ずいがしゅ髄芽腫Medulloblastoma
小児慢性疾患分類
- 疾患群1
- 悪性新生物群
- 大分類6
- 中枢神経系腫瘍
- 細分類76
- 髄芽腫
病気・治療解説
概要
中枢神経系胚芽腫に分類される脳腫瘍の一つである。後頭蓋窩に発生し未分化な小型細胞からなるが、起源細胞には諸説ある。脳脊髄液を介して髄腔内に播種しやすく、初発時患者の15−40%に髄腔内播種が見られる。
WHO分類によると、次の5つの組織型がある。古典的髄芽腫、退形成性髄芽腫、大細胞型髄芽腫、線維形成性/結節性髄芽腫、広範な小結節形成を伴う髄芽腫。
疫学
小児脳腫瘍は、年間10万人に3.5人の割合で発生し、その20%を髄芽腫が占める。発症のピークは4歳であるが、30%以上の症例が15歳を超えて発症し、青年期にも見られる腫瘍である。
症状
第4脳室レベルの小脳虫部に発生するため、閉塞性水頭症による頭蓋内圧症状(頭痛、嘔気、嘔吐)や小脳失調症状(ふらつき)で発見されることが多い。乳幼児では、頭囲拡大や大泉門開大が見られることがある。
治療
播種の有無にかかわらず、原発巣摘出術が先行して行われる。その目的は腫瘍を最大限に切除することである。しかし脳幹部への浸潤は予後に影響しないため、脳幹部や第4脳室の腫瘍を無理に摘出することは推奨されず、手術による神経障害は最小限に留めるべきである。髄芽腫は、放射線感受性および化学療法感受性の高い腫瘍であり、手術に引き続き、放射線治療と化学療法が行われる。
放射線治療は、後頭蓋窩に治療線量(50-54Gy)が照射される。脊髄播種を認める症例では、全脳全脊髄にも36Gyの放射線照射を行い、脊