ぴっと-ほぷきんすしょうこうぐんピット-ホプキンス症候群Pitt-Hopkins syndrome
小児慢性疾患分類
- 疾患群-
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- 大分類-
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- 細分類-
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[Orpha番号:ORPHA2896]
知的障害、特徴的な顔面形態異常、および不規則な異常呼吸の合併を特徴とするまれな多重先天異常症候群。
病気・治療解説
疫学
信頼できる有病率は公表されていないが、英国およびオランダにおける既知の罹患者数に基づくと、有病率は1/225,000~300,000と推定される。
臨床像
特徴的顔貌は、狭い額、薄い外側の眉毛、広い鼻梁と鼻稜、広い鼻端、突出した顔面中央部、広い頬、広い口、肥厚した、または折りたたまれた耳輪によって認識される。罹患者の半数で著しく早期に発症する近視があり、斜視も比較的よくみられる。精神運動発達遅滞は早期発症かつ重症であり、筋緊張低下、歩行開始の遅れ、不安定な歩行、完全な、またはほぼ完全な言語発達の欠如を伴う。内臓の奇形はまれである。重度の便秘および胃食道逆流がよくみられ、50%の指は細く、単一手掌屈曲腺を示す。小頭症はまれであり、様々なタイプの痙攣発作が罹患者の40%に起こる。呼吸障害は小児期(早期)または青年期に出現し、患者が覚醒しているときにのみ起こる。典型的には過換気の発作は誘発因子なく起こり、2-5分間持続し、しばしば無呼吸が続く。過換気および無呼吸は独立して起こることもある。頻度は極めて多様である。外性器および内性器の発育不全(小陰茎、停留精巣、陰唇癒合)は、男女ともに通常起こる。
病因
本症候群は、普遍的に発現する転写因子であるb-HLHをコードするTCF4遺伝子(18q21)のde novoヘテロ接合体変異により生じる。公表されている症例の2~3%で、生殖細胞系または低悪性度の親モザイクが報告されている。
診断方法
診断は診察、ならびに細胞遺伝学的および分子遺伝学的検査に基づく。
鑑別診断
主要な鑑別診断としては、アンジェルマン症候群(Angelman syndrome)、レット症候群(Rett syndrome)、モワット-ウィルソン症候群(Mowat-Wilson syndrome)などがある。
出生前診断
発端者の親が妊娠した際には、羊水穿刺による変異の検出について話し合うべきである。
遺伝カウンセリング
遺伝形式は常染色体優性であるが、ほとんどの症例はde novoで発生するため、兄弟の再発リスクは低い。経験的再発リスクは2%である。
管理および治療
管理には生涯にわたる集学的アプローチが必要になる。小児科医、神経科医、心理学者/精神科医、言語聴覚士による定期的なフォローアップが大きな影響を与える。個々のニーズに合わせて医療サービスを調整するためには、発達評価が必要である。罹患した家族および介護者には、症候群特異的情報小冊子の使用が推奨され、呼吸障害に関する適切な情報は、管理ミスを避けるために特に重要である。
予後
本疾患の経過は進行性ではない。縦断的データは平均余命を決定するには不十分であるが、成人期までの生存は典型的であり、現在のところ平均余命が限られているという根拠はない。自律性は限られている可能性が高く、罹患者はおそらく介護者からの生涯にわたる支援を必要とするであろう。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Pr R.C. [Raoul] HENNEKAM | ITHACA*
日本語翻訳版の監訳
小崎 健次郎(難治性疾患政策研究班「先天異常症候群領域の指定難病等のQOLの向上を目指す包括的研究」)
金田 秀昭(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/PittHopkinsshokogun_JP_ja_PRO_ORPHA2896.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/2896
最終更新日:2020年02月
翻訳日:2021年2月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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