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いじょうべーたりぽたんぱくけっしょう
異常βリポ蛋白血症Dysbetalipoproteinemia

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA412]
まれな複合型高脂血症(家族性III型高脂血症:HLP Ⅲ型)は、中間比重リポ蛋白(IDL)によって輸送されるコレステロールおよびトリグリセリドの高値と進行性アテローム性動脈硬化および若年性心血管疾患のリスク上昇を特徴とする。

病気・治療解説

疫学

一般集団での異常βリポ蛋白血症の有病率は1/10,000と推定されている。男性に多くみられる(男女比は約2:1)。本疾患が成人前の男女や閉経前の女性に起こることは非常にまれである。

臨床像

ほとんどの患者は無症状である。成人期に現れることのある臨床徴候として、眼瞼の黄色腫(眼瞼黄色腫)、手掌の一過性の黄色腫(扁平型の手掌黄色腫)、肘または膝関節部の結節性黄色腫がある。圧痛のある肝腫大を認めることがある。患者は高度に進行性の動脈硬化症を発症し、早発性の心血管疾患(脳卒中、冠動脈疾患および末梢動脈疾患)に進行する可能性がある。著明な高トリグリセリド血症を示す患者は、急性膵炎を発症することもある。

病因

本疾患は、アポリポ蛋白EをコードするAPOE遺伝子(19q13.31)の変異により生じ、アポリポ蛋白Eは、トリグリセリドを豊富に含むリポ蛋白レムナント(すなわち、コレステロールとトリグリセリドの量がほぼ等しいIDL)の細胞内取込みに介在し、抗酸化作用および抗炎症作用を有する。本疾患を悪化させる可能性がある因子として、食事因子、代謝因子、ホルモン因子のほか、慢性炎症、外来物質(例:免疫抑制薬、レチノイド、抗うつ薬)、その他の遺伝的な補助因子(例:APOA5、APOC3、LIPC、LPLの変異体)などがある。

診断方法

診断は、総コレステロール、トリグリセリドおよびアポリポ蛋白Bの空腹時血清中濃度の高値と高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールの血漿中濃度低値(40 mg/dL未満)を呈する異常なリポ蛋白プロファイルに基づく。遺伝子検査により診断が確定する。若年成人では、動脈の画像検査で無症候性動脈硬化の徴候が認められることがある。

鑑別診断

鑑別診断としては、動脈硬化性の他のあらゆる病型の高脂血症(家族性高コレステロール血症や家族性高トリグリセリド血症など)がある。

遺伝カウンセリング

遺伝子型がAPOE ”E2”である症例の大半では、遺伝形式が半優性(semi-dominant)または条件付き劣性(conditionally recessive)である。この遺伝子型の保持者は、他の代謝、外因性因子、または遺伝因子がある場合にのみHLP 3型の表現型を呈する。ただし、単独で本疾患の発生に十分な影響を示す、ヘテロ接合体または複合ヘテロ接合性のまれなAPOE変異体を保有する患者もおり、そのような症例の遺伝形式は常染色体優性または半優性である。

管理および治療

治療法としては、飽和脂肪酸の少ない食事、運動、脂質低下薬(例、フィブラート系、スタチン系)などがあり、これらで通常は数カ月以内の完全な回復に十分である。明らかな心血管および/または膵臓症状を伴う重症例では、強力な治療(例:PCSK9[プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9]阻害薬、ApoC3、MTP[ミクロソームトリグリセリド輸送蛋白]阻害薬、LDLアフェレーシス)を提案してもよい。

予後

無治療の場合、早発性および反復性のアテローム血栓イベントのリスクが一般集団の5~10倍になる。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Pascale BENLIAN
日本語翻訳版の監訳
斯波 真理子(難治性疾患政策研究班「原発性高脂血症に関する調査研究」)
金田 秀昭(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)

日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Ijobetaripotanpakukessho_JP_ja_PRO_ORPHA412.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/consor/cgi-bin/Disease_Search.php?lng=EN&data_id=3264

最終更新日:2019年8月
翻訳日:2021年2月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断(出生前診断・着床前診断を含む)・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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