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がんひふはくひしょう (せんてんせいはくひしょう)
眼皮膚白皮症(先天性白皮症)oculocutaneous albinism; OCA

小児慢性疾患分類

疾患群14
皮膚疾患
大分類1
眼皮膚白皮症(先天性白皮症)
細分類1
眼皮膚白皮症(先天性白皮症)

病気・治療解説

概念

眼皮膚白皮症(oculocutaneous albinism; OCA )は、出生時より皮膚、毛髪、眼のメラニン合成が低下ないしは消失することにより、全身皮膚が白色調であり、青~灰色調の虹彩、白~茶褐色あるいは銀色の頭髪を呈する。眼の症状を伴うことが多い。皮膚症状が判然とせず、眼の症状のみのものは眼白皮症(ocular albinism;OA)という。
全てのOCAは常染色体劣性遺伝である。OAは伴性劣性遺伝性疾患である。
全身症状を伴う眼皮膚白皮症を症候型(syndromic albinism)としてまとめられることがある。この症候型には、出血傾向を示すHermansky-Pudlak syndrome(HPS), 白血球巨大顆粒と免疫不全を伴うChédiak-Higashi syndrome(CHS), CHSに臨床症状は類似するが白血球巨大顆粒を持たないGriscelli syndrome(GS)が含まれる。全身症状をともなわないタイプを非症候型(non-syndromic albinism)と呼ぶ。非症候型眼皮膚白皮症としては7種類、症候型眼皮膚白皮症としては13種類、計20種類の原因遺伝子(遺伝子座を含む)が報告されている(表1)。

表1.眼皮膚白皮症を呈する疾患の病因遺伝子による分類

疫学

日本における眼皮膚白皮症の疫学データとしては、2009年度に行われた白斑を呈する疾患患者の皮膚科患者総数における頻度を調べた調査結果がある。全国の特定機能病院にアンケート用紙を送付し、全国262 施設(年間新患総数は912,986)より回答を得た結果、白皮症を呈する患者数は8,107 名、うち眼皮膚白皮症は約2%、つまり毎年約160人が特定機能病院を受診することが報告された1)。
ちなみに海外の報告では、OCA1については、黒人で28,000人に1人、白人で39,000人に1人という2)。OCA2ではアメリカの白人で36,000人に1人、アフリカ系黒人で10,000人に1人、アフリカでは3,900人に1人とアフリカで発生頻度が高い3)。

1) 鈴木民夫,金田眞理,種村 篤,ほか:尋常性白斑診療ガイドライン,日皮会誌,2012; 122:1725-1740.
2) 富田靖、神谷篤:眼皮膚白皮症1型(チロシナーゼ関連型),玉置邦彦:最新皮膚科学体系8「色素異常症」,東京,中山書店:2002;130-132.
3) 深井和吉:眼皮膚白皮症2型(P遺伝子関連型),玉置邦彦:最新皮膚科学体系8「色素異常症」,東京,中山書店:2002;136-138.

病因

非症候型眼皮膚白皮症では、メラニン合成過程に関わる分子の異常によりメラニン合成が低下ないし消失する。あるいは、メラノゾームの膜表面タンパク質の異常により、メラニン合成に必須のチロシンの輸送やメラノゾーム内部のpH環境が異常になることで、メラニン生成が低下ないし消失する。これらの異常は、メラノゾーム限定する異常であるために、基本的にはメラニン合成障害に基づく症状以外の症状が認められない。
一方、細胞質内部の膜輸送経路にかかわる分子の異常は、HPS、CHS、GSのような症候型眼皮膚白皮症が発症させる。症候型の原因遺伝子の場合、コードしているタンパク質が直接メラニン合成に関わっているわけではなく、細胞質に存在してメラノソームの生合成に関わる膜輸送経路で重要な役割を担っていると考えられている。

