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うぉるふ-ひるしゅほーん症候群
ウォルフ-ヒルシュホーン症候群Wolf-Hirschhorn syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA280]

頭蓋顔面の典型的特徴、出生前および出生後の成長障害、知的障害、重度の精神運動発達遅滞、痙攣発作、ならびに筋緊張低下を特徴とする発達障害である。

病気・治療解説

疫学

本疾患の出生時有病率は1/20,000~1/50,000と推定されている。ウォルフ-ヒルシュホーン症候群(WHS)は男性より女性に多くみられる(1:2)。

臨床像

著明な子宮内発育遅滞と出生後の体重増加遅延がみられる。特徴的顔貌としては、前額部に続く広い鼻梁(思春期前の方がより明確に視認できる)、小頭症、眉間が突出した高い額、高い弓状の眉毛、眼間開離、内眼角贅皮、耳瘻孔/副耳を伴う形成不良の耳、短い人中、下向きの口角、および小顎症を特徴とし、一部の症例では口唇口蓋裂がみられる。骨格異常としては、椎体奇形を伴う脊柱後弯症または側弯症、過剰な肋骨または肋骨融合、内反足、裂手症などがある。筋発育不全を伴う筋緊張低下がみられ、それにより頻回の哺乳/摂食困難や発育不良を来す可能性がある。発達遅滞は重度であり、大半の患児は括約筋の調節を獲得できず、独力での食事や更衣ができず、歩行可能になるのは補助の有無にかかわらず50%未満である。知的障害は中等度から重度で、軽度のことはまれである。発話は喉音または二音節音に限られるが、少数の患者は単純な文を発話できようになる。痙攣発作は新生児期から生後36カ月までの間に頻回にみられ(患者の最大95%)、発作の種類は様々で、しばしば発熱によって誘発される。半数の患者でてんかん重積状態が起こり、非定型欠神発作を起こす患児もいる(30%以上)。約半数の患者では小児期に痙攣発作がみられなくなる。大半の患者に中枢神経系の構造的異常があり、主に脳梁の菲薄化などがみられる。その他の頻度の高い異常としては、先天性心疾患(50%)、眼科学的異常、聴覚異常、歯牙異常などがある。患者は気道感染症と中耳炎を繰り返すことがあり、これは抗体欠損(IgAまたはIgG2サブクラス)による。尿路奇形が報告されており、男性患者の半数に尿道下裂および停留精巣がみられる。

病因

WHSは4番染色体短腕の欠失に起因し、4p16.3の末端部より0.4まで~1.9 Mbの範囲に位置する1.5~1.6 Mbの領域内の遺伝子が関与している。3~5 Mbを超える欠失には心疾患および口蓋裂のリスク上昇が関連するようである。

診断方法

診断は身体診察に基づき、分子遺伝学的または細胞遺伝学的分析により確定する。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)とゲノムワイドの染色体マイクロアレイ解析(CMA)が選択すべき方法である。脳波検査では90%の患者で典型的所見が認められる。

鑑別診断

鑑別診断には、セッケル症候群(Seckel syndrome)、チャージ症候群(CHARGE syndrome)、スミス-レムリ-オピッツ症候群(Smith-Lemli-Opitz syndrome)、Opitz G/BBB syndrome、ウィリアムズ症候群(Williams syndrome)、レット症候群(Rett syndrome)、アンジェルマン症候群(Angelman syndrome)、スミス-マギニス症候群(Smith-Magenis syndrome)など、発育不全、知的障害、および/または顔面形態異常を呈する多くの症候群が含まれる。

出生前診断

家系内で4p16.3の染色体再構成がすでに同定されている場合は、出生前検査が可能である。

遺伝カウンセリング

大半が散発例であるが、均衡型の再配列を有する親から不均衡型転座が遺伝することがある。

管理および治療

治療は対症療法であり、多彩なリハビリテーションプログラム、適切な発作治療(フェノバルビタール;バルプロ酸単剤またはバルプロ酸とエトスクシミドの併用;レベチラセタム)、および摂食機能療法を含む集学的管理が必要である。

予後

WHS患者は成人期まで生存する。大半の患者はほぼ全面的なケアを必要とし、約30%は部分的に自立するが日常生活の監督を必要とする。65%以上では全体的な健康状態は良好である。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Agatino BATTAGLIA

日本語翻訳版の監訳
清水 健司(静岡県立こども病院 遺伝染色体科(ゲノム医療センター)科長)

日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Wolf-Hirschhorn_syndrome_JP_ja_ORPHA280.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/280

最終更新日:2021年5月
翻訳日:2024年3月

本要約の翻訳は、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会に所属される専門医や、その他の希少疾患専門医のご協力の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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