むこたとうしょうろくがたムコ多糖症Ⅵ型Mucopolysaccharidosis
小児慢性疾患分類
- 疾患群8
- 先天性代謝異常
- 大分類6
- ライソゾーム病
- 細分類79
- ムコ多糖症Ⅵ型
病気・治療解説
概要
N-アセチルガラクトサミン―4-スルファターゼ(アリルスルファターゼB)が先天的に欠損することに起因する常染色体劣性遺伝病である。本症の臨床所見は、成長障害、骨関節症状、心臓弁膜症、角膜混濁などを呈し,ムコ多糖症I型(ハーラー症候群)と類似しているが、知的障害は伴わない。身体所見、発症時期、症状の進行速度により重症型・中間型・軽症型に分類されるが、病型の境界は不鮮明で幅広いスペクトラムを示す。
疫学
きわめてまれな疾患で現在確認されている日本人生存症例は10例以下である。
病因
ライソゾーム内でデルマタン硫酸(DS)を分解するために必要なN-アセチルガラクトサミン―4-スルファターゼ(アリルスルファターゼB)の欠損が原因で、DSが過剰蓄積する。
症状
身体所見は、ハーラー症候群と共通する症状・経過を示すが、知的障害はみられない。
① 骨・関節障害:頸椎軸不安定・亜脱臼による頚髄圧迫、手指の屈曲拘縮(鷲手)、脊椎後弯、股・膝・肘・肩関節の拘縮が認められる。
② 気道障害:胸郭変形による拘束性肺障害、閉塞性肺障害、気管変形・狭小化、巨舌、アデノイド・扁桃肥大、声帯肥厚などが認められ、睡眠時無呼吸、いびき、日中の傾眠傾向、呼吸音の増強、肺胞低換気などをきたす。
③ 眼科的異常:進行性の角膜混濁、緑内障、網膜色素変性を認める。
④ 耳鼻科的異常:反復性の中耳炎を認め、軽度から中等度の混合性難聴を呈する。
⑤ 循環器障害:僧帽弁・大動脈弁を主とした閉鎖不全症、
狭窄症などの心弁膜症を認める。
⑥ 神経症状:頭蓋骨底や椎骨変形による脊髄圧迫、水頭症、手根管症候群などを認める。知能は正常である。
⑦ その他:乳児期からの広範な異所性蒙古斑、臍・鼠径ヘルニアを認める。腹部膨隆(肝脾腫大)、特徴的顔貌(頭囲拡大、側頭・前頭の膨隆、鞍鼻、大きく硬い鼻翼、厚い口唇、歯肉肥厚、歯列不整、厚く硬い耳介)が見られる。
診断
ムコ多糖の過剰蓄積は、尿中ムコ多糖の定量で判定する。尿中ムコ多糖の分画から、病型をある程度予測できるが、最終的には、血液あるいは培養皮膚線維芽細胞などで酵素活性の低下を証明し確定診断とする。遺伝子診断は、診断を確定するのに必須ではないが重症度の予後判定や家族内の保因者診断や発端者同胞の出生前診断には有用である。
① 画像検査:レントゲン画像において、弾丸様指骨、中手骨の先細り、椎体前面の楔状変形、椎体の扁平化、第2頸椎歯突起低形成、肋骨のオール上変形、大腿骨頭形成不全などの多発性異骨症(Dysostosis Multiplex)が認められる。頭部MRIでは、cribriform(ふるい状)あるいはhoneycomb-like(蜂の巣様)と呼ばれる血管周囲腔の拡大による陰影像が見られる。
② 尿中ウロン酸(グリコサミノグリカン):各年齢における総排泄量の基準値に対して、増加を認める。分画上はDSの異常排泄を認める。
③ 酵素活性:白血球、培養線維芽細胞などでARSB活性低下が認められる。
④ 遺伝子解析:
治療
対症療法と原因療法がある。後者としては、造血細胞移植と酵素補充療法がある。
予後
進行性で致死性の重篤な疾患である。
成人期以降
進行性疾患のため成人期にはかなり重症化する。酵素補充療法も病態の進行を完全に阻止することはできないので、適宜対症療法を実施する。
参考文献
厚生労働省難治性疾患等政策研究事業ライソゾーム病に関する調査研究班編集「ライソゾーム病・ペルオキシソーム病診断の手引き」診断と治療社(2015)
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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