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てんとうてんかん(うえすとしょうこうぐん)
点頭てんかん(ウエスト症候群)Infantile spasms syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA3451]

生後2~12カ月、まれに生後24カ月までの乳児期のてんかん性スパズムの発症を特徴とする、まれなてんかん症候群である。先行する病歴がない場合もあれば、基礎にある原因を反映した病歴がある場合もある。てんかん性スパズム、ヒプスアリスミア、発達の停滞または退行の古典的三徴は、歴史的にウエスト症候群(West syndrome)と呼ばれている。

病気・治療解説

疫学

出生時の推定有病率は1/1,650~1/20,000である。男女とも罹患し、発生率は男性の方が高い。

臨床像

てんかん性スパズムが観察される典型的な発作型である。この発作は複数回にわたる体軸筋の短時間の強直性収縮で構成され、1回の収縮は典型的には3秒未満で治まり、屈筋、伸筋、またはその両方が収縮する可能性がある。発作は通常群発的に起こり(シリーズ形成)、群発を通じて運動徴候が次第に目立つようになり、しばしば数分間にわたって続き(30分以上続くこともある)、しばしば覚醒時にみられる。スパズムは対称性のこともあれば非対称性のこともあり、軽い頭部の頷きや眼球や下顎の動きといったわずかなものでしかない場合もある。スパズムが発症するまでの発達は、病因に応じて正常なことも異常なこともある。典型的には、スパズムの発症とともに発達の遅滞、停止、または退行がみられる。スパズム発症の数日から数週間前に視覚的注意のみの退行や社会的反応性の変化がみられることがある。発達の停滞および退行は、典型的には迅速かつ効果的な治療を行わないと悪化していく。点頭てんかんの病因は様々であり、ダウン症候群や結節性硬化症、15番染色体逆位重複症候群(inverted duplicated chromosome 15 syndrome)、まれな代謝性疾患などの他の症候群の部分症である場合もある。

病因

点頭てんかんについては、遺伝子の病的バリアントおよび染色体異常との関連が報告されているが、乳児スパズムが高頻度にみられる症候群と関連がみられるものとしてはSTXBP1、TSC1、TSC2、21トリソミーなどがある。その他の一般的な遺伝学的病因としては、ARX、CDKL5、SPTAN1などがある。構造的異常としては、出生後に顕在化した出生前および周産期病変や大脳皮質形成異常(malformations of cortical development)などがある。

診断方法

診断はてんかん性スパズムの発症に基づいて下され、直接の目撃か自宅で撮影されたビデオでの観察でもよいが、筋電図検査を併用した脳波ないしビデオ脳波検査によって確定すべきである。発作間欠期脳波では、覚醒時および/または睡眠時記録で観察されるヒプスアリスミアか、やや軽度の背景脳波異常に伴う焦点性ないし多焦点性のてんかん性異常のいずれかが認められる。発作時記録は、速波に続いて高振幅の全般性鋭波または徐波がみられ、それに低振幅波が続くか重畳するのが特徴である。筋電図は、てんかん性スパズムをミオクロニー発作や強直発作と鑑別する上で参考になる。神経画像検査は症候性の病因を特定するのに有用であり、MRIでは半数から3分の2の患児で異常がみられ、後天性または先天性の局所性、多巣性、またはびまん性病変を認めることがある。代謝検査により代謝性疾患を除外する。既知の構造的病因が検出されなかった患者では、染色体マイクロアレイ、遺伝子パネル、またはエクソーム解析を含む遺伝学的検査を考慮すべきである。

鑑別診断

群発する短時間の発作性イベントは、てんかん性か非てんかん性かを問わず、てんかん性スパズムと鑑別すべきである。具体的には、乳児ミオクロニーてんかん、驚愕病、身震い発作、乳児の自己刺激行動、胃食道逆流(サンディファー症候群[Sandifer syndrome])などがある。

遺伝カウンセリング

遺伝学的病因が同定された場合、以降の妊娠に対するカウンセリングが重要となる。遺伝形式は病因に依存する。

管理および治療

第1選択の薬物療法は、ビガバトリン単剤またはコルチコステロイドとビガバトリンの併用である。診断が確定したら、可及的速やかに治療を開始すべきである。手術適応がある患者を同定するために、てんかん診療の三次医療機関への早期紹介を考慮すべきである。

予後

点頭てんかんは、レノックス-ガストー症候群(Lennox-Gastaut syndrome)や薬剤抵抗性焦点てんかんなど、他の病型のてんかんや他のてんかん症候群に進行することがある。患児の大半は、発作の転帰にかかわらず、発達予後が不良である。発達遅滞の重症度には、主に病因とスパズムの発症から治療開始までの時間が関連する。少数の患者では、スパズムも認知機能への影響もない完全な回復を達成することがある。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Rima NABBOUT

日本語翻訳版の監訳
丸山 幸一(IRUD 臨床専門分科会 神経・筋疾患委員/愛知県医療療育総合センター・中央病院 小児神経科部長)

日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Infantile_spasms_syndrome_JP_ja_ORPHA3451.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/3451

最終更新日:2022年4月
翻訳日:2024年3月

本要約の翻訳は、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会に所属される専門医や、その他の希少疾患専門医のご協力の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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