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そうきにゅうじてんかんせいのうしょう
早期乳児てんかん性脳症Early infantile epileptic encephalopathy

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA1934]

年齢依存性てんかん性脳症の重症型であり、睡眠周期に依存しない全般性または片側性の強直性痙攣が生後3カ月以内に発症することを特徴とし、その痙攣は1日に数百回発生して精神運動障害を引き起こす可能性があり、死に至ることもある。

病気・治療解説

疫学

発生率は日本で1/100,000出生、英国で1/50,000出生と推定されている。

臨床像

早期乳児てんかん性脳症(EIEE)の発症は生後3カ月以内にみられるが、生後数週で発症する場合もある。患児は哺乳反射が弱く、筋緊張低下を呈し、最大10秒間持続する全般性かつ対称性の強直性痙攣が群発または単発する。痙攣のパターンは覚醒中と睡眠中で変化せず、痙攣が1日に数百回起きることもある。その他にも、全般性強直間代発作、焦点性運動発作、片側痙攣などの発作型が1/3の症例で認められる。2歳を超えて生存する患児には、重度の精神運動障害が現れる。一部の症例ではEIEEからウエスト症候群(生後2~6カ月)に、さらにはレノックス-ガストー症候群(この用語を参照)へと移行する。特定の遺伝的多様体では、以上に加えてジスキネジアや非定型レット症候群の表現型(この用語を参照)などの徴候も認められる。死因の多くは、肺炎またはその他の複合的障害の合併症である。

病因

EIEEは様々な病因が絡み合った結果である可能性がある。多くの症例で脳の構造的異常との関連が認められている。一部の症例は代謝異常(チトクロムC酸化酵素欠損症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII欠損症、これらの用語を参照)または脳奇形(孔脳症、片側巨脳症など、これらの用語を参照)に起因し、起源が遺伝にあることもあれば、そうでないこともある。EIEEの遺伝的多様体は、ARX(Xp22.13)、CDKL5(Xp22)、SL25A22(11p15.5)、STXBP1(9q34.1)など特定の遺伝子における変異と関連付けられている。これらの遺伝子異常は、神経細胞の機能障害または脳の形成不全に関係があることから、EIEEにつながると考えられている。

診断方法

診断は、臨床所見および脳波所見に基づく。特徴的な脳波では、高振幅の棘波や多棘波のバーストと、低電位の基礎律動の周期(サプレッション)とが交互に現れるバースト・サプレッションパターン(痙攣の発症とともに現れる)が認められる。この脳波パターンは連続的で、覚醒中も睡眠中も変化しない。頭部MRIでしばしば構造的異常を認める。

鑑別診断

鑑別診断としては、早期ミオクロニー脳症、ウエスト症候群(これらの用語を参照)、その他の早期発症てんかん性脳症など、その他のてんかん性脳症がある。

出生前診断

遺伝的な病因がわかっている家系では出生前診断が可能である。

遺伝カウンセリング

常染色体潜性(劣性)遺伝が報告されているが、EIEEの大半の症例は散発性(de novo変異)である。したがって、EIEEの子供がさらに生まれるリスクは低いことを遺伝カウンセリングで両親に伝えることが非常に重要である。

管理および治療

EIEEを根治できる治療法はなく、患者は常時の監督およびケアを必要とする。ベンゾジアゼピン系、バルプロ酸、レベチラセタム、ゾニサミド、フェノバルビタールなどの抗てんかん薬では発作の抑制において奏効例が限られていることが明らかになっており、ピリドキシンも同様である。ケトン食が発作の抑制にある程度の効果を示すことが報告されている。代謝障害を合併している患者では、それらを治療すれば、EIEEの経過が改善する可能性がある。同様に、特定の構造的異常を有するEIEE患者では、その異常が片側性の場合、外科的介入が有益となっている。

予後

予後は不良で、通常は乳児期に死亡する(2歳までに50%が死亡)。生存者にも重度の精神運動障害がみられ、発作が継続する。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Helen CROSS

日本語翻訳版の監訳
松原 洋一(IRUD臨床専門分科会 小児科(一般)チーフ/国立成育医療研究センター 理事)

日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Early_infantile_epileptic_encephalopathy_JP_ja_PRO_ORPHA1934.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/1934

最終更新日:2014年7月
翻訳日:2023年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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