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しんけいがしゅ
神経芽腫Neuroblastoma

小児慢性疾患分類

疾患群1
悪性新生物群
大分類5
固形腫瘍(中枢神経系腫瘍を除く。)
細分類27
神経芽腫

病気・治療解説

概要

神経芽腫は神経堤(neural crest)由来の交感神経系の組織である副腎髄質や交感神経幹から発生し、カテコラミンやその代謝産物を産生する。このため、腫瘍マーカーとして尿中VMA/HVAがしばしば高値を示す。自然退縮する予後良好例から、強力な集学的治療を行っても生存率30~40%の難治例まで様々な症例が存在する。

疫学

脳腫瘍を除く小児の悪性固形腫瘍の中で最も頻度が高い。米国のがん統計(The Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) )では7000出生児に約1人の頻度で、15歳未満の小児における年間発症率は1万人あたり約1人とされ、本邦では年間150から200名程度の新規発症例があると推定されている。小児外科学会の小児の悪性新生物登録データによれば、マススクリーニングが休止された2005年以降、78例~112例で推移している。9割が5歳までに発症し、半数が1歳半までに、約1/3強が1歳までに発症する1)。

症状

発生部位により症状は異なるが、頚部や腹部では腫瘤触知により発見されることがある。進行例では、遠隔転移巣による症状として、眼窩周囲の出血斑や眼球突出、表在リンパ節や皮下転移巣触知、骨転移巣の痛み、骨髄抑制による出血斑、びまん性肝転移による肝腫大などが挙げられる。カテコラミン産生腫瘍の場合、頻脈、高血圧、るいそう、稀ではあるがVIP産生腫瘍の場合、下痢や電解質異常を呈することもある。また、腫瘍に対する免疫反応に起因するOMA(オプソミオクローヌス)や椎間孔付近に進展したdumb-bell型神経芽腫による圧迫症状として下肢麻痺や膀胱直腸障害が出現することもある。頚部や縦隔に発生した腫瘍では、Horner症候群(患側の縮瞳、眼瞼下垂、顔面の発汗低下)や呼吸困難(気道や肺の圧迫、胸水貯留などによる)を呈することがある。

診断

神経芽腫の診断基準は、原則として生検または摘出された原発巣または転移巣の病理組織学的診断によるが、骨髄穿刺による明確な腫瘍細胞の確認および腫瘍マーカーの上昇が認められれば診断可能である。また、原発巣や転移巣の部位と腫瘍マーカーから臨床的に神経芽腫と見なして治療や無治療経過観察2-4)を開始することがある。

治療

神経芽腫は自然退縮する予後良好例から、強力な集学的治療を行っても生存率30~40%の難治例まで様々な症例が存在するので、予後因子を正確に評価し、リスクに応じた治療戦略を立てることが重要である。最新の国際基準は、International Neuroblastoma Risk Group(INRG)によって提唱されたINRGリスク分類5)(図1)で、今後国際的にはこのリスク分類を用いることになると思われる。INRGリスク分類のためには、術前病期分類(INRG staging system(INRGSS))6)(図2)が必要で、このINRGSS病期分類のためには、Image Defined Risk Factor (IDRF)6, 7)の判定が必須となる。INRGSS以外のリスク因子としては、月齢、組織分類(含む分化度)、MYCN増幅、11q欠失、DNA ploidyが挙げられる。リスク分類では通常、低・中間・高リスクに分けられるが、低・中間リスクの治療コンセプトはほぼ同様であるため、これらをnon-high riskとして記載する。

1. Non-high risk症例の治療:画像診断から外科治療のリスクを予想するIDRF 6)を評価し、IDRFが陰性で局所に限局しているstage L1の場合は切除により治療終了となる。局所に限局しているがIDRF陽性のStage L2症例においては、化学療法後にIDRFを判定し、陰性化していたら手術を行う。最後まで陰性化しない場合は、MIBGの取込みや腫瘍マーカーを評価して、アクティブな腫瘍細胞が残っていないと思われる場合は、経過観察も選択肢となる。

2. High risk症例の治療:化学療法、造血幹細胞移植併用の大量化学療法と外科治療、放射線治療を組み合わせた集学的治療が行われるが、治療成績は未だ満足できるものではない。その再発形式は多くは遠隔転移巣における再発であるため、全身治療をいかに短期間に強化して行うかが課題となっている。本邦では、外科治療、放射線治療を治療の最後、つまり大量化学療法の後に行う「遅延局所療法」を採用することで一定の成績が得られてきた。現在、この遅延局所療法の効果と安全性を評価するために、JNBSGにおいて臨床試験が進行中である。欧米では大量化学療法の前にCRになっているべきであるという意見が根強い。欧米では、大量MIBG治療や分子標的療法、Gd2抗体を用いた免疫療法、レチノイン酸を用いた分化誘導療法による臨床試験が行われている。

図1:INRGリスク分類

図2:INRGSS – International Neuroblastoma Risk Group Staging System

予後

最新のデータであるINRGリスク分類5)において、年齢因子、INSS病期分類、病理および生物学的予後因子により、5-year EFS(event free survival :無病生存率)>85%の超低リスク、75%<5-year EFS<=80%の低リスク、50%<=5-year EFS<=75%の中間リスク、50%未満の高リスクに分類される。高リスク症例の予後は集学的治療が発達した近年においても改善されておらず、免疫療法や分子標的療法のトライアルが進められている。

参考文献

1) London WB, Castleberry RP, Matthay KK, et al: Evidence for an age cutoff greater than 365 days for neuroblastoma risk group stratification in the Children’s Oncology Group. J Clin Oncol 23:6459-6465, 2005
2) Hero B, Simon T, Spitz R, et al: Localized infant neuroblastomas often show spontaneous regression: results of the prospective trials NB95-S and NB97. J Clin Oncol 26:1504-1510, 2008
3) Yamamoto K, Hanada R, Kikuchi A, et al: Spontaneous regression of localized neuroblastoma detected by mass screening. J Clin Oncol 16:1265-1269, 1998
4) Yoneda A, Oue T, Imura K, et al: Observation of untreated patients with neuroblastoma detected by mass screening: a “wait and see” pilot study. Med Pediatr Oncol 36:160-162., 2001
5) Cohn SL, Pearson AD, London WB, et al: The International Neuroblastoma Risk Group (INRG) classification system: an INRG Task Force report. J Clin Oncol 27:289-297, 2009
6) Monclair T, Brodeur GM, Ambros PF, et al: The International Neuroblastoma Risk Group (INRG) staging system: an INRG Task Force report. J Clin Oncol 27:298-303, 2009
7) Brisse HJ, McCarville MB, Granata C, et al: Guidelines for imaging and staging of neuroblastic tumors: consensus report from the International Neuroblastoma Risk Group Project. Radiology 261:243-257, 2011

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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