1. HOME
  2. 髄膜腫

ずいまくしゅ
髄膜腫Meningioma

小児慢性疾患分類

疾患群-
-
大分類-
-
細分類-
-

[Orpha番号:ORPHA2495]

髄膜の原発性腫瘍を特徴とする大半が良性のまれな腫瘍性疾患であり、通常は頭蓋内に発生するが(約90%)、脊髄髄膜腫も生じることがある。臨床症状は腫瘍の発生部位に関連したもので、具体的には痙攣発作、局所神経脱落症状(感覚運動症状、視覚症状、脳神経機能障害)、血管合併症(脳血管閉塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症)、慢性の頭蓋内圧亢進、神経認知障害、膀胱/肛門括約筋の制御不能などがある。

病気・治療解説

疫学

成人では、頭蓋内髄膜腫は中枢神経系腫瘍の約30%を占めている。男女比は1:3.5である。

臨床像

髄膜腫はどの年齢層にも発生するが、大半は20歳台から50歳台で診断される。髄膜腫は典型的には、硬膜付着部の広い卵円形または半球状の病変として現れる。大半がテント上に発生し、頭蓋冠または頭蓋底の髄膜や大脳鎌に沿った部位または大脳鎌近傍の部位にみられるが、幕状骨の表面や小脳橋角部、視神経鞘、脳室、または脊柱管の中にみられることもある。病変は局所浸潤、細胞の特徴、および細胞分裂活性に基づきグレードI(良性、最も多い)、II(異型性)、III(悪性)に分類される。骨破壊は異型性または悪性髄膜腫を示唆する。隣接する頭蓋骨の骨増殖は良性髄膜腫を強く示唆する。15の免疫組織学的亜型が存在し、特徴はその亜型に依存するが、典型的には渦状紋構造、核内偽封入体、pseudo-syncytial growth、ソマトスタチン受容体2型(SSTR2)および上皮膜抗原の高発現などがある。

病因

腫瘍はくも膜の髄膜上皮細胞から発生した可能性が最も高い。髄膜腫で高頻度に変異する遺伝子がいくつか検出されており、具体的にはNF2、AKT1、SMO、PIK3CA、BAP1、TERT(プロモーター)、SUFU、SMARCE1、TRAF7などがある。

診断方法

画像診断には造影MRIが用いられる。造影CTも用いられることがあり、腫瘍内の石灰化、隣接骨の骨増殖、および骨内の腫瘍増殖(特に頭蓋底髄膜腫)の検出に有用である。SSTRリガンドを用いるPETベースの画像検査も有用な診断法であり、病変を正常組織や他の病変と鑑別する目的で利用できる。画像検査で髄膜腫が強く示唆される場合、組織学的な検証は必須とならないが、他の腫瘍の転移などまれな鑑別診断を除外することが推奨される。さらに、現在の診断方法では、治療方針に影響を与える可能性がある腫瘍の悪性度を予測することができない。

鑑別診断

主な鑑別診断としては、硬膜転移やくも膜下腔に進展した原発性神経膠腫、造血器腫瘍(例、脳実質外の非ホジキンリンパ腫)、下垂体腫瘍(例、腺腫または頭蓋咽頭腫)などの他の頭蓋内病変のほか、炎症性疾患(関節リウマチ、多発血管炎性肉芽腫症、脳実質外の神経サルコイドーシス)や感染症(結核、梅毒性ゴム腫)などがある。

遺伝カウンセリング

多発性髄膜腫の患者、特に上衣腫または神経鞘腫(NF2に関連)や多発性の脊髄明細胞髄膜腫(SMARCE1に関連)を併発している患者には、遺伝カウンセリングを考慮すべきである。

管理および治療

治療が必要な場合、手術が第1選択となる。難しい位置に腫瘍がある場合、有意な残存病変がある場合、またはグレードIIIの病変には、術後補助療法(主に放射線療法)が必要になることがある。現時点では、グレードIIの髄膜腫に対する術後管理に明確なガイドラインはない。現行の全身療法は、反応がごくわずかであるか、無効に終わっている。無症状の病変(典型的には偶然診断される)については、症状が現れるか、増殖が持続するか、影響の大きい構造への絞扼が懸念されるようになるまで、経過観察とMRIによる長期フォローアップで管理してもよい。

予後

腫瘍の悪性度と切除範囲(Simpson分類に基づく)が無増悪生存期間の最も重要な予測因子である。完全切除されたグレードIの病変では、再発リスクは低い。しかしながら、髄膜腫は急速に進行して再発を繰り返す臨床経過をたどることもあり、まれに他臓器に転移することもある。また、治療後の長期後遺症(例、神経認知機能の障害やQOLの低下)が報告されている。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Christine JUNGK
Dr Felix SAHM

日本語翻訳版の監訳
水澤 英洋(IRUD 臨床専門分科会 神経・筋疾患 チーフ/国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 理事長特任補佐・名誉理事長)

日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Meningioma_JP_ja_ORPHA2495.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/2495

最終更新日:2020年10月
翻訳日:2024年3月

本要約の翻訳は、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会に所属される専門医や、その他の希少疾患専門医のご協力の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

ピックアップ・イベント

ニュース一覧

イベント一覧

この疾患に関するピックアップ記事、イベントはありません

実施中の治験/臨床試験