がんめんけんこうじょうわんがたきんじすとろふぃー顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーFacioscapulohumeral dystrophy
小児慢性疾患分類
- 疾患群-
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- 大分類-
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- 細分類-
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[Orpha番号:ORPHA269]
顔面、肩、四肢の筋肉に局所的に生じる進行性の筋力低下を特徴とする、まれな神経筋疾患である。
病気・治療解説
疫学
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は、まれな家族性疾患であり、有病率は1/8,000~1/20,000と推定されている。遺伝性ミオパチーの中で3番目に頻度の高い病型である。
臨床像
あらゆる年齢で発症する。病状の進行は通常緩徐であるが、一部の患者では、安定した期間に続いて急速に増悪する期間がみられる。早期発症のFSHDでは、筋力低下がより広範に及ぶ傾向がある。初発症状はしばしば顔面の筋力低下(口笛、笑顔、閉眼が困難)であるが、主訴は肩関節の障害(腕の挙上困難、翼状肩甲、および肩の傾斜)となる可能性がある。進行すると、前腕の筋力低下と手関節伸展筋の筋力低下がみられるようになる。早期には腹筋と下肢遠位筋(主に前脛骨筋)も侵されることがあるが、後期には下腿近位筋が侵される。筋障害の非対称性がしばしば報告されている。臨床像に有意なばらつきがあり、非定型の臨床像も報告されている。まれに感覚、心臓、および神経の徴候がみられることがある。
病因
FSHDには2つの遺伝的亜型が同定されており、すなわち、4qA型の4番染色体におけるD4Z4反復配列の病的短縮に関連する古典型(FSHD1)と、SMCHD1(18p11.32)の変異に関連するFSHD2である。FSHD1では、反復配列の短縮に4番染色体上の局所的な低メチル化とクロマチン弛緩の変化が関連しており、それにより骨格筋において有害なDUX4(4q35.2)遺伝子の発現が起きる可能性が高まる。FSHD2では、SMCHD1に変異を有する患者に4番および10番染色体の著明な低メチル化が認められるが、これにより4番染色体から有害なDUX4転写物が発現できるようになっている。
診断方法
FSHD1の診断は、4番染色体のpermissive 4qAアレル上にD4Z4の病的短縮(D4Z4反復数が10未満)を同定することで下される。この状況では、D4Z4ユニットの残存数と重症度との間に負の相関がみられる。FSHDの表現型にD4Z4の病的短縮との関連がみられない場合と、D4Z4反復数7~10かつ重症型と診断されたFSHD1家系においては、SMCHD1変異をスクリーニングすべきである。
鑑別診断
非定型例では、併存する病態を除外するために正確な検査を行うべきである。鑑別疾患としては主に肢帯型筋ジストロフィーがあるが、このほかにも酸性マルターゼの欠損による糖原病、遅発性の内分泌性ミオパチー、骨パジェット病と前頭側頭型認知症を伴う封入体ミオパチー、近位神経障害、ニューロン障害など、肩甲骨の翼状変形を呈する神経筋疾患がある。
遺伝カウンセリング
遺伝形式はFSHD1とFSHD2ともに常染色体顕性(優性)である。FSHD1の浸透は不完全であり、保因者の約30%が本疾患を発症しない。本疾患の徴候を全く示さない両親から生まれた小児が重症型を呈することがあるが、これはモザイク現象で説明できる。一部の家系では、FSHD1とFSHD2両方の遺伝学的状態の二遺伝子遺伝によって重症度が変化する可能性がある。したがって、遺伝カウンセリングと出生前診断は容易ではない。
管理および治療
治療は対症療法であり、他動運動と鎮痛薬投与による関節のこわばりおよび疼痛の予防を目的とする。重症例では、人工呼吸器による呼吸補助が必要になることがある。外科的治療としては肩甲骨の固定を行い、腕の可動域改善につながることがある。
予後
予後は機能喪失の程度に依存する。呼吸機能が障害されなければ、平均余命は短縮しないが、これはまれな状況である。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Pr Sabrina SACCONI
日本語翻訳版の監訳
水澤 英洋(IRUD 臨床専門分科会 神経・筋疾患 チーフ/国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 理事長特任補佐・名誉理事長)
日本語版URL
https://www.orpha.net/pdfs/data/patho/Pro/other/Facioscapulohumeral_dystrophy_JP_ja_ORPHA269.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/269
最終更新日:2020年11月
翻訳日:2024年3月
本要約の翻訳は、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会に所属される専門医や、その他の希少疾患専門医のご協力の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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