症状

皮膚の色調は、一見して白皮症とわかる明らかに白い皮膚の患者もあるが、かならずしも白皮症と認識できないような患者もいる。眼症状として、多くの眼皮膚白皮症患者には、羞明、眼振があり、矯正不可能な視力障害を伴う。このことは白皮症が単なる色白と決定的に異なるポイントである。
症候型眼皮膚白皮症では、HPSが代表的疾患であり、メラニン合成障害による症状の他に出血傾向、セロイド様物質の組織沈着を伴う。これらの症状は、メラノソーム、血小板内の濃染顆粒、そしてライソソームの生合成障害によっておこる。これまでに9種類の原因遺伝子が報告されている。このうちHPS1とHPS4では40歳以降に高率に合併する予後不良の疾患があり(間質性肺炎、肉芽腫性大腸炎など)、早期診断による予防対策が必要である。特に進行性の間質性肺炎は、多くの患者で予後を決める因子になっているが、日本人における合併頻度については不明である。CHSでは白血球の機能異常による易感染性を伴う。骨髄移植等の適切な治療がなされなければ、ほとんどの症例が小児のうちに呼吸器の再発性の細菌感染症で死亡する。GSでは、1型は筋力低下、運動神経発達障害、精神発達障害などの神経症状を合併する。

検査

眼皮膚白皮症を疑った場合、まずは眼底検査を行い、白皮眼底の所見の有無を精査する。軽症の眼皮膚白皮症患者においては、しばしば皮膚や頭髪、虹彩の色だけでは診断が難しい場合がある。そのような症例においても、眼底所見は重要な診断根拠となりうる。
HPSを疑う場合は、血液凝固系の精査が必要となる。また、汎血球減少を伴う症例においては骨髄検査が必要なこともある。さらに、中高年以降の患者においては、間質性肺炎を念頭に置いた胸部CTを含めた呼吸器の精査、および肉芽腫性大腸を念頭に置いた消化管の精査が必要となる。

治療

根治的な治療は確立されていない。

生活指導

遮光指導やサンスクリーン剤の使用、サングラスの使用、カモフラージュメイク、紫外線についての説明を行ない、中高年の患者に対しては皮膚癌の早期発見や早期治療を行う。眼科では、遮光眼鏡、各種コンタクトレンズ、サングラスを使用を指導し、屈折異常の矯正、弱視訓練、盲学校の斡旋などを行う。

(1)紫外線防御
① サンスクリーンの外用
眼皮膚白皮症には、メラニンが全くないタイプとある程度のメラニンがあるタイプがあり、画一的な紫外線防御対策は不合理である。理論的にはMED(最少紅斑量)以下の紫外線量の照射にして、頻繁に日焼けをおこすようなことがなければ、屋外活動も問題はない。個人のメラニン量や紫外線の強さを考慮して、日焼けを起こさない程度にサンスクリーンを外用すれば、屋外活動も十分に楽しむことが出来る。サンスクリーンはSPF30以上のものの使用を勧める。
② 日光暴露に注意する
紫外線は午前10時より午後2時までが一番強いので、できれば午前の早い時間か夕方に屋外での活動を行うよう計画する。
③ 服装と帽子
白いTシャツなどは紫外線をかなり通してしまうので、夏の服装については注意が必要である。

(2)皮膚癌検診受診指導
眼皮膚白皮症患者は、長年の紫外線照射により日光角化症を生じやすい。日光角化症は皮膚の扁平上皮癌へと移行していく可能性があるので、成人以降も定期的に皮膚科専門医を受診させるように指導する。

予後

色素沈着については、加齢と共に軽度の色素沈着を認める症例がある。
中高年以降の露出部位には健常人に比べ皮膚癌が高率に発症しやすい。
症候型においては合併症が生命予後に関係する。HPS1とHPS4では高率に40歳以降に予後不良の間質性肺炎や肉芽腫性大腸炎が発症する。特に進行性の間質性肺炎は、多くの患者で予後を決める因子になっているが、その合併頻度については不明である。CHSでは白血球の機能異常による易感染性を伴うため、早期の骨髄移植等の適切な治療が必要である。

最近のトピックス

Nitisinoneの投与によって、黄色変異型(OCA1B)で色素の産生が回復することが期待され、実際にOCA1Bのモデルマウスでは体毛および光彩の色素再生がみとめられている1)。NitisinoneはFDAが承認したチロシン代謝抑制剤であり、遺伝性高チロシン血症1型の治療薬として使用されている。これはチロシン代謝を抑制することにより、遺伝性チロシン血症の肝臓病変を改善させる働きをもっている。この薬剤は、結果として血液中のチロシン濃度を上昇させることになるので、チロシナーゼ活性が部分的に残存しているOCA1Bでは、色素の産生が回復することが期待される。現在、海外で治験中である。

1) Onojafe IF, Adams DR, Simeonov DR, et al: Nitisinone improves eye and skin pigmentation defects in a mouse model of culocutaneous albinism.J Clin Invest, 2011; 10: 3914-3923.

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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