こうがんししょうこうぐん1がた口顔指症候群1型Orofaciodigital syndrome type 1
小児慢性疾患分類
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[Orpha番号:ORPHA2750]
口顔指症候群1型(orofaciodigital syndrome type 1:OFD1)は、男性では死に至る一群の線毛病に属するまれな神経発達障害であり、外部奇形(頭蓋顔面および指)を含む様々な異常を特徴とし、中枢神経系のほか、女性では内臓(腎臓、膵臓、卵巣)が侵されることもある。
病気・治療解説
疫学
推定年間発生率は1/250,000~1/50,000出生と報告されている。ほぼ全例が女性であるが、例外的な男性症例も報告されている。
臨床像
男児のOFD1は、ほぼ全例が出生前に死に至る。女性患者では表現型が非常に多彩であり、重度の多発奇形や内臓障害がみられる症例もあれば、腎嚢胞や形態異常のみの症例もある。臨床像としては、95%を超える症例で口腔の奇形(先が分かれた舌[lobed tongue]、舌の過誤腫または脂肪腫、舌癒着、口蓋裂または高口蓋、余剰な数の歯肉小帯[accessory gingival frenulae]、歯の欠失[歯数不足、この用語を参照]または数の異常、エナメル質形成異常、および不正咬合)、約87%の症例でみられる顔面形態異常(眼間開離または眼角開離、鼻翼低形成、上口唇の正中裂または偽裂[median cleft or pseudocleft upper lip]、小顎症、眼瞼裂斜下など)、異常な毛髪/脱毛、顔面の一過性の稗粒腫(evanescent facial milia)などの頭蓋顔面異常、約88%の症例でみられる手指の奇形(短指症、合指症、第5指の斜指症、重複母趾/幅広い母指、軸前性または軸後性多指症)、約50%の症例でみられる脳の異常(脳内の嚢胞、脳梁無形成、ダンディー-ウォーカー奇形[Dandy-Walker malformation]を伴う場合がある小脳無形成)や軽度から中等度の知的障害などの中枢神経系障害がみられる。内臓が侵される場合としては、多発性嚢胞腎(少なくとも50%)や肝臓および膵臓の嚢胞性疾患などがある。聴覚異常も約6%で報告されている。
病因
OFD1は、中心体および一次線毛の基底小体で発現して発生に重要な役割を果たす蛋白をコードするOFD1遺伝子(Xp22)の変異により生じる。一部の症例では遺伝子全体の欠失がみられる。高い浸透率が報告されているが、表現度には大きなばらつきがある。
診断方法
診断は口腔、顔面、および指の異常に基づき、出生時に下されることが多い。それ以外の患者では、小児期後期または成人期になって多発性嚢胞腎が発見されて初めて疑われることになる。診断方法としてはOFD1の直接配列決定などがあるが、陰性となる症例では、直接配列決定で同定できないゲノム再構成を野生型アレルの存在により同定するために遺伝子量解析が行われる。
鑑別診断
鑑別診断としては、他の病型のOFD症候群(OFD2、3、4、5、6、8、9)や家族性の嚢胞性腎疾患(これらの用語を参照)などがある。メッケル症候群(Meckel syndrome)とジュベール症候群(Joubert syndrome)(これらの用語を参照)も考慮すべきである。
出生前診断
リスクが高い妊娠には出生前診断および着床前遺伝子診断が推奨され、家系内で疾患を引き起こしている変異を同定する必要がある。
遺伝カウンセリング
OFD1はX連鎖優性形式で遺伝する。遺伝子変異は一般的にde novoに発生する。女性症例の約75%は家系内で唯一の患者である。リスクのある近親者にはキャリア検査が推奨される。
管理および治療
治療としては、口唇口蓋裂、舌の結節、および余剰な小帯に対する審美または再建手術、余剰な歯の抜歯、不正咬合に対する歯科矯正、合指症を修復するための手術のほか、腎疾患および痙攣発作に対するルーチンの管理を行う。管理には、学習障害に対する特殊な教育的評価が必要になる。
予後
男児の死亡は通常、妊娠初期または中期に起こる。女性患者の予後は一様でないが、合併する奇形および/または内臓障害、重症度、治療法、ならびに疾患経過に左右される。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Pr Brunella FRANCO
日本語翻訳版の監訳
小崎 健次郎(難治性疾患政策研究班「先天異常症候群領域の指定難病等のQOLの向上を目指す包括的研究」)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Kuchikaoyubishokogun1gata_JP_ja_PRO_ORPHA2750.pdf
英語原文URL
http://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?lng=EN&Expert=2750
最終更新日:2012年9月
翻訳日:2019年3月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断(出生前診断・着床前診断を含む)・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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