1. HOME
  2. 閉塞性尿路疾患

へいそくせいにょうろしっかん
閉塞性尿路疾患Obstructive uropathy

小児慢性疾患分類

疾患群2
慢性腎疾患
大分類18
尿路奇形
細分類46
閉塞性尿路疾患

病気・治療解説

概要

様々な原因による尿路通過障害によって生ずる腎機能障害を閉塞性腎症といい,閉塞性腎症を生じる上部・下部尿路の異常を閉塞性尿路疾患と定義する。

病因・病態

尿路通過障害の原因を表1に示す。
本症は,血尿などの尿所見,側腹部痛,発熱など原疾患に付随した症状で発見される場合が多いが,症状に乏しく腎機能が高度に低下した段階で発見される場合もある。閉塞が両側性か一側性か,閉塞の程度,経過(急性,慢性)などによって病態が著しく異なる1)。

表1 閉塞性腎症の原因疾患

水腎症
水腎症は腎孟腎杯が拡張した状態と定義され,尿路の器質的・機能的狭窄や閉塞により引き起こされ,腎孟以下の尿路のどの部位でも生じ得る。小児の水腎症を呈する鑑別疾患としては,①先天性水腎症,②巨大尿管症・尿管壁などの膀胱・尿管の先天性異常に伴う拡張,③後部尿道弁・神経因性膀胱などの下部尿路機能障害に伴う尿管拡張,④膀胱尿管逆流症に伴う腎孟尿管拡張,⑤結石や腫瘍などによる腎孟・尿管閉塞に伴う水腎症,⑥間欠性水腎症などがあげられる。

巨大尿管
巨大尿管 巨大尿管は尿管が拡張した状態と定義され,もともと尿管の機能的狭窄により尿管が拡張する病名として報告された.病態を示す用語としては水腎水尿管になるが,現在巨大尿管症も病態が多岐なため病態を示す用語として使用されている。原因は水腎症同様にさまざまであり,上記の②③④⑤が該当する。巨大尿管に関しては小児の尿管径の正常値が明確化できないため,明確に定義は難しいが小児では5mm以上を超える正常尿管は少ないため,7~10mm以上で巨大尿管とされていることが多い。

診断

画像検査により診断する。超音波断層法が最も簡便で有用であるが,原疾患の診断や閉塞の有無,閉塞部位の特定,されに腎機能障害の評価には静脈性腎盂造影,造影CT検査,シンチグラフィ―が有用である。
閉塞の有無や程度の診断には99mTc-MAG3ないし99mTc-DTPAを用いたレノシンチグラフイーが,腎障害の程度の診断には99mTc-DMSAを用いたシンチグラフィ―をそれぞれ行う。

臨床症状

先天性水腎症
以前は腹部腫脹や腹痛などの症候性に判明したものが多かったが,現在は胎児超音波検査の施行により出生前より診断されることが多くなり,胎児期に発見される水腎症は1,000人に1人程度と報告されている。両側高度水腎症の場合,羊水過少が認められることがある。新生児から幼児期には超音波検査で診断されない場合,無症候性であり,触診上での腹部主張,血尿,尿路感染などで判明するため,胎児・新生児期の超音波検査によるスクリーニングは重要である。 年長児では,腹痛・側背部痛などの腹部所見を認めることが多くなり,周期的に悪化を認める間欠性水腎症で判明することもある。

原発性巨大尿管症
巨大尿管症も臨床症状はほとんど先天性水腎症と変わらないが,腎孟腎杯のみならず尿管という伸展可能な部分があるため,水腎症以上に臨床症状が乏しい。現在,胎児・新生児超音波検査での水腎水尿管症として指摘されることが多く,先天性水腎症より尿路感染で発見される頻度は高い。

検査

拡張の悪化・腎機能の低下をきたさないような経過観察もしくは手術決定するために行う。

超音波検査
もっとも非侵襲的で病態の把握に有用である。経時的に施行することで水腎症・巨大尿管の悪化・改善を確認できる。

レノグラム
分腎機能低下を確認するために重要な検査である。利尿レノグラムは以前広く行われたが,閉塞状態の評価が絶対的なものではないため,経過観察を行う際の参考程度である。初回検査で分腎機能に低下を認めた場合や経過観察中に分腎機能低下した場合,手術を考慮すべきである。

排尿時膀胱尿道造影(VCUG)
巨大尿管症の逆流性の鑑別,軽度水腎症における膀胱尿管逆流症による腎孟拡張の鑑別に必要であり,高度水腎症では,尿路感染コントロールや手術のプランに影響する可能性があるため,一度は評価すべきと考えられる。
MRウログラフイ・経静脈的腎孟尿管造影(IVP)
狭窄部位の確認,拡張の状態,尿管ポリープなどの確認に有用である。

逆行性腎孟尿管造影
狭窄部位の状態(尿管ポリープなどの確認)や狭窄部以下の尿管の状態確認に用いられる。小児では全身麻酔が必要であり手術適応のある場合に考慮されるべきである。

治療と予後

閉塞性腎症の治療の第一歩は,可及的速やかに閉塞を解除することである。先天性の腎孟尿管移行部閉塞では形成術が行われるが,小児では自然治癒する例もあり2),その適応および時期の判定は慎重に行う必要がある。後部尿道弁などの下部尿路閉塞では腎形成不全を伴うことがあり予後はよくない3)。尿路結石,尿管腫瘍などによる尿路閉塞で,両側性の場合は短期間に腎不全となる可能性があり,速やかに対処する必要がある。尿管ステントを両側ないし腎機能の良い方に留置する。小児例などステント留置が困難な場合は,超音波ガイド下に腎痩を造設する。
一側性尿管閉塞では,基本的には原因疾患の治療が優先されるが,閉塞の状況によっては,その解除も必要である。下部尿路の閉塞には,カテーテルの留置が原則であるがそれが困難な場合は膀胱痩造設が行われる。
薬物療法として,腎機能障害の進行に対して腎保護作用を期待しACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬を用いる場合があるが,有効性のエビデンスはない。
閉塞腎の予後は,閉塞の程度と期間などに左右される。また,繰り返す閉塞や尿路感染の存在は,予後に影響を及ぼす。閉塞解除後の総腎機能が正常の1/4以下の場合は,腎障害が不可逆性に進行する可能性が大きい。新規透析導入患者のうち,閉塞性尿路障害に起因する例が0.3%を占めている。

参考文献

1) Gulmi FA, et al. Pathophysiology of urinary tract obstruction. In: Campbell’s Urology, 7th ed, p342-385, WB Saunders, Philadelphia, 1998
2) O’Flynn KJ, Gough DC, Gupta S, et al. Prediction of recovery in antenatally diagnosed hydronephrosis. Br J Urol 71:478-480, 1993
3) Estes JM, MacGillivray TE, Hedrick MH, et al. Fetoscopic surgery for the treatment of congenital anomalies. J Pediatr Surg 27:950-954, 1992

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

ピックアップ・イベント

ニュース一覧

イベント一覧

この疾患に関するピックアップ記事、イベントはありません

実施中の治験/臨床試験