ねざーとんしょうこうぐんネザートン(Netherton)症候群Netherton syndrome
小児慢性疾患分類
- 疾患群14
- 皮膚疾患
- 大分類2
- 先天性魚鱗癬
- 細分類5
- ネザートン(Netherton)症候群
病気・治療解説
概要
先天性魚鱗癬に毛髪の異常、アトピー性疾患の合併を特徴とする魚鱗癬症候群の1つである[1]。
疫学
常染色体劣性遺伝性であり、罹患率は約100万人に1人と言われている。
病因
遺伝子診断では、上皮系細胞に発現するセリンプロテアーゼインヒビター(LEKTI)をコードする遺伝子(SPINK5)の変異を同定する[2]。 その結果、角層セリンプロテアーゼ活性が異常亢進して、角層の過剰剥離がおこり、表皮のバリア破壊や免疫異常を生じる。
症状
出生直後からの魚鱗癬は主に顔面からはじまり、次第に全身を覆う。先天性魚鱗癬は、二重鱗屑縁を呈する曲折線状魚鱗癬、もしくは先天性魚鱗癬様紅皮症の臨床像を呈している。毛髪異常は陥入性裂毛症、捻転毛または結節性裂毛などがみられる。アトピー性皮膚炎や喘息などのアトピー性疾患は免疫異常としてほぼ全例が発症する。また、成長障害、アミノ酸尿、易感染性(再発性感染) 、体温調節不良、脱水などの全身症状も呈する。
診断
先天性魚鱗癬以外の重要検査所見としては、光顕で陥入性裂毛症(bamboo hair)がみられ、血中では好酸球増多、血清IgE値の上昇などが明らかである。
それ以外にも、角層のトリプシン様酵素活性の著しい高値、表皮上層の免疫染色によるLEKTI蛋白発現の減弱、表皮上層のトランスグルタミネース活性の減弱などの異常が報告されている。
病理所見では不全角化、乾癬様の角質肥厚がみられ、角層の剥離が目立つことも特徴である。
詳細は小児慢性特定疾患『診断の手引き』を参照のこと。
診断手引きはこちら
治療
本疾患では角層剥離が著しく亢進している。このため、たとえ局所外用であっても、長期にわたり外用剤を使用すれば、その外用剤成分の全身性の副作用にも注意をしなくてはいけない。とくにステロイド外用剤を全身に塗布した際に生じる、ステロイドの全身性副作用(高血圧、中心性肥満、糖尿病、骨粗鬆症、胃潰瘍など)には留意する必要がある。同様の理由でタクロリムス軟膏の外用も腎機能障害や高血圧など全身性の副作用が生じるおそれがあるため、本症患者への外用は原則禁忌[3]とされている。
予後
重症例では、新生児期には輸液・呼吸管理、正常体温の維持、皮膚の感染のコントロールなどが必要だが、新生児集中治療室の管理技術の進歩により予後の改善がみられている。成長したあとの皮膚症状は徐々に軽快傾向を示すようになり、潮紅、紅斑などは年齢とともに改善する傾向がある。紫外線誘発性の皮膚癌を生じやすいとの報告もあり、サンケアには十分に留意する。
参考文献
1) Netherton EW: A unique case of trichorrhexis nodosa; bamboo hairs. Arch Dermatol 78: 483-487, 1958.
2) Chavanas S, Bodemer C, Rochat A, et al: Mutations in SPINK5, encoding a serine protease inhibitor, cause Netherton syndrome. Nat Genet 25:141-142, 2000.
3) Allen A, Siegfried E, Silverman R: Significant absorption of topical tacrolimus in 3 patients with Netherton syndrome. Arch Dermatol. 137: 747-750, 2001.
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
この疾患に関するピックアップ記事、イベントはありません