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むこたとうしょうにがた
ムコ多糖症Ⅱ型Mucopolysaccharidosis

小児慢性疾患分類

疾患群8
先天性代謝異常
大分類6
ライソゾーム病
細分類76
ムコ多糖症Ⅱ型

病気・治療解説

概要

グリコサミノグリカンのデルマタン硫酸(DS)とヘパラン硫酸(HS)の分解に必要なライソゾーム酵素であるIduronate-2-sulfatase の先天的欠損により発症するX連鎖劣性遺伝性疾患である。

疫学

発症頻度は、約5万人にひとりとされている。日本では、約200症例が報告されている。

病因

① 重症型:乳幼児期から発語の遅れなどの中枢神経症状に気づかれて来院する場合が多く、6〜7歳をピークに発達の退行がはじまり、徐々に進行してゆく。成長障害、骨関節症状、呼吸器症状なども進行する。従来は10歳代の死亡例が多かったが、酵素補充療法、造血幹細胞移植、対症療法の進歩などにより、生命予後は改善している。
② 軽症型:幼児期の関節拘縮が初発症状である場合が多く、知的には正常に発達するが、成長障害、骨関節症状、弁膜症、視力・聴力低下などの症状は徐々に進行して行く。やはり酵素補充療法などの進歩により、身体機能が維持され、QOL や生命予後は改善している。
③ 中間型:重症型と軽症型の間には様々な程度の症状を有する、いわゆる中間型の患者が存在する。

症状

Hurler病と共通するムコ多糖症特有の症状・経過を示すが、全般的にHurler病より症状・所見は軽く、角膜混濁は原則としてみられない。
<乳児期> 広範な蒙古斑・異所性蒙古斑、反復性の中耳炎、臍・鼠径ヘルニアが認められ、乳児期後半には身長、体重、頭囲が+2SDを越える例が多い。軽微な脊椎後弯、腰椎椎体の卵円化を認める例もある。<幼児期> 幼児期は過成長傾向を示す(3歳児Hunter病24例の平均身長98.0 cm、体重 20.1 kg)。特徴的顔貌(頭囲拡大、側頭・前頭の膨隆、鞍鼻、大きく硬い鼻翼、厚い口唇、歯肉肥厚、歯列不整、厚く硬い耳介)、巨舌、アデノイド肥大、騒音呼吸、多毛、粗な皮膚を呈する。畝状の皮膚肥厚は本症に特徴的である。軽症型は精神運動発達は正常であるが、重症型は運動・発語の遅れ、行動異常を認める。呼吸器感染・中耳炎を反復し、伝音性難聴をきたす。手指拘縮(鷲手)、脊椎後弯、股・膝・肘・肩関節の拘縮が認められるようになる。肝腫大による腹部膨隆、僧帽弁・大動脈弁閉鎖不全も出現する。<学童〜思春期> 成長は学童期以降鈍化し、小学校高学年でほぼ停止する。最終身長は110〜130 cmであるが、168 cmの症例もある。知的発達は軽症型ではほぼ正常であるが、QOLの低下で学業・就労が困難な例もある。重症型では6〜7歳をピークに退行を認める例が多く、思春期には呼吸障害、嚥下障害などが進行し、死亡例がある。<成人期> 重症型では脳障害が進行し死亡する例が多い。軽症型では知能は保たれているが、弁膜症、気道狭窄、難聴、視力障害(網膜色素変性)、関節拘縮などが進行してQOLが低下する。夜間BiPAPなどの補助呼吸が必要になる例もある。生命予後は軽症型でも大きな差がある

診断

ムコ多糖の過剰蓄積は、尿中ムコ多糖の定量で判定する。尿中ムコ多糖の分画から、病型をある程度予測できるが、最終的には、血液あるいは培養皮膚線維芽細胞などで酵素活性の低下を証明し確定診断とする。遺伝子診断は、診断を確定するのに必須ではないが重症度の予後判定や家族内の保因者診断や発端者の同胞の出生前診断には有用である。

① 画像検査:頭蓋骨肥厚、トルコ鞍拡大、腰椎卵円化、オール状肋骨、砲弾様指骨、大腿骨頭異形成などを認める。頭部MRIでは脳室拡大、血管周囲腔の空泡状変化が認められる。
② 尿中ウロン酸(GAG):DSとHSが多量に排泄される。排泄量は成長とともに減少する。
③ I2S活性:白血球、培養線維芽細胞などで活性低下が認められる。残存活性で重症度を区別することは困難である。
④ IDS遺伝子:本症の遺伝子変異は極めて多様である。隣接するpseudogeneとの相同組換えによって相互の逆位を生じる変異は多くの人種に比較的高頻度に見いだされる。

治療

対症療法と原因治療がある。後者としては、酵素補充療法と造血細胞移植がある。

予後

病初期に発見され、早期に治療を開始した症例では比較的予後がいい。

成人期以降

酵素補充療法や造血細胞移植を行った症例でも、病気の進行を完全に止めることはできない。

参考文献

厚生労働省難治性疾患等政策研究事業ライソゾーム病に関する調査研究班編集「ライソゾーム病・ペルオキシソーム病診断の手引き」診断と治療社(2015)

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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