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びじゅうもうふうにゅうたいびょう
微絨毛封入体病microvillus inclusion disease

小児慢性疾患分類

疾患群12
慢性消化器疾患
大分類1
難治性下痢症
細分類7
微絨毛封入体病

病気・治療解説

概要

腸管上皮細胞の微絨毛が腸管腔側に正常に局在できないために大量の水様下痢をきたし、水、電解質や重炭酸の喪失と栄養素の吸収障害をきたす常染色体劣勢遺伝性疾患。電子顕微鏡的に微絨毛の密度が疎で丈が低いことから先天性微絨毛萎縮症(congenital microvillus atrophy)とも呼称されてきた。

疫学

ヨーロッパでは約200名の患者がいるとされ、英国では20万出生に1人の発症率と報告されている。本邦での正確な疫学は不詳であるが、欧米の報告に比してかなり発症率は低いと考えられる。

病因

腸管上皮細胞の成熟過程で起こるべき細胞内での微細構造の移送に関わる機能異常により、微絨毛が腸管腔側に正常に局在できないことが病因であり、Myosin-VbをコードするMYO5B遺伝子がその原因遺伝子であることが2008年にMueller Tらによって報告されている。

症状

生後数日以内から著しい水様下痢をもって発症し、著しい脱水と代謝性アシドーシスを呈する。水様下痢の量は1日で体重1kgあたり100〜500mLに達し、早期に治療が開始されなければ致死的である。通常、妊娠中や周産期の経過には異常を呈さない。便中には塩類や重炭酸が漏出して常に著しい浸透圧性下痢となり、血清カルシウム、マグネシウムやリンの低下も呈する。蛋白漏出は伴わない。経口・経腸栄養の吸収効率が著しく悪いため、栄養のほとんどを経静脈的に補給しなければならない。

診断

特徴的な臨床症状や便電解質所見が重要であるが、診断の確定には小腸粘膜生検が必要である。透過電子顕微鏡での観察で管腔側の微絨毛が疎で丈が低く、細胞質内に微絨毛構造が封入体となってとどまっている像が観察される。光学顕微鏡では、PAS染色やアルカリフォスファターゼ染色、CD10免疫染色によって細胞質内に微絨毛封入体が観察される。MYO5b遺伝子の解析が可能である。

治療と予後

新生児期に高度の脱水とアシドーシスをきたすため、早期に中心静脈ルートの確保を必要とする。経腸栄養の吸収効率が非常に悪いために経静脈栄養への依存度が高く、肝障害や腎障害に留意した栄養管理が必要である。例外的に加齢とともに吸収能力が回復したという症例の報告もあるが、通常は小腸機能不全の状態で経静脈栄養からの離脱は不可能で、長期の合併症から小腸移植の適応となる。

参考文献

Ruemmele FM, Schmitz J and Goulet O. Review: Microvillous inclusion disease (microvillous atrophy). Orphanet Journal of Rare Diseases 2006, 1:22

Müller T, Hess MW, Schiefermeier N, Pfaller K, et al. MYO5B mutations cause microvillus inclusion disease and disrupt epithelial cell polarity. Nat Genet. 2008 Oct;40(10):1163-5.

Koepsell SA, Talmon G. Light microscopic diagnosis of microvillus inclusion disease on colorectal specimens using CD10. Am J Surg Pathol. 2010 Jul;34(7):970-2.

Thoeni CE, Vogel GF, Tancevski I et al. Microvillus inclusion disease: loss of Myosin vb disrupts intracellular traffic and cell polarity. Traffic. 2014 Jan;15(1):22-42.

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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