これは一般に忍容性良好かつ有効である。一部の患者では、ピリドスチグミンと3,4-DAPの併用により、さらなる効果が得られることが示唆されている。対症療法で不十分な場合、プレドニゾン単独またはアザチオプリンとの併用による免疫抑制療法で、疾患の長期コントロールが得られる可能性がある。プラズマフェレーシスおよび免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)の効果は短期的である。腫瘍をコントロールする上でもLEMSの臨床症状を改善する上でも、何らかの腫瘍があれば腫瘍に対する有効な治療が必須である。

予後

一般に、LEMSは対症療法および免疫抑制療法への反応が良好である。しかし、LEMSは患者の日常生活やQOLに影響を及ぼす可能性がある。余命は肺癌の有無に左右される。癌がなければ余命は正常であると考えられている。小細胞肺癌(この用語を参照)は非常に侵襲度の高い癌であるため、LEMSと小細胞肺癌のある患者の予後は比較的悪いことが多い。生存期間の中央値は17~24カ月であるが、長期の寛解または治癒が得られる患者も約20%いる(LEMS のない小細胞肺癌での割合は2%未満である)。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Maarten TITULAER
日本語翻訳版の監訳
吉川 弘明(難治性疾患政策研究班「神経免疫疾患のエビデンスによる診断基準・重症度分類・ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証」)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/LambertEatonkinmuryokushokogun_JP_ja_PRO_ORPHA43393.pdf
英語原文URL
http://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?lng=EN&Expert=43393

最終更新日:2013年11月
翻訳日:2019年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断(出生前診断・着床前診断を含む)・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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