きんいXq28じゅうふくしょうこうぐん近位Xq28重複症候群Proximal Xq28 duplication syndrome
小児慢性疾患分類
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[Orpha番号:ORPHA1762]
MECP2遺伝子を含むXq28における染色体中間部の重複を伴うまれなX連鎖性のゲノム疾患である。男児では、乳児期に発症する筋緊張低下、重度の全般性発達遅滞、知的障害、進行性の痙縮、痙攣発作、消化管症状、および繰り返す呼吸器感染症を特徴とする。女児の場合、表現型がより多様である。
病気・治療解説
疫学
MECP2遺伝子を含む微細重複(cryptic duplication)を有する患者約250名が報告されている。本疾患の世界的な有病率は不明であるが、原因不明のX連鎖性精神遅滞の男児における有病率は約1%と推定されている。
臨床像
典型的な臨床像は、新生児期に現れる重度の哺乳不良、筋緊張低下、および全般的な発達遅滞である。患児は特定の発達マイルストーン(お座り、歩行、初期の言語能力、意図的な手の使用)に到達することがあるが、退行がよくみられる。ほとんどの男児は中等度から重度の知的障害を呈し、しばしば発語がみられない。行動上の特徴には、手の常同運動、歯ぎしり、低い痛覚感受性、叫喚(screaming spell)、睡眠時の笑い(night laughing)などがある。呼吸器感染症は、男児の4分の3以上、女児の3分の1以上に発生する。痙攣発作は、50%以上の患児で9歳までに発生し、毎日、毎週、または毎月みられることがある。また、非てんかん性の痙攣発作も報告されている。小児期には下肢優位に進行性の痙縮がみられ、男児では60%以上にみられる。消化器症状として便秘、腹部膨満、乳児胃食道逆流などがあり、経管栄養が必要になることもある。側湾症、外斜視、遠視、顔面形態異常(大きな耳、中顔面低形成、歯の異常、開いた口)が高頻度でみられる。女児の表現型および重症度は非常に多様で、X染色体不活性化の偏りの程度に依存する。
病因
本症候群は、量感受性遺伝子であるMECP2を含むXq28の重複(4 Mb未満)に起因する。
診断方法
診断は臨床的特徴に基づいて行われ、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションまたは遺伝子を標的とする重複解析(gene-targeted duplication analysis)によって確定される。
鑑別診断
鑑別診断として、細胞遺伝学的分析で観察可能な再構成に起因するXq28の機能的ダイソミー、int22h1/int22h2を介したXq28重複症候群、Prader-Willi症候群、X連鎖αサラセミア・精神遅滞症候群などがある。
出生前診断
発端者がいる家系では出生前診断が可能であり、蛍光in situハイブリダイゼーションなどの細胞遺伝学的検査やDNA定量によって行われる。
遺伝カウンセリング
遺伝形式はX連鎖性である。再発リスクは、MECP2遺伝子を含む重複を母親から受け継いだ場合は高いが、重複がde novoである場合は非常に低い。浸透率は男児では100%、女児ではX染色体不活性化の程度および種類によりばらつきがある。
管理および治療
管理は包括的および対症療法的なケアに限られ、栄養障害と繰り返す感染症の予防に特別な注意を払うべきである。また、すべての患者に教育支援とリハビリテーションの支援を勧めるべきである。
予後
奇形は本症候群における合併症発生率に有意に影響しないが、25歳未満の早期死亡(主に呼吸器感染症による)が27~39%の患者で報告されており、過小に評価されている可能性がある。成人後は、進行性の痙縮のため車椅子の使用が必要になることがある。神経学的な悪化は痙攣発作の重症度と関連しているようである。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Prof Damien SANLAVILLE
Dr Caroline SCHLUTH BOLARD
Dr Mathilde PUJALTE
日本語翻訳版の監訳
黒澤 健司(難治性疾患政策研究班「染色体微細欠失重複症候群の包括的診療体制の構築」)
金田 秀昭(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Proximal_Xq28_duplication-syndrome_JP_ja_PRO_ORPHA1762.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/1762
最終更新日:2021年5月
翻訳日:2022年3月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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