みとこんどりあこきゅうさふくごうたいけっそんしょうミトコンドリア呼吸鎖複合体欠損症Mitochondrial respiratory chain disorders
小児慢性疾患分類
- 疾患群8
- 先天性代謝異常
- 大分類4
- ミトコンドリア病
- 細分類54
- ミトコンドリア呼吸鎖複合体欠損症
病気・治療解説
概要
ミトコンドリアの役割は多数あるが、最も大切なのはエネルギー(ATP)の生合成であり、その役割を担うのが呼吸鎖複合体である。したがって、「ミトコンドリア病はミトコンドリア呼吸鎖複合体異常症(MRCD)」と読み替えることができる。いかなる症状、いかなる臓器・組織、いかなる年齢、そしていかなる遺伝形式でも発病しうるのがミトコンドリア病である。従来神経・筋肉の病気と考えられていたが、ミトコンドリア心筋症、肝症など単独の臓器障害を呈するミトコンドリア病も多い1)。
疫学
全てを加えれば最も多いエネルギー代謝系の先天代謝異常症であり、出生5,000人に1人とされる2,3)。
病因
呼吸鎖はミトコンドリア遺伝子と核遺伝子の共同作業で形成される。したがってミトコンドリア病は、ミトコンドリア遺伝(母系遺伝)形式以外に常染色体優性・劣性、X連鎖のすべての遺伝形式で発病しうる4)。特に幼少時期発症例は症状が多彩で重篤な症例が多く、その9割以上は核遺伝子異常によるものである5)。
症状
小児科医の出会うミトコンドリア病の3大症状は、①脳筋症状、②消化器・肝症状、③心筋症状とされる6)。従来ミトコンドリア病の主体とされてきた、いわゆる“ミトコンドリア脳筋症”は比較的軽症のミトコンドリア病に属し、年長発症例に多い。
診断
治療
対症療法が中心である。発作時はエネルギー消費を抑えるため安静・睡眠が奨励される。糖質制限と脂質優先摂取、バルプロ酸などのミトコンドリア毒を避けること、発作時にはL-カルニチン、コエンザイムQ、ビタミンB1・Cを中心とするビタミンカクテル療法を行う。いくつかの原因療法も考案中であり、中でもMELASに対するL-アルギニン療法はまもなく保険認可される見通しである。他に治験が進行ないし計画中の薬剤として、ピルビン酸ナトリウム、PBI-743、5-アミノレブリン酸などがあげられる。
成人期以降
病型により千差万別であり一概には言えないが、多くのミトコンドリア病の患者は大小のハンディキャップを背負いつつ成人期に移行する。年少の内から、小児科医は成人各科医師との移行期医療を模索しつつ診療に当たる必要がある。そのための重症度分類も、9つのセクション(日常生活動作(ADL)、高次脳機能、運動、視覚、聴覚、心合併症、腎機能、血液機能、肝機能)から成るミトコンドリア病の症状の多様性に配慮したものが、診断基準に続いて難病ホームページに公開されている。
参考文献
1) 大竹 明.ミトコンドリア病:概論.in 別冊日本臨床 新領域別症候群シリーズ No.20 先天代謝異常症候群(第2版)下-病因・病態研究、診断・治療の進歩- 日本臨床社 大阪 2012; 623-30
2) Yamazaki T, et al. Molecular diagnosis of mitochondrial respiratory chain disorders in Japan: Focusing on mitochondrial DNA depletion syndrome. Pediatr Int 2014; 56: 180-187
3) Skladal D, et al. Minimum birth prevalence of mitochondrial respiratory chain disorders in children. Brain 2003; 126: 1905-1912
4) Ohtake A, et al. Diagnosis and molecular basis of mitochondrial respiratory chain disorders: exome sequencing for disease gene identification. Biochim Biophys Acta 2014; 1840: 1355-1359
5) Scaglia F, et al. Clinical spectrum, morbidity, and mortality in 113 pediatric patients with mitochondrial disease. Pediatrics 2004; 114: 925-931
6) Gibson K, et al. Mitochondrial oxidative phosphorylation disorders presenting in neonates: clinical manifestations and enzymatic and molecular diagnoses. Pediatrics 2008; 122: 1003-1008
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