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こふぃん-しりすしょうこうぐん
コフィン-シリス症候群Coffin-Siris syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA14650]
知的障害を主体として幅広い表現型を呈するまれな遺伝性症候群であり、発達遅滞と様々な臨床的特徴がみられることを特徴とし、最も一般的には(常にみられるわけではない)第5指の末節骨または爪の無形成または低形成や粗な顔貌がみられる。

病気・治療解説

疫学

遺伝学的に確定診断されたコフィン-シリス症候群(CSS)の臨床症例は、現在までに150例以上報告されている。正確な有病率および発生率は不明であるが、本疾患はおそらく見逃されている。

臨床像

コフィン-シリス症候群は臨床的にも遺伝的にも異質性の高い疾患である。大小様々な臨床所見を伴う。大基準の所見としては、軽度から重度の発達遅滞または認知機能獲得の遅れ(全例でみられる)、第5指の爪/末節骨の低形成または無形成(ほぼ全例で出生時からみられる)、粗な顔貌(時間経過とともに明らかになるのが一般的)がある。非常に特徴的な顔貌上の特徴として、濃い眉毛と長い睫毛、広い鼻梁、上下口唇が厚くめくれた大きな口、耳の位置または形状の異常などがある。その他の大所見としては、低身長、発育不良、哺乳/摂食困難、小頭症、眼症候(白内障、眼瞼下垂、斜視)、心奇形(心室/心房中隔欠損症、ファロー四徴症、動脈管開存症)、多毛症(上肢、顔面、背部)、まばらな頭髪などがある。小基準の所見としては、神経系の異常(ダンディー-ウォーカー奇形、脳回の単純化、脳梁欠損、痙攣発作、筋緊張低下)、難聴、関節弛緩、泌尿生殖器および腎奇形、頻回の感染症などもある。発達遅滞と脊柱側弯症が乳児期および小児期に現れる。

病因

9つの遺伝子、すなわちARID1B(6q25.3)、SMARCA4(19p13.3)、SMARCC2(12q13.2)、ARID1A(1p36.11)、SOX11(2p25.2)、DPF2(11q13.1)、SMARCB1(22q11.23)、SMARCE1(17q21.2)、ARID2(12q12)におけるヘテロ接合性変異またはゲノム再構成がCSSの原因として報告されている(報告例の割合が高い順)。これらの遺伝子は、発生過程での遺伝子発現の調節に関与しているBAF複合体のサブユニットをコードしている。

診断方法

現在のところ、診断を支持する一貫した臨床的基準は存在しない。診断は一般に、大基準とされる臨床徴候と小基準とされる少なくとも1つの臨床徴候の存在に基づいて下され、原因遺伝子の分子遺伝学的検査によって確定することができる。最近の研究により、第5指の爪/末節骨の低形成または無形成が必須の所見ではないことが明らかにされた。ARID1Bを含む微細欠失が報告されている。

鑑別診断

鑑別診断としては、ニコライデス-バライスター症候群(Nicolaides-Baraitser syndrome)、低身長-爪異形成-指趾骨異常症候群(brachymorphism-onychodysplasia-dysphalangism syndrome)、DOOR症候群(DOOR syndrome)、高ホスファターゼ-知的障害症候群(hyperphosphatasia-intellectual deficiency syndrome)、ボルジェソン-フォルスマン-レーマン症候群(Borjeson-Forssman-Lehmann syndrome)、ヴィーデマン-スタイナー症候群(Wiedemann-Steiner syndrome)、ルビンシュタイン-テイビ症候群(Rubinstein-Taybi syndrome)、コルネリア デ ランゲ症候群(Cornelia de Lange syndrome)などがある。胎児ヒダントイン症候群はコフィン-シリス症候群(Coffin-Siris syndrome)に類似することがある。

出生前診断

大半の変異がde novoであるため、出生前診断の適用は困難であろう。

遺伝カウンセリング

ARID1B関連疾患に関して常染色体顕性遺伝(優性遺伝)が報告されているが、大半の症例はde novo変異に関連したものである。本疾患の原因になる変異を有する個人には遺伝カウンセリングを提案し、その変異が子供に遺伝するリスクが50%であることを伝えるべきである。

管理および治療

治療は基本的に支持療法と対症療法である。作業療法、理学療法、および言語療法が推奨される。発達と哺乳/摂食を綿密にモニタリングし、定期的に眼科検査および聴覚検査を受けさせるべきである。

予後

重症例の予後は不良で、小児期の誤嚥性肺炎や痙攣発作が報告されている。神経鞘腫症を含めた腫瘍発生との関連が報告されている。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Naomichi MATSUMOTO
Dr Nobuhiko OKAMOTO

日本語翻訳版の監訳
古庄 知己(IRUD 臨床専門分科会 臨床遺伝 委員/信州大学医学部遺伝医学教室遺伝医学 教授)

日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Coffin-Siris_syndrome_JP_ja_ORPHA1465.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/1465

最終更新日:2019年8月
翻訳日:2024年3月

本要約の翻訳は、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会に所属される専門医や、その他の希少疾患専門医のご協力の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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