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きょのうしょう-もうさいけっかんきけいしょうこうぐん
巨脳症-毛細血管奇形症候群Megalencephaly-capillary malformation syndrome; Megalencephaly-capillary malformation-polymicrogyria

小児慢性疾患分類

疾患群11
神経・筋疾患
大分類3
脳形成障害
細分類11
巨脳症-毛細血管奇形症候群

病気・治療解説

概要

巨脳症ー毛細血管奇形症候群は、大頭に加えて多小脳回、毛細血管奇形、過成長、指趾奇形、結合組織異常などを認める症候群である。近年症候群として認識され、2012年に細胞増殖に関与するmTORシグナル伝達系が責任遺伝子であることが同定されてから報告例が急増している。巨脳により、頭囲が拡大するだけでなく、小脳扁桃下垂による水頭症や脊髄空洞症をきたすことがあり、時に手術を要する。また、多小脳回など、脳実質の変化を来たし、てんかんや精神運動発達遅滞、自閉症スペクトラムの症状を呈する。
以前はMacrocephaly-cutis marmorata telangiectasia congenitaの病名が用いられていたが、本症候群でみられる皮膚病変は毛細血管奇形であり、大理石様皮斑ではないことから、巨脳症ー毛細血管奇形症候群が正確に病態を表していると考えられている。

病因

細胞増殖に関与するPI3K-AKT-mTORシグナル伝達系の遺伝子変異によって生じる。AKT3, PIK3R2, PIK3CA遺伝子変異の報告がある。PI3K-AKT-mTORシグナル伝達系は、様々な細胞の増殖や浸潤、アポトーシスにかかわる。遺伝形式については常染色体優性遺伝形式となる。突然変異による体細胞モザイクの場合もある。

疫学

疾患概念が新しく、正確な患者数は不明であるが、発達遅滞を伴う大頭の児に一定数含まれると考えられる。

臨床症状

(1) 中枢神経系

頭囲拡大:
生下時から頭囲が大きく、生後も頭囲拡大がみられる。+3SD以上になることが多い。大脳や小脳の肥大により大頭になる。小脳の肥大により小脳扁桃が下垂し、閉塞性の水頭症を呈し、さらに大頭が進行することがある。
精神運動発達遅滞:
ほぼ全例で発達遅滞を呈するが、その程度は様々である。

てんかん:
多小脳回が原因と考えられる。シルビウス裂近傍の多小脳回や片側巨脳症では特に難治になりやすく、てんかん手術をようすることがある。

(2) 皮膚所見

毛細血管奇形:
表在性、網目状で、苺状血管腫のような隆起性病変ではない。口唇上部正中が特徴的であるが、全身どこにでもみられる。入浴時や啼泣時など毛細血管が拡張すると顕著になる。一方、毛細血管拡張時以外は目立たず、軽微なこともあるので、注意を要する。
皮膚の過伸展:
結合組織の異常と考えらえている。

(3) その他

過成長、四肢・顔面・頭部の非対称、合指症、先天性心疾患(心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、ファロー四徴症など)を認める。不整脈による突然死の報告もある。

検査所見

頭部MRIで多小脳回をはじめとする脳回異常、脳室拡大、小脳扁桃下垂、脳梁の肥大、大脳白質病変を認める。

診断の際の留意点

日本での診断基準はないので、海外からの文献を参考に診断することになるが、診断は身体所見や画像から総合的に行う。過成長、頭囲拡大を呈する他の症候群や家族性大頭症との鑑別を要する。確定診断は遺伝子診断だが、現時点では保険収載されておらず研究室レベルとなる。低頻度体細胞モザイクの場合は遺伝子診断が困難な場合もある。

治療

水頭症を合併した場合はシャント手術など水頭症手術を行う。小脳扁桃下垂が見られる場合も大孔減圧術などの脳外科手術が必要である。てんかん合併例については通常のてんかん治療を行うが、難治な場合はてんかん外科手術を要する。

合併症

臨床症状のその他を参照

予後

新しい疾患概念のため不明であるが、予後にはばらつきがあると予想される。

成人期以降の注意点

新しい疾患概念のため不明

参考文献

Martinez-Glez V et al. Macrocephaly-capillary malformation: Analysis of 13 patients and review of the diagnostic criteria. Am J Med Genet Part A 152A: 3101-3106, 2010
Mirzaa et al. Megalencephaly syndromes and activating mutations in the PI3K-AKT pathway: MPPH and MCAP. Am J Med Genet Part C Semin Med Genet 163c:122-130, 2013
岡本伸彦:Megalencephaly-capillary malformation-polymicrogyria(MCAP) および類縁疾患:別冊日本臨床 神経症候群IV 第2版(2014年)日本臨床社 p150-153

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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