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せんじょうしせんぼはんしょうこうぐん
線状脂腺母斑症候群Linear nevus sebaceus syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA2612]
脂腺母斑と、多くの器官系、最も一般的には眼、骨格および中枢神経系に影響を及ぼす広範囲の異常との関連を特徴とするまれな母斑症候群。

病気・治療解説

疫学

表皮母斑(EN : epidermal nevus)(単独所見または症候群として)の発生率は出生1,000人あたり1~3人、脂腺母斑(NS)は全体の半数と推定されている。脂腺母斑症候群(NSS)はまれであり、一般集団における正確な有病率および発生率は不明である。

臨床像

NSSは皮膚以外の症状を伴うNSである。NSは典型的には出生時に無毛の黄桃色、サーモン色のBlaschkoidプラークとして出現するが、臨床的には乳児期後期または幼児期早期まで母斑が出現しないことがある。NSは症例の3分の2で頭頸部に認められ、大きな広範な母斑または顔面中心の位置がNSSとより関連している。思春期にはNSは肥厚し、疣贅様の外観を呈することがある。晩年には、NS内で良性新生物が増殖することがある;まれに悪性新生物が増殖することがあり、基底細胞癌の特異的なリスクは1%未満である。中枢神経系(CNS)の所見は最も一般的な皮膚以外の異常であり、特に知的障害(ほぼ80%)および痙攣発作(57%、全身性強直、強直間代性、焦点性運動、点頭てんかん)がみられる。脳の構造的異常(半側萎縮、血管異常、片側巨脳症、脳回または後頭蓋窩異常)が起こることもあるが、CNS所見を有する患者の75%では正常な画像所見が得られる。この症候群には他の多くの臓器系も関与している可能性があり、最も一般的なものは眼科的異常(斜視、脂肪類皮腫 (lipodermoids)、網膜異常、コロボーマ、白内障、角膜血管新生)および骨格的異常(前頭隆起、骨格形成不全、脊柱側弯症および脊柱後側弯症、ビタミンD抵抗性くる病、低リン血症)である。その他のまれな所見としては、内分泌系、心血管系、泌尿生殖器系および口腔(エナメル上皮腫、歯牙腫、巨細胞腫のまれな新生物を含む)がある。

病因

NSSは孤発性の疾患である。表皮母斑(Epidermal nevus : EN)症候群は接合後変異の結果である。KRAS、HRASおよびNRASにおける変異は、単離されたNSおよびNSSの両方で報告されている。これらの同じ遺伝子における変異は、ケラチノサイトEN(KEN)で見られる。

診断方法

診断には、出生前、発育、および家族歴を含めるべきである。皮膚の診察では、毛髪で覆われた領域を含む全ての皮膚、粘膜、眼(特に結膜、強膜、および眼外の動き)を評価すべきである。神経学的および眼科的検査を慎重に行うべきである。頭部または頸部にNSがあり、発達遅滞がある小児には、脳画像検査を行うべきである。骨格検査では、脊柱後側弯症、歩行、および四肢の長さを評価すべきである。皮膚生検および関連する臨床検査(血清/尿カルシウムおよびリン酸、肝臓および腎臓の機能検査)を適宜行うべきである。上記に従って専門医への紹介が推奨される。

鑑別診断

鑑別疾患には、皮膚骨格性低リン酸血症症候群 (cutaneous-skeletal hypophosphatemia syndrome)、面皰母斑症候群(nevus comedonicus syndrome)、Becker母斑症候群(Becker nevus syndrome)、Phakomatosis pigmentokeratotica、CHILD症候群、PIK3CA関連過成長症候群(PIK3CA-related overgrowth syndrom)のスペクトラム、分節性増殖-脂肪腫症-動静脈形成異常-表皮母斑症候群 (Segmental outgrowth-lipomatosis-arteriovenous malformation-epidermal nevus syndrome :SOLAMEN)、およびCLOVES症候群などがある。

遺伝カウンセリング

NSSは接合後の突然変異によって孤発的に起こる。生殖細胞系に生じた場合はその突然変異の重篤度が生命と両立しないと考えられるため、遺伝性とはならないようである。

管理および治療

NSSの管理は、侵された臓器系および障害の程度に基づいて個別化し、集学的に行う。NSは悪性の可能性が低いため、乳児期にはもはや予防的に切除されない。思春期では、患者は美容上の理由から肥厚した病変の切除を選択することがある。病変内に生じうるあらゆる増殖に対して生検が推奨される。基底細胞癌の誤診を防ぐために、経験豊富な皮膚病理医に組織を送るべきである。

予後

予後は臨床像の重症度と多系統病変の程度に依存する。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Sarah ASCH
Dr Jeffrey SUGARMAN
日本語翻訳版の監訳
呉 繁夫(東北大学大学院医学系研究科小児病態学分野)
金田 秀昭(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Senjoshisenbohanshokogun_JP_ja_PRO_ORPHA2612.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/2612

最終更新日:2020年2月
翻訳日:2021年2月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断(出生前診断・着床前診断を含む)・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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