じんにょうかんけっせき腎尿管結石Nephro- and urolithiasis
小児慢性疾患分類
- 疾患群2
- 慢性腎疾患
- 大分類15
- 腎尿管結石
- 細分類35
- 腎尿管結石
病気・治療解説
概要
尿路に結石が存在する状態を尿路結石症といい,腎~尿管内に生じる上部尿路結石と,膀胱~尿道に生じる下部尿路結石とに区別する。小児の尿路結石は成人と同様に上部尿路が多いが,頻度は低く全尿路結石患者の1%の発症率である(1)。性差はみられず,カルシウム(Ca)結石や感染結石の頻度が高い。また,代謝異常や尿路奇形を有することが多いのも特徴である。
病因・病態
腎尿路結石は尿停滞,尿濃縮,代謝,尿路感染,遺伝因子,環境因子,薬剤,高分子物質など様々な要因がかかわって生じる退院疾患であり,結石成分により病態は異なる。
結石成分による分類を表に示す。
表 尿路結石成分による原疾患分類 (2)
臨床症状
肉眼的血尿を主訴とする場合が最も多く半数近くを占める。次いで多いのは側腹部痛,下腹部痛(約1/3の症例)であるが,小児の場合は成人と比較して疝痛発作を訴えることは少ない。通常,疝痛は陰嚢や陰唇へと前面に放散する。
腎石灰化症,腎孟・腎杯結石の場合は,血尿を生じても通常痛みは生じない。しかし,結石が尿管に移動した場合その部位の痛みに加えて尿流停滞による腎孟内圧の急激な上昇から側腹部痛を生じる。乳幼児では,不機嫌,哺乳力低下,悪心・嘔吐といった不定愁訴であることが多く注意を要する。また,発熱を伴う場合は,尿路感染症を併発している可能性があり抗菌薬による治療が必要である。なお,無症状でX線や自然排石により偶然発見される尿路結石もある。
診断・鑑別診断
1.病歴の聴取
1) 生活習慣:偏食,水分摂取量,サプリメント摂取の有無,排池習慣,長期臥床など。
2) 既往歴:尿路系疾患,消化器疾患,悪性腫瘍既往の有無,結核の有無,薬剤使用歴など。
3) 家族歴:遺伝性疾患,代謝疾患,尿路結石の有無,結核の有無など。
2.検査
1) 尿検査:産生尿は尿酸結石,シスチン結石,アルカリ尿ではリン酸アンモニウムMg結石,リン酸Ca結石などがある。電解質,尿酸,シュウ酸,クエン酸,アミノ酸分析,キサンチンを測定する。
2) 画像検査:腹部超音波検査が汎用される。尿酸結石やキサンチン結石などX線陰性結石や水腎・水尿管症にCTが施行され,MRIも有用である。
3) 血液検査:血算,CRP,腎機能,尿酸,電解質(Ca,Mgなど),血ガス分析,アルカリホスファターゼに加え,原疾患の精査を行う。
4) 尿生化学検査:Cr,電解質(カルシウム,マグネシウム,ほか),尿酸シュウ酸,クエン酸,アミノ酸分析(シスチン,ほか),キサンチン,NAG,β2-ミクログロブリン,α1-ミクログロブリンなど。
5) 結石成分分析:再発という観点からその後の治療方針を立てるうえで重要である.
治療・予後
結石の大きさが,成人の場合は5mm以下,小児の場合は4mm以下の場合は自然排石が期待できる。しかし,自然排石せず内科的治療に反応しない場合は外科的治療の適応となる。
1. 内科的治療
薬物療法としては,痛みに対して対症的に鎮けい薬,鎮痛薬などを用いる。また,原疾患や結石成分により,以下のような薬物療法を行う。
尿細管性アシドーシス,シュウ酸カルシウム結石,リン酸カルシウム結石,尿酸結石,シスチン結石には,クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物,重曹(炭酸水素ナトリウム)による尿アルカリ化をはかる。
シュウ酸カルシウム結石に対して,カルシウムの腸管からの吸収を抑制するマグネシウム製剤(酸化マグネシウム)を投与する。
シスチン尿症に対して,シスチンを易溶性のシステインに変化させるアスコルビン酸やチオプロニン,D-ペニシラミン,カプトプリルなどを投与する。
2. 外科的治療
1) 体外衝撃波砕石(破砕)術(extracorporenal shock wave lithotripsy: ESWL)は成人と同様に第一選択となる。1歳未満の報告も散見される。年少児では,全身麻酔もしくは呼吸管理下に鎮痛薬の投与にて施行する。小児では,腎と肺が接近しているので肺出血をきたす危険があり肺野の防護処理を行うことが重要である。
2) 経尿道的尿管結石砕石術(trans urethral ureterolithotripsy: TUL)
骨盤内尿管,尿管下部の結石では,ESWLによる砕石が困難であり本法が適応となる。
3) 経皮的腎結石砕石(破砕)術(percutaneous nephrolithotripsy: PNL)
2cmを超えるような大きな結石や珊瑚状結石などで適応となる。ESWLとの併用療法が一般的である。TULも加えた治療法が選択される場合もある。
4) 開放手術(および腹腔鏡下腎孟切石術)
上記治療に抵抗する症例で選択される。最近,年長児における腹腔鏡下腎孟切石術(robot-associated laparoscopic pyelolithotomy)を推奨している報告も見受けられる。
再発予防のために,水分摂取を促し,尿量を増加させることは結石の成分を問わず重要である。シュウ酸結石や尿酸結石の予防には,これらの成分を多く含む食品の制限などの食事療法が有用である。
一般的に生命予後はよいが,小児では代謝異常や腎尿路奇形などに伴うこともあり,最終的な予後は原疾患に左右される。原疾患によっては,慢性腎不全へと進行していく症例もあるので注意を要する。
参考文献
1) Yoshida O, Terai A, Ohkawa T, Okada Y. National trend of the incidence of urolithiasis in Japan from 1965 to 1995. Kidney Int 56:1899-1904, 1999
2) 日本泌尿器学会.日本尿路結石症学会ガイドライン作成委員会(編):尿路結石症診療ガイドライン.金原出版, 2002
3) 太田和秀.尿路結石:日本小児腎臓病学会(編),小児腎臓病学.pp 361-365, 診断と治療社, 東京, 2012
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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