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たはつせいなんこつせいがいこつしゅしょう
多発性軟骨性外骨腫症Multiple cartilaginous exostosis; Hereditary multiple exostosis

小児慢性疾患分類

疾患群15
骨系統疾患
大分類2
骨系統疾患
細分類8
多発性軟骨性外骨腫症

病気・治療解説

概要

多発性軟骨性外骨腫症は良性腫瘍である外骨腫(骨軟骨腫)が全身の骨に多発する疾患である。
外骨腫は成長とともに大きくなり、皮下腫瘤として気づかれる。腫瘍は左右対称性に出現することが多く、
膝周囲の大腿骨遠位および脛骨近位に出現頻度が高い。外骨腫の多くは骨幹端に腫瘤を生じるため、
関節近傍の腫瘤により関節可動性が障害されること、骨端成長障害をきたす結果アライメント異常が生じること、
の2点が臨床的な問題である。重症例では上肢および下肢の機能障害を呈することも少なくない。
Langer-Giedion症侯群は毛髪鼻指節異形成症2型で、多発性外骨腫を主症状に含み、EXT1喪失を含む遺伝子欠失を示すため本疾患に含めるものとする。
稀に外骨腫が悪性化(軟骨肉腫であることが多い)することがある。

病因

常染色体優性の遺伝形式をとり、1型ではEXT1(8q23-24.1)、2型ではEXT2(11p12-11)、3型ではEXT3(19p)の遺伝子異常が報告されている。
EXT1とEXT2はクローニングされておりEXT1が1/2、EXT2が1/3の発生に関与している。しかし患者の10%程度は新突然変異といわれている。
Langer-Giedion症侯群は、TRPS1とEXT1喪失を含む遺伝子欠失を示す。
EXT1、EXT2のいずれもヘパラン硫酸の合成に関与しているとされ、患者においてこれらの遺伝子変異からヘパラン硫酸鎖が減少すると、
軟骨分化を制御しているインディアンヘッジホッグの拡散制御が不能となる結果として軟骨性骨形成に異常を生じると考えられている。

疫学

日本整形外科学会骨系統疾患全国登録、および厚生労働科学研究費補助金「遺伝性多発性外骨腫症の実態把握と遺伝子多型に関する基盤研究」
(H22, 23年度)によると、本邦における患者数は約1000人でこのうち約750人程度が成人例であると思われる。

臨床症状

外骨腫はさまざまな部位の関節近傍に多発する皮下腫瘤として気づかれ、新生児期から存在するものの多くは幼児期以後に発症し、12歳までに96%が診断される。成長期には軟骨内骨化が進み腫瘤は増大する。
好発部位は大腿骨および下腿骨で、上腕骨、前腕骨、肩甲骨、骨盤、肋骨、指骨、趾骨に多い。罹患関節は膝関節が最も多い。
臨床症状は腫瘤による可動域制限が主だが、骨端線への影響による骨端成長障害により骨長短縮や骨変形が生じて、
上下肢のアライメント異常や低身長、さらに前腕と下腿の回旋制限が問題となることも少なくない。
Langer-Giedion症侯群では多発性外骨腫に加え、細く疎な毛髪、洋梨様の鼻、短指趾、精神発達遅滞を示す。

検査所見

X線所見
長管骨骨幹端部から連続する骨性隆起で、先端は骨幹方向に向いていることが多い。
橈骨の弯曲を伴った尺骨の短縮、および手関節の尺側偏異
腓骨の短縮を伴った足関節の外反変形

血液検査所見(特殊検査)
腫瘍の表面は成長軟骨板と同様の構造を示す軟骨帽で覆われている。

診断の際の留意点

本症では膝関節近傍に腫瘍が好発するので、多発性の外骨腫を疑った場合には、膝関節のX線撮影が有用となる。
Langer-Giedion症侯群では、多発性外骨腫以外に毛髪鼻指節異形成症の症状を呈する。

治療

本質的な治療法はない。対症的な外科治療が行われるものの、臨床症状が軽度な場合は経過観察のみが行われている。
外科治療は外骨腫切除術が基本となる。部位別に必要性が高いものは前腕(手関節)および下腿骨(足関節)の外骨腫である。
橈尺骨あるいは脛腓骨の骨長の不均衡や骨間の開大が進行するため、幼児期からの手術を行う場合も少なくない。
また下肢アライメント異常および脚長不等に対して、骨端線抑制術や骨延長術、矯正骨切り術が行われる場合もある。

予後

思春期以後の骨端線閉鎖時期になると外骨腫の成長も停止する。軟骨帽の厚さが2cmを越える場合、成人期に急速に腫瘤の増大を示す場合などでは、悪性転化の可能性を考慮すべきである。
軟骨肉腫がほとんどであるが、骨肉腫や線維肉腫の報告もある。頻度は2~20%と報告ごとにまちまちであるが、一般的には5%程度と考えられている。

成人期以降の注意点

下肢のアライメント異常が残存すると、成人期以降、荷重関節の変形性関節症発症のリスクとなる。また、腫瘍の悪性転化が問題となる。
単発性の外骨腫症と比較すると、悪性転化する頻度は有意に高い。悪性腫瘍の発症は平均31歳で、
10歳未満および50歳以上ではほとんど悪性化を認めないという報告がある。

参考文献

日本整形外科学会作成の診断基準

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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