ばーと-ほっぐ-でゅべしょうこうぐんバート-ホッグ-デュベ症候群Birt-Hogg-Dubé syndrome
小児慢性疾患分類
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[Orpha番号:ORPHA122]
バート-ホッグ-デュベ症候群(Birt-Hogg-Dubé syndrome:BHD症候群)は、皮膚病変、腎腫瘍、気胸発症リスクのある肺囊胞を特徴としている。1977年に本症候群を報告したカナダの3人の医師の名前にちなんでおり、まれな臨床病理学的病態である。
病気・治療解説
疫学
BHD症候群の有病率は1/200,000と推定されているが、正確な発生率は不明である。これまでに100家系以上がBHD症候群と診断されている。
臨床像
BHD症候群の腎病変は良性のオンコサイトーマから悪性の腎細胞癌まで多彩であり、腎細胞癌の亜型として嫌色素性、淡明細胞型、乳頭状などが認められている。BHD症候群患者の腎臓には、ハイブリッド腫瘍(hybrid tumor)がときに認められる。典型的な皮膚病変は線維毛包腫(fibrofolliculomas)と呼ばれている。線維毛包腫では真皮網状層の毛包周囲に線維性結合組織・線維芽細胞が増殖しており、基底細胞様細胞が毛包周囲組織に入り込んでいる。他の皮膚病変は毛盤腫(trichodiscoma)と線維性疣贅(acrochordons)である。BHD症候群の皮膚病変は通常20歳~30歳台に発症して、生涯続く。さらに、皮膚病変は併発する腎腫瘍よりも早期に発症するのが通常である。肺囊胞は肺胞気腔の囊状拡張で特徴づけられており、顕微鏡的なレベルから数mmのレベルまで様々である。薄壁囊は立方上皮に裏打ちされている。それらの嚢胞は吸入の圧力により破裂して気胸を起こす。
病因
BHD症候群は常染色体優性遺伝の形式をとる。病因遺伝子と考えられているFLCN遺伝子は17番染色体短腕(17p11.2)に位置している。このBHD遺伝子はフォリクリンをコードしており、BHD遺伝子産物の働きは解明されていないが、他の過誤腫症候群関連蛋白と同様にmTOR経路に一部関与しており、腎腫瘍の発生さらには他の関連する病変の発症に関係していると考えられている。
診断方法
診断は臨床徴候をいかに捉えるかにより、皮膚病変の病理組織像では、毛盤腫(trichodiscoma)、線維毛包腫(fibrofolliculoma)、perifollicular fibroma(毛包周囲に膠原線維の増殖を伴う病理)の存在を確認することが必要である。診断はBHD遺伝子(フォリクリンFLCN遺伝子)のDNA変異を確認することで確実になる。
鑑別診断
BHD症候群の硬い多発皮膚丘疹の鑑別診断は、皮膚病変の首座が表皮なのか真皮なのか、あるいはその双方にまたがっているのかによる。BHD症候群の患者および親族は、遺伝子診断を含む遺伝カウンセリングを考慮すべきである。
管理および治療
BHD症候群の皮膚病変に対する特異的治療はない。孤発性線維毛包腫(perifollicular fibromas)に対する治療は外科切除である。皮膚剥離(dermabrasion)、電気乾固(electro-desiccation)が治療選択肢として挙げられているが、再発の可能性がある。BHD症候群と診断された患者には、スクリーニングを行うべきであり、肺病変、腎病変、消化器病変に対する管理をすべきである。
予後
BHD症候群患者の予後は内臓疾患の重症度と腎腫瘍の病型により決まる。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Dr Terakeith LERTSBURAPA、Pr Ximing YANG
日本語翻訳版の監訳
巽 浩一郎(難治性疾患政策研究班「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/BirtHoggDubeshokogun_JP_ja_PRO_ORPHA122.pdf
英語原文URL
http://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?lng=EN&Expert=122
最終更新日:2008年11月
翻訳日:2019年3月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断(出生前診断・着床前診断を含む)・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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