ぴあそんしょうこうぐんピアソン症候群Pierson syndrome
小児慢性疾患分類
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[Orpha番号:ORPHA2670]
先天性ネフローゼ症候群、早期発症腎不全、小瞳孔を伴う眼球異常、および重度の神経発達障害の合併を特徴とするまれな原発性糸球体疾患。
病気・治療解説
疫学
これまでに文献で報告されているのは70例未満である。
臨床像
典型的な臨床像は、先天性の小瞳孔と重度の蛋白尿である。蛋白尿は通常、出生時または出生直後はネフローゼの範囲内であるが、急速に進行して早期発症の腎不全に至る。組織学的所見は通常、小さく凝縮して見える糸球体で、そのメサンギウム領域にはコラーゲン組織が認められることを特徴とするびまん性メサンギウム硬化症である。眼の異常は通常両側性であるが、重症度にばらつきがあり、小瞳孔、虹彩低形成、後部胎生環、巨大角膜または微小角膜、白内障、円錐水晶体、第一次硝子体過形成遺残、網膜剥離、緑内障、眼球癆などがみられる。神経学的症候としては、重度の広汎性発達遅滞、著明な筋緊張低下、運動障害、失明などがある。本疾患には、眼球または精神発達の異常を伴わず遅発性の蛋白尿のみを呈する軽症の表現型を呈する症例もあることに注意すべきである。
病因
ラミニンβ2をコードするLAMB2遺伝子(3p21)の変異が同定されている。ラミニンβ2は、糸球体基底膜や神経筋接合部のほか、内眼筋、水晶体、および網膜に発現している。
鑑別診断
眼球異常を伴う早期発症かつ重度の蛋白尿を呈する疾患はまれである。したがって、典型的な症例では、本疾患を疑うことは比較的容易である。ロウ症候群(蛋白尿[多くは低分子蛋白]、先天性白内障)や腎コロボーマ症候群(PAX2遺伝子の病原性変異による)などが鑑別診断となりうる。
出生前診断
出生前診断は困難であるが、腎臓のエコー輝度上昇所見と羊水過少を認める症例で本疾患が疑われることがある。遺伝学的検査によってのみ、早期に信頼性の高い出生前診断を行うことができる。出生前診断は、罹患同胞において疾患原因変異がすでに同定されている家系では可能である。
遺伝カウンセリング
本疾患は常染色体潜性(劣性)遺伝形式として遺伝する。両親が本疾患の無症候性キャリアである場合、子供が罹患するリスクは25%である。少なくとも1人の罹患者がいる家系で変異が同定されている場合、家系内の健常者に対して保因者診断を行うことができる。
管理および治療
特異的な治療法はない。蛋白漏出は軽度であるため、尿への蛋白の漏出を防ぐための腎摘出が必要となることはまれである。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、尿中への蛋白の漏出を減らし、腎保護作用により末期腎不全(ESKD)への進行を遅らせる可能性がある。また、腎移植などの腎代替療法も有効である。これまでのところ、腎移植後の移植腎に疾患が再発したというエビデンスは報告されていない。網膜剥離発症の可能性があり、眼科医による慎重なフォローアップが必要である。
予後
腎予後は不良で、大半の患児が生後1年以内に腎不全になる。視力予後も一般に不良であり、光覚なしから20/200までとなる。通常、軽度から重度の知的障害が認められる。腎代替療法を行った症例で成人までの生存例が報告されている。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Prof Kandai NOZU
Prof Iijima KAZUMOTO
Dr Kusuhara SENTARO
日本語翻訳版の監訳
野津 寛大(IRUD臨床専門分科会 腎・泌尿器疾患 委員/神戸大学大学院医学研究科 内科系講座 小児科学分野 教授)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Pierson_syndrome_JP_ja_PRO_ORPHA2670.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/2670
最終更新日:2007年2月
翻訳日:2022年3月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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