かぶきしょうこうぐん歌舞伎症候群Kabuki syndrome
小児慢性疾患分類
- 疾患群-
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[Orpha番号:ORPHA2322]
5つの主要所見を特徴とする、まれな多発性先天異常/神経発達障害であり、主要所見とは知的障害(典型的には軽度から中等度)、内臓奇形(しばしば先天性心疾患)、指尖部の隆起(persistence of fetal fingertip pads)、出生後に始まる低身長、骨格異常(中節骨短縮症、第5指短指症、脊柱異常、および第5指内弯)、ならびに特徴的顔貌(幅の広い弓状の眉毛、長い眼瞼裂、下眼瞼の外反、突出した大きなカップ耳、平らな鼻尖、短い鼻柱)である。このほかにも様々な特徴がしばしば認められる。
病気・治療解説
疫学
歌舞伎症候群(KS)の発生頻度は1/32,000出生と推定されており、形態異常のある胎児では比較的頻度の高い病因と考えられている。
臨床像
典型的な臨床像は、新生児/乳児期の筋緊張低下と哺乳困難(70%以上にみられる)である。KSでは90%の患者で発達遅滞および知的障害がみられる。知的障害は軽度から中等度であることが多いが、そのスペクトラムは知能正常から重度の知的障害にまで及んでいる。音声言語獲得と記憶は通常、視空間認知や処理速度より良好である。KS患者は通常、歩行および言語発達のマイルストーンを達成する。約50%の患者に心奇形がみられる。20%に腎奇形、難聴、および様々な型の痙攣発作がみられる。免疫不全と繰り返す感染症が高頻度でみられる。自己免疫的所見が年齢とともに上昇し、成人KS患者の約20%にみられる。脊柱側弯症と膝蓋骨脱臼に対して頻回なスクリーニングが必要であり、思春期には注意深くモニタリングすべきである。歯牙欠損がしばしばみられる。5歳から肥満が生じる可能性があり、モニタリングを必要とする。成長ホルモン分泌不全症が25~30%の患者にみられる。女性患者の30%に早発乳房がみられる。
病因
KSは診断基準を満たす患者の約70%でde novoの病的バリアントを原因とする。KSは大半の患者(56~75%)ではKMT2D(12q13.12)の変異に起因し、少数の患者(5%)ではKDM6A(Xp11.2)の変異に起因する。
診断方法
診断は診察所見から疑われ、遺伝学的検査により確定される。
鑑別診断
鑑別診断としては、CHARGE症候群、3MC症候群、ハーディカー症候群(Hardikar syndrome)、KAT6B関連疾患、クロマチン調節が関係するその他の遺伝性疾患などがある。
出生前診断
発端者の親と、将来の妊娠時の羊水穿刺によるKSの検出について話し合うべきである。KSは、先天異常症候群に対する妊娠スクリーニングでエクソームシーケンスにより同定できる可能性がある。
遺伝カウンセリング
KMT2Dに関連したKSの遺伝形式は常染色体顕性(優性)であるが、大半の病的バリアントはde novoで生じたものであるため、同胞での再発リスクは低い。同胞での再発リスクは、親における生殖細胞系列モザイクの可能性に基づき1%と推定されている。KDM6Aに関連したKSの遺伝形式はX連鎖性であり、女性より男性にわずかに多くみられる。
管理および治療
管理には生涯にわたる包括的アプローチが必要である。臨床遺伝専門医、小児科医、眼科医、心理士/精神科医、言語療法士、および理学療法士による定期的なフォローアップが大きな効果をもたらす。哺乳困難に対して経管栄養(経鼻胃管または胃瘻)が必要になることがある。個々の患者のニーズに合わせて医療サービスを調整するために発達評価が必要である。心臓専門医、消化器専門医、腎臓専門医、免疫専門医、耳鼻咽喉科医、口腔専門医など、他の専門医が必要になる可能性もある。微細な書字運動や視覚の障害に特別な注意が必要である。
予後
予後は通常良好である。自己免疫と腎症状に対しては専門的な検査が必要である。自立生活を確立することには限界があり、介護者による生涯にわたる支援が必要となる場合もある。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Pr David GENEVIEVE
日本語翻訳版の監訳
黒澤 健司(IRUD 臨床専門分科会 臨床遺伝委員/地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター遺伝科 部長)
日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Kabuki_syndrome_JP_ja_ORPHA2322.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/2322
最終更新日:2020年9月
翻訳日:2024年3月
本要約の翻訳は、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会に所属される専門医や、その他の希少疾患専門医のご協力の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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