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CINCAしょうこうぐん
CINCA症候群CINCA syndrome

小児慢性疾患分類

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[Orpha番号:ORPHA1451]
クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)の一型で、新生児期に発症する全身炎症、蕁麻疹様皮疹、および関節炎/関節痛(重度の関節症に至る)と中枢神経系障害(慢性無菌性髄膜炎、脳萎縮、感音難聴を含む)を特徴とする、まれな遺伝性疾患である。

病気・治療解説

疫学

CINCA(chronic infantile neurological, cutaneous, and articular)症候群の正確な有病率は不明であるが、フランスではCAPSスペクトラム全体での有病率が1/360,000と推定されており、その中でCINCA症候群は比較的頻度の低い病型である。NLRP3変異を有する患者250名以上の情報を収集しているEurofeverレジストリーでは、約25%の患者が最重症のCINCA表現型を呈している。

臨床像

典型的には生後数時間から数日以内に発症し、蕁麻疹様発疹、急性期反応物質の持続高値、および間欠熱(微熱の場合や発熱を欠く場合もある)がみられる。典型的顔貌の特徴として、前頭部突出、鞍鼻などがある。発疹は典型的にはそう痒を伴わず、1日のうちに分布が変化し、血管炎による変化は伴わない。中枢神経系の症候として慢性無菌性髄膜炎があり、無治療で放置すると、脳萎縮、重度の知的障害、および感音難聴につながる。典型的な神経症状としては、慢性の易刺激性、頭痛、早朝の悪心・嘔吐などほか、まれに痙攣発作もみられる。眼症候としては、結膜炎、乳頭浮腫、視神経萎縮、進行性の視力障害などが生じうる。早期から生じる骨関節症はしばしば大関節を侵し、変形および拘縮を引き起こす。

病因

NLRP3遺伝子(染色体1q44)の変異(通常はde novo)が大半の患者で同定されるが、30~35%の罹患者では変異が検出されない。それらの患者の大半では、NLRP3の体細胞モザイクが認められる。NLRP3遺伝子は自然免疫で重要な役割を果たしており、NLRP3インフラマソームの構成要素をコードし、機能獲得型変異によりインターロイキン1β(IL-1β)の過剰産生をもたらす。

診断方法

CINCAの臨床像を認めれば十分に診断できるという一般的なコンセンサスが得られている。臨床検査では貧血、顆粒球増多、赤沈亢進、およびC反応性蛋白濃度上昇を伴った非特異的な炎症性症候群が確認される。自己抗体や免疫不全は検出されない。皮膚生検では血管周囲への広範な好中球浸潤を伴う好中球性皮膚症を認めるが、血管炎の徴候は認めない。脳MRIでは髄膜炎の明らかな徴候を認め、内耳の炎症性病変も示唆される。眼科検査では乳頭浮腫が判明することがある。遺伝子検査では通常、NLRP3のde novo変異が検出されるが、診断に必須ではない。標準的な遺伝子検査で陽性判定が得られない場合は、NLRP3の体細胞モザイクを検討すべきである。

鑑別診断

発症時には感染症が疑われることが多い。CINCAは単一遺伝子または多因子に起因する類似の自己炎症性疾患と鑑別すべきであり、具体的には全身型若年性特発性関節炎、TNF受容体関連周期性症候群、メバロン酸キナーゼ欠損症の重症型、CANDLE症候群、NLRP3変異に関連した比較的軽症の表現型(家族性寒冷蕁麻疹・マックル-ウェルズ症候群[Muckle-Wells syndrome])などがある。

遺伝カウンセリング

遺伝形式は常染色体顕性(優性)である。生殖細胞変異を有する患者から1人の子供に本疾患が遺伝するリスクは50%である。体細胞モザイクの場合は、親の生殖器に体細胞変異が存在するか否かによってリスクが異なる。

管理および治療

多数の抗炎症薬と免疫抑制薬を用いた治療アプローチは期待外れの結果に終わっている。コルチコステロイドは症状を部分的に改善できるが、その代償として高度の毒性がある。アナキンラ(インターロイキン1受容体拮抗薬)とカナキヌマブ(抗IL-1βモノクローナル抗体)は、炎症徴候のほか頭蓋内圧亢進と難聴にも効果的であることが証明されている。

予後

遅滞なく十分な治療を行わなければ、しばしばQOLが不良となる。重症度は幅が広く、機能予後は神経症候(知的障害や難聴など)の程度と関節拘縮の有無に依存する。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Marco GATTORNO

日本語翻訳版の監訳
八角 高裕(IRUD 臨床専門分科会 免疫不全疾患 委員/京都大学医学部附属病院 小児科准教授)

日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/CINCA_syndrome_JP_ja_ORPHA1451.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/1451

最終更新日:2020年2月
翻訳日:2024年3月

本要約の翻訳は、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会に所属される専門医や、その他の希少疾患専門医のご協力の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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