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2q37びさいけっしつしょうこうぐん
2q37微細欠失症候群2q37 microdeletion syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA1001]
染色体バンド2q37の欠失を含むまれな染色体異常であり、軽度から中等度の発達遅滞/知的障害、3-5指の中節骨短縮症、低身長、肥満、筋緊張低下、特異的顔面異形症、異常行動、自閉または自閉症スペクトラム障害、関節過可動性/脱臼、脊柱側弯症などの幅広い臨床所見を特徴とする。

病気・治療解説

疫学

これまでに世界中で150人以上が報告されており、女性の方が罹患する頻度が高い(60%)。

臨床像

多彩な臨床像を呈する先天性奇形症候群。軽度から中等度の発達遅滞または知的障害、筋緊張低下(全患者の50~65%)、痙攣発作(20~35%)、中節骨短縮症(50%)、低身長(23%)、特徴的な顔面異形症(まばらな頭髪、丸い顔、前頭突出、眼瞼裂の斜上、薄いアーチ状の眉毛、落ち窪んだ眼、顔面中部形成不全、低い鼻梁、鼻翼形成不全と目立つ鼻柱、V字形の鼻尖、薄い赤唇縁、高口蓋を呈する)、そして年齢とともに肥満になる傾向がある。行動障害がよくみられ、反復行動、重度のコミュニケーションおよび社会的相互作用の障害、常同行動、間欠的侵攻性、多動性、注意欠陥障害、強迫症および睡眠障害などがみられる。臨床的特徴としては、広範囲にわたる、遠位または過剰乳頭、第5指斜指症、合指趾症、および小手/足、手指または足趾の合指趾症、持続性胎児指腹および単一手掌しわ、小頭症または大頭症も高頻度にみられる。湿疹がしばしば認められる。大奇形は2q37欠失を有する患者の30%に起こり、心臓、消化器系(全患者の30%)、泌尿生殖器系(全症例の11%)、および中枢神経系(全患者の6%)の先天奇形が含まれることがある。

病因

欠失は2番染色体の末端領域を含み、切断点はバンド2q37またはその中に位置する。わずかながら遺伝子型と表現型との関連が知られており、その領域にはオルブライト遺伝性骨ジストロフィー(Albright hereditary osteodystrophy)様の表現型に重要な領域が含まれる。前述の臨床徴候に関与する2q37の遺伝子には、CAPN10、PRLH、HDLBP、体重に関与するPER2、GBC1、GPR35、STK25、PDCD1、GBX2、TWIST2、FARP2、骨格障害に関与するPER2、GBX2、TWIST2、FARP2、TWIST2、PRLH、HDLBP、TRPM8、AGAP1、KIF1A、PASK、ATG4B、および、筋、骨の発生に不可欠なHDAC4が含まれる。Mir-562の欠失はウィルムス腫瘍 (Wilms tumor)に関連する。

診断方法

診断は細胞遺伝学的分析と分子遺伝学的解析による。欠失は転座派生染色体に由来する可能性があるため、転座についてのスクリーニングも行うべきである。

鑑別診断

鑑別診断には、他の部分的異数染色体症候群(segmental aneusomy syndrome)とプラダー-ウィリ症候群(Prader-Willi syndrome)を含めるべきである。オルブライト遺伝性骨ジストロフィーを含む偽性副甲状腺機能低下症のグループも鑑別診断に含めるべきであるが、2q37欠失の患者ではカルシウム、リン、副甲状腺ホルモンの測定値は正常範囲にある。

出生前診断

家系員に欠失または関連する再構成が以前に同定されている場合に遺伝的出生前診断が可能である。胚モザイクの可能性があるため、あらゆるde novo異常染色体再構成に対する出生前診断が提案されることがある。

遺伝カウンセリング

ほとんどの症例はde novoで発生するが、少数の症例で家族性の染色体再構成が同定されている。その後の発端者の兄弟に対するリスクは、親の特異的染色体再構成に依存する。理論的には、純粋な2q37欠失を有する患者は、欠失を伝播するリスクが50%である。

管理および治療

管理は集学的に行い、主要な臨床的診断基準の包括的な評価を含めるべきである。言語療法、理学療法、および作業療法が必要である。患者は、出生から5年までの間に、関連奇形の可能性について注意深い医学的スクリーニングを受け、知的障害患者のための相談所でフォローアップを受ける必要がある。

予後

予後は、軽症の小児と重度の知的障害を有する小児とでは大きく異なる。小児にはしばしば認知障害がみられ、そのほとんどが特殊学校に通っている。20歳ではほとんどの小児が自立しておらず、精神障害を発症することもある。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Martine DOCO-FENZY
日本語翻訳版の監訳
倉橋 浩樹(難治性疾患政策研究班「染色体微細欠失重複症候群の包括的診療体制の構築」)
西村 夕美子(藤田医科大学大学院保健学研究科臨床検査学領域遺伝カウンセリング分野)
小島 伸介(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/2q37bisaikesshitsushokogun_JP_ja_PRO_ORPHA1001.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/consor/cgi-bin/Disease_Search.php?lng=EN&data_id=1313

最終更新日:2020年6月
翻訳日:2021年2月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断(出生前診断・着床前診断を含む)・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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