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かうでんしょうこうぐん
カウデン症候群Cowden syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA201]
遺伝性の皮膚疾患であり、様々な組織に多発性の過誤腫がみられること、乳腺、甲状腺、子宮内膜、腎臓、および大腸で悪性腫瘍のリスクが増大することを特徴とする。PTENの生殖細胞系列変異が伴っているカウデン症候群は、PTEN過誤腫症候群(PHTS)群に属する。

病気・治療解説

疫学

カウデン症候群の有病率は不明であるが、1/200,000と推定されている。

臨床像

カウデン症候群の症状は通常、10代から20代で明らかになることが多いが、いかなる年齢でも発症する可能性がある。最も多く報告される症状は(全ての患者に起こるわけではないが)、大頭症(特に巨脳症)、粘膜皮膚病変、甲状腺異常、乳房の線維嚢胞性変化および乳癌、消化管の過誤腫、多発性で早期発症する子宮平滑筋腫、および発達遅滞である。大頭症やまれに生じる顔面形成異常を伴う場合は、出生時から症状が明らかである。乳癌(生涯リスク85%)、甲状腺の上皮性癌、腎癌、子宮体癌(子宮内膜癌)などの悪性腫瘍は、壮年期以降にしばしば出現する。カウデン症候群の診断に際し臨床医は、上記以外にも以下の警戒すべき徴候に注意を払う必要があり、それは、レルミット-ダクロス病(Lhermitte-Duclos disease:小脳異形成性神経節細胞腫。カウデン症候群の特徴の1つ)、外毛根鞘腫や粘膜乳頭腫症などの粘膜皮膚病変(カウデン症候群では30歳までに100%の患者でみられると考えられている)、神経節細胞腫による消化管ポリポーシス、食道の糖原過形成(glycogen acanthosis)、小児期の甲状腺分化癌(非髄様甲状腺癌)、比較的若年で診断される子宮内膜癌、などである。

病因

現在では、カウデン症候群およびカウデン症候群様症例の25%は、チロシンとセリン/スレオニンの双方を脱リン酸化する二重特異性ホスファターゼをコードするPTEN(10q23)の生殖細胞系列変異により生じると考えられている。PTENが関与しないカウデン症候群およびカウデン症候群様症例については、KLLNプロモーターの生殖細胞系列メチル化(疾患の30%程度)、SDHB-Dの生殖細胞系列多型(10%)、またはAKT1またはPIK3CAの生殖細胞系列多型(10%)を有することが明らかにされている。さらに最近、PTENに変異がなく甲状腺分化癌が主要徴候であるカウデン症候群/カウデン症候群様症例において、SEC23BおよびUSF3の生殖細胞系列変異が同定された。

診断方法

International Cowden Consortiumにより、本疾患の診断に用いられる疾患特異的(pathognomonic)項目(粘膜皮膚病変、レルミット-ダクロス病)、大項目(乳癌、大頭症、甲状腺癌、子宮内膜癌)、および小項目の診断基準が示されている。疾患特異的項目の皮膚病変が認められるか、大項目2つ以上、または大項目1つと3つ以上の小項目、または小項目4つ以上を満たしていれば、カウデン症候群と診断される。現在、成人用の定量的スコアリングシステムと、それとは独立に小児用の診断基準システムが作成され、診療の現場で臨床医を支援している。PTENまたは他の原因遺伝子に病原性の生殖細胞系列変異が同定されれば、診断が確定する。

鑑別診断

若年性ポリポーシス症候群、ポイツ-ジェガース症候群(Peutz-Jeghers syndrome)、バート-ホッグ-デュベ症候群(Birt-Hogg-Dubé syndrome)、ゴーリン症候群(Gorlin syndrome)、および神経線維腫症1型。

出生前診断

リスクのある妊娠では、家系内の罹患者に病原性多型が同定されている場合、出生前診断が可能である。

遺伝カウンセリング

カウデン症候群は常染色体顕性(優性)形式で遺伝する。PTENの生殖細胞系列変異を有する患者には遺伝カウンセリングを勧めることができ、家系内の変異保有者を発症前からモニタリングできるよう、無症状の家族構成員にも遺伝カウンセリングのうえ検査を行うべきである。

管理および治療

管理および治療は集学的にかつ遺伝子型に基づいて行う。PTENの生殖細胞系列変異が同定された場合は、サーベイランスガイドラインに従うべきである。変異が同定されれば甲状腺超音波検査を始めるべきであり、7歳から開始する。症状がなくても、35~40歳から大腸内視鏡検査と隔年の腎画像検査を開始すべきである。女性は月1回の乳房自己検診と年1回の乳癌スクリーニング検査を行い、35歳からは経腟超音波検査(閉経後)または子宮内膜生検を行うべきである。

予後

精密な診断を(特に原因遺伝子変異の同定により)下し、適切な時期に臓器別のサーベイランスを開始することで、良好な予後が得られる。診断前に進行癌が生じた場合は、予後不良となるのが一般的である。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Charis ENG

日本語翻訳版の監訳
久保 亮治(IRUD 臨床専門分科会 皮膚疾患 チーフ/神戸大学大学院医学研究科 内科系講座 皮膚科学分野 教授)

日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Cowden_syndrome_JP_ja_ORPHA201.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/201

最終更新日:2020年3月
翻訳日:2024年3月

本要約の翻訳は、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会に所属される専門医や、その他の希少疾患専門医のご協力の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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