むこたとうしょうさんがたムコ多糖症Ⅲ型Mucopolysaccharidosis
小児慢性疾患分類
- 疾患群8
- 先天性代謝異常
- 大分類6
- ライソゾーム病
- 細分類77
- ムコ多糖症Ⅲ型
病気・治療解説
概要
グリコサミノグリカンのヘパラン硫酸(HS)の分解に必要なライソゾーム酵素の先天的欠損により発症する常染色体劣性遺伝性疾患である。ムコ多糖症I型やⅡ型と比べて骨の障害が少なく知的障害は重い。軽度の肝臓腫大があり、角膜混濁はない。尿中にヘパラン硫酸が出ているがデルマタン硫酸は認められない。
疫学
日本では、約10万人に1人の発生頻度である。
病因
生化学的に4つの亜型にわけられる。すなわち、heparan N-sylfatase欠損症(A型)、α-N-acetylglucosaminidase欠損症(B型)、acetylCoA:α-glucosaminide acetyltransferase欠損症(C型)、N-acetylglucosamine 6-sulfatase欠損症(D型)の4つである。日本人では、B型の方が多い。また、沖縄県にB型のcommon mutationがありfounder effectが推測されている。C型、D型は、どちらもまれである。
症状
2歳から6歳頃に症状が発現する。多動、乱暴な行動、発達遅滞、粗い毛、多毛が認められる。中枢神経変性症状が急速に進行し、7〜8歳までに言語は消失する。言葉の獲得が見られないままに退行する症例もある。10歳代になると、睡眠障害、肝脾腫、痙攣発作が見られ、周囲とのコンタクトも消失する。Sanfilippo症候群は、ムコ多糖症に特徴的な粗な顔貌や関節・骨の変形は非常に軽度であるため、診断が難しい。身長も、ほぼ正常範囲である。10歳代で寝たきりとなり、多くは20歳代頃に呼吸器感染症等で死亡するが、30歳、40歳にまで達する症例もある。A型が比較的重症であると言われている
診断
ムコ多糖の過剰蓄積は、尿中ムコ多糖の定量で判定する。尿中ムコ多糖の分画から、病型をある程度予測できるが、最終的には、血液あるいは培養皮膚線維芽細胞などで酵素活性の低下を証明し確定診断とする。遺伝子診断は、診断を確定するのに必須ではないが重症度の予後判定や家族内の保因者診断や同胞の出生前診断には有用である。
① 画像検査:頭蓋骨肥厚、トルコ鞍拡大、腰椎卵円化、オール状肋骨、砲弾様指骨、大腿骨頭異形成などを認めるが、ムコ多糖症I型Ⅱ型に比して程度は軽い。尿中ウロン酸(GAG):DSとHSが多量に排泄される。排泄量は成長とともに減少する。
② 尿中ムコ多糖分析:尿中ウロン酸総量の増量、ヘパラン硫酸の排泄増多。
③ 末梢白血球あるいは培養線維芽細胞で上記の酵素活性のひとつが欠損している。
治療
造血幹細胞移植が考慮されるな愛があるが、効果は明らかではない。酵素補充療法が、ⅢA型とⅢB型で開発中である。
予後
進行性で致死性の重篤な疾患である。
成人期以降
進行性疾患のため成人期には特に重症化する。
参考文献
厚生労働省難治性疾患等政策研究事業ライソゾーム病に関する調査研究班編集「ライソゾーム病・ペルオキシソーム病診断の手引き」診断と治療社(2015)
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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