CADASILCADASILCerebral autosomal dominant arteriopathy-subcortical infarcts-leukoencephalopathy
小児慢性疾患分類
- 疾患群-
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- 大分類-
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- 細分類-
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[Orpha番号:ORPHA136]
CADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy-subcortical infarcts-leukoencephalopathy:皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)は、約3分の1の患者でみられる前兆を伴った片頭痛と気分障害に加えて、中年期発症の繰り返す皮質下虚血性脳卒中および認知症に進行する認知障害を特徴とする遺伝性脳血管障害である。
病気・治療解説
疫学
欧州におけるCADASILの有病率は1/50,000~1/25,000と推定されている。
臨床像
本疾患の最初の臨床像は平均45~50歳で顕在化し、通常は虚血性脳卒中または認知機能低下として現れる。発症および経過は多様であるが、3分の2以上の患者に(繰り返す)脳卒中または認知症がみられる。片頭痛(通常は前兆を伴う)は約3分の1の患者にみられ、しばしば脳卒中および認知症症状に先行し、平均発症年齢は約30歳である。精神障害もよくみられ、抑うつ、無関心、人格変化などがある。より頻度の低い徴候として、可逆性の急性脳症(頭痛、錯乱、および発作を伴う)、てんかん、無症状の末梢神経障害などがある。死因で最も多いのは肺炎であり、これに予期せぬ突然死と窒息が続く。
病因
CADASILは、19p13.2-p13.1に位置するNOTCH3遺伝子の変異によって引き起こされ(全症例の95%以上)、この遺伝子は主に血管平滑筋細胞に発現している膜貫通型受容体NOTCH3をコードしている。90%以上がミスセンス変異であり、それによりNOTCH3の上皮増殖因子受容体(EGFR)をコードしているエクソン(エクソン2~23)の一つにシステインの数的変化が生じる。EGFRに含まれるシステイン残基の数は通常6つであるが、変異型EGFRには5つまたは7つのシステイン残基が含まれる。その結果、変異蛋白質の多量体化と血管壁への変異NOTCH3の蓄積が生じる。
診断方法
CADASILの診断は、若年発症の脳卒中または認知機能低下とMRI上での虚血性変化(対称性の白質高信号、皮質下梗塞、微小出血など)に加えて、脳卒中または認知症の家族歴がみられる患者で考慮すべきである。診断はシステインの変化をもたらす典型的なNOTCH3変異を同定することで分子的に確定できる。あるいは、皮膚生検検体の電子顕微鏡検査により血管壁に特徴的な顆粒状沈着物を同定できるほか、免疫組織化学染色により血管壁のNOTCH3染色陽性を示すことも可能である。
鑑別診断
鑑別診断としては、ビンスワンガー病、中枢神経系の原発性血管炎、多発性硬化症のほか、CARASIL、MELAS症候群、ファブリー病、COL4A1変異を伴う小血管病(例、家族性孔脳症[familial porencephaly])(これらの用語を参照)などのその他の遺伝性障害がある。
出生前診断
家系内に原因変異があることが判明している場合は、出生前診断および着床前遺伝子診断が可能である。
遺伝カウンセリング
常染色体顕性(優性)遺伝であることと、総じて重症化することから、患者および家族には常に遺伝カウンセリングを提供すべきである。
管理および治療
CADASILを根治できる治療法はない。抗血小板療法がしばしば用いられるが、有効な治療法であるとの証明はまだなされていない。片頭痛および併存する可能性のある血管危険因子(高血圧、高コレステロール血症、および糖尿病)の治療として、対症療法を患者に勧めることができる。感情面での支援を提供するために、患者とその家族に心理カウンセリングを提供すべきである。喫煙、血管造影、抗凝固薬、および血栓溶解療法は、脳血管症状の発生リスクを高めるため、いずれもCADASILの患者は避けるべきである。
予後
予後は不良であり、大半の患者が最終的に寝たきりになり、認知症を発症し、常時看護を必要とするようになる。死亡年齢の平均は68歳である。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Dr S.A.J. [Saskia]LESNIK OBERSTEIN
Pr G.M. [Gisela] TERWINDT
日本語翻訳版の監訳
水澤 英洋(IRUD 臨床専門分科会 神経・筋疾患 チーフ/国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 理事長特任補佐・名誉理事長)
監訳者からのコメント
日本語疾患名は、2023年1月現在の指定難病の病名に統一している。
日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/CADASIL_JP_ja_ORPHA136.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/136
最終更新日:2013年6月
翻訳日:2023年3月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。