ViciしょうこうぐんVici症候群Vici syndrome
小児慢性疾患分類
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[Orpha番号:ORPHA1493]
Vici症候群は、脳梁欠損、白内障、眼皮膚色素低下、心筋症、および複合型免疫不全症を主な特徴とする、非常にまれな重度の先天性多系統疾患である。
病気・治療解説
疫学
有病率は不明である。これまでに報告された症例数はわずか20例である。
臨床像
Vici症候群は通常、生後1年目に診断される。表現型は多様であるが、診断につながる主な特徴は、ほぼ常に発症時からみられるか、時間の経過とともに顕在化する。早期から嚥下困難および哺乳/摂食困難を認めることがあり、発育不良につながることがある。眼の異常としては白内障が最もよくみられるが、その他にも視神経低形成(この用語を参照)、眼振、羞明などがある。眼および毛髪の色素低下には家系および民族的背景と関連がみられる。後に心筋症が発症することがあり、進行性の心不全につながることもある。大半の患者が乳児期に感染症を繰り返し、その多くは呼吸器、消化管、尿路の感染症であるが、粘膜皮膚カンジダ症、結膜炎、および敗血症もみられることがある。筋緊張低下および運動発達遅延を伴う骨格筋のミオパチーの合併がよくみられる。顔面形態異常(口蓋裂/口唇裂、小顎症)や、まれにその他の形態異常(合指症)を呈する患者もいる。一部の患者で感音難聴が報告されており、おそらく過小に診断されている。その他の中枢神経系の構造異常、精神運動遅滞、および痙攣発作がみられることもある。胸腺、甲状腺、肝臓、および腎臓の異常、ならびに血液学的異常もまれに報告されている。主な死因は心合併症または重症感染症である。
病因
Vici症候群は、重要なオートファジー調節因子であるepg5(ectopic P-granules autophagy protein 5)をコードしているEPG5遺伝子(18q12.3)の変異に起因する。このオートファジー経路は、緊密に調整されている複数の段階から構成され、隔離膜の形成に始まり、それがオートファゴソームとなり、オートファゴソームはリソソームと融合して分解プロセスの最終構造物であるオートリソソームとなる。オートリソソームの形成はepg5の欠損により特異的に阻害される。
診断方法
診断は主に、特徴的な臨床像に基づいて行う。脳MRIにより脳梁欠損が描出され、眼科診察(細隙灯検査)により白内障またはその他の眼異常を同定できる。心電図および心エコー検査が心機能の評価に有用である。免疫学的検査も行われる。分子遺伝学的検査によりEPG5遺伝子の変異を同定することで診断が確定される。
鑑別診断
鑑別診断には、マリネスコ-シェーグレン症候群、チェディアック-東症候群、グリセリ症候群、ディジョージ症候群、毛細血管拡張性運動失調症(これらの用語を参照)などがある。
出生前診断
既知の原因変異を有する家系では、出生前診断が可能である。
遺伝カウンセリング
遺伝形式は常染色体潜性(劣性)であり、遺伝カウンセリングが可能である。
管理および治療
Vici症候群の治療は支持療法のみである。痙攣発作がみられる患者では、抗てんかん薬による治療を開始すべきである。哺乳/摂食困難がある患者には経管栄養が必要になることがある。併発する感染症には、迅速かつ積極的な抗菌薬治療を行うべきである。重症免疫不全症のある患者では、免疫グロブリン製剤の静脈内投与と抗菌薬の予防的投与を考慮すべきである。心機能を定期的にモニタリングし、心不全が起きた場合は直ちに内科的治療を開始すべきである。白内障は外科的に治療でき、必要に応じて補聴器を提供することができる。甲状腺機能、肝機能、および腎機能を定期的にモニタリングすべきである。
予後
予後は全体的に不良であるが、本疾患と早期に診断され、心臓および免疫の異常が早期から見通しをもって管理されれば、改善する可能性がある。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Dr Heinz JUNGBLUTH
日本語翻訳版の監訳
齋藤 伸治(IRUD臨床専門分科会 小児科(一般)委員/名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学分野 教授)
監訳者からのコメント
現在は90例ほどの症例数の報告がある。
日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Vici_syndrome_JP_ja_PRO_ORPHA1493.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/1493
最終更新日:2014年5月
翻訳日:2023年3月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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