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えるどはいむ-ちぇすたーびょう
エルドハイム-チェスター病Erdheim-Chester disease

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA35687]

エルドハイム-チェスター病(Erdheim-Chester disease:ECD)は、非ランゲルハンス細胞組織球症(non-Langerhans form of histiocytosis)の一病型で、様々な症候を特徴とする多系統にわたる疾患であり、骨痛を伴う骨格異常、眼球突出、尿崩症、腎障害、中枢神経系の異常、心血管系の異常などがみられる。

病気・治療解説

疫学

有病率は不明である。1930年以来、500例以上の症例(そのうち小児は15例未満)が報告されている。

臨床像

ECDは通常、40~60歳の成人に発症し、男女比は3:1である。臨床経過は無症候性の病型から多系統にわたり生命を脅かす病型まで様々である。ECDに特有の特徴として、長管骨の骨硬化があり、その症状は骨痛として現れ、主に下肢遠位部が侵される(全症例の50%)。下垂体への浸潤が起きると、尿崩症が引き起こされ、まれに高プロラクチン血症およびゴナドトロピン分泌不全を来すことがある。全身症状として、発熱、筋力低下、体重減少などがある。他の臓器に浸潤すると、頭蓋内圧亢進症、眼球突出、乳頭浮腫、副腎機能不全、眼瞼黄色腫、丘疹結節状の皮膚病変などが生じうる。中枢神経系が侵されると、小脳症状および錐体路症状や頭痛、痙攣発作、認知障害、脳神経麻痺、感覚障害などが生じうる。しばしばみられる心血管系の異常は「coated aorta」と呼ばれる。腎動脈が侵されることもあり、その場合は腎血管性高血圧を来す。心膜が侵されると、心タンポナーデを合併することがある。右房への偽腫瘍浸潤もみられる。肺浸潤による呼吸困難が報告されている。偽性後腹膜線維症(pseudo retroperitoneal fibrosis)では、ときに両側性水腎症を合併する。

病因

病因は不明であるが、反応性または腫瘍性の疾患であると考えられている。ECD患者においてインターフェロンα(IFN-α)、インターロイキン(IL)-7、IL-12、単球走化性蛋白-1(monocyte chemoattractant protein-1)の高値とIL-4の低値を認めることは、全身の免疫系がTh-1優位に傾いていることを裏付けている。ECD 症例の半数以上でBRAF癌原遺伝子の変異が検出されたという最近の知見により、ECDの病態生理は以前にも増して複雑化している。

診断方法

特有の組織学的所見は、泡沫状の組織球が眼瞼黄色腫または黄色腫として組織に浸潤している組織像である。生検検体の免疫組織化学染色では、CD68陽性かつCD1a陰性となる。骨のX線撮影では、通常は長管骨に両側対称性の骨皮質硬化がみられ、テクネチウム99mによる骨シンチグラフィーでは、下肢の(ときに上肢も)長管骨遠位端に対称性の異常集積が大多数の症例で認められる。腹部CTでは「hairy kidney」(50%)を呈し、これは生検が可能である。

鑑別診断

鑑別診断としては、ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis)、Rosai-Dorfman病(Rosai-Dorfman disease)、高安動脈炎(Takayasu arteritis)、ウェゲナー肉芽腫症(Wegener granulomatosis)、原発性下垂体炎、慢性再発性多発性骨髄炎(これらの用語を参照)、悪性腫瘍、神経サルコイドーシス、抗酸菌感染症、代謝性疾患などがある。

管理および治療

一次治療は、ECDの全病型に対して標準のIFN-αまたはペグ化IFN-αの投与であり、異常が中枢神経系と心臓に限局している場合は、より高用量(9百万単位、週3回)の投与が長期に必要となる(忍容性が良好な場合)。骨痛の緩和にビスホスホネート系薬剤を投与してもよい。眼窩浸潤があって他の治療に抵抗性を示す患者には、クラドリビンを投与できる。Anakinraは、IFN-αが無効であった患者においてECDの軽症型の症状を改善することができる。最近では、インフリキシマブとベムラフェニブでいくらかの成功が収められており、後者はBRAFV600変異のある患者に対して非常に期待がもてるようである。疾患活動性の評価としてPETが推奨される。

予後

ECDの予後は様々であるが、中枢神経系浸潤のある患者では概して予後不良となる。IFN-αが使用されるようになるまでは、診断後の平均生存期間は19.2カ月であったが、現在ではIFN-αの投与により、死亡率は26%まで下がっており、5年生存率は68%となっている。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Julien HAROCHE
日本語翻訳版の監訳
黒川 峰夫(難治性疾患政策研究班「Erdheim-Chester病に関する疫学調査」)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/ErdheimChesterbyo_JP_ja_PRO_ORPHA35687.pdf
英語原文URL
http://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?lng=EN&Expert=35687

最終更新日:2013年6月
翻訳日:2019年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断(出生前診断・着床前診断を含む)・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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