だりえびょうダリエ病Darier disease
小児慢性疾患分類
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[Orpha番号:ORPHA218]
角化性丘疹、末端の小陥凹、および疣贅様病変を古典的特徴とする、まれな遺伝性角化性疾患であり、これらの特徴は何らかのきっかけで誘発されることがあり、全身のどの部位(粘膜面を含む)にも発生する可能性がある。皮膚以外の症候として、爪の異常、眼瞼炎、ドライアイ、精神神経疾患、繰り返す耳下腺閉塞、口腔乾燥がみられることもある。
病気・治療解説
疫学
欧州におけるダリエ病(DD)の有病率は約1/50,000と推定されている。
臨床像
ダリエ病は、皮膚症候と皮膚外症候の両方を呈する消耗性の慢性疾患であり、患者の健康全般および生活の質に深刻な影響を与えうる。皮膚および皮膚外症候ともに、家系内および家系間で表現型にばらつきがある。夏季、発汗、日光曝露、精神的苦痛、羊毛・毛糸との接触、および発熱性疾患によって増悪が誘発されることがある。古典的病変は、角化性丘疹(典型的には体幹に生じる)、末端の小陥凹(手掌および足底に生じる)、および末端の疣贅様病変(典型的には手、特に水に浸した後に生じる)である。非古典的病変としては、末端の角化、白斑、巨大面皰、異常増殖物、末端の出血性水疱などがあり、古典的病変と同時に存在することがある。しかし、非古典的病変はまれである。病変はどの部位にも発生する可能性があり、特定の局在はない。爪の異常としては、爪の自由端のV字型の切れ込み、赤と白の縦線、隆起線および割れなどがある。性器病変、特に女性生殖器の病変は、重症の患者に比較的多くみられる。口腔粘膜病変を認めることもある。皮膚外症候は家系内および家系間で異なり、眼瞼炎、ドライアイ、精神神経疾患、てんかん(多くの場合20歳以前のみ)、学習障害、繰り返す耳下腺閉塞、口腔乾燥などがありうる。皮膚および鼻腔内への黄色ブドウ球菌の定着が高頻度でみられ、皮膚病変の面積および疾患の重症度と相関する。
病因
DDは、細胞内カルシウムシグナルの伝達に中心的な役割を果たす筋小胞体-滑面小胞体カルシウムアデノシントリフォスファターゼ2(sarco/endoplasmic reticulum Ca2+ ATPase isoform 2:SERCA2)をコードするATP2A2遺伝子(12q23-q24.1)の変異によって引き起こされる。
診断方法
診断は、皮膚病変の生検検体の組織学的検査による角質増殖、局所的な異常角化、および基底層直上の棘融解に基づく。
鑑別診断
鑑別診断として、Hailey-Hailey病、Grover病(一過性棘融解性皮膚症)、脂漏性皮膚炎、天疱瘡、疣贅状異常角化腫(warty dyskeratoma)などがある。
出生前診断
遺伝子バリアントが確認された罹患カップルには、出生前の診断検査および処置が可能である。
遺伝カウンセリング
本疾患は完全および遅発性浸透を呈する常染色体顕性(優性)遺伝疾患であり、多様な表現型を有する。変異の同定、遺伝のパターン、出生前の診断検査および利用できる処置について話し合うため、患者には遺伝カウンセリングが勧められる。
管理および治療
管理および治療は、臨床経験に加えて、文献上の症例報告および症例集積研究の情報に基づいて行う。皮膚科医が病状を最大限詳細に評価すべきであり、具体的には皮膚症候(黄色ブドウ球菌の定着を含む)、皮膚外症候(精神神経疾患など)、家族歴、および誘因などについて評価する。現時点での治療は対症療法であり、具体的には外用および全身療法と誘因への曝露を最小限に抑えることなどである。二次的な皮膚感染症を起こしやすい患者には、希釈した漂白剤での入浴を考慮してもよい。その他に報告されている治療法としては、ボツリヌス毒素注射による発汗抑制、外科的切除、電気的外科的切除、削皮術、レーザー焼灼、光線力学療法、電子線照射などある。皮膚外症候は、標準的なプロトコルに則って治療すべきである。
予後
本疾患は急性増悪を伴う慢性サイクルを特徴とし、加齢に伴い改善することはない。予後を評価する上では、本疾患の皮膚外症候を考慮することが非常に重要である。合併症および死亡の原因として、二次的な細菌およびウイルス感染が少数例で報告されている。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Dr Roni DODIUK-GAD
日本語翻訳版の監訳
橋本 隆(難治性疾患政策研究班「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究」)
金田 秀昭(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)
日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Darier_disease_JP_ja_PRO_ORPHA218.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/218
最終更新日:2022年5月
翻訳日:2023年3月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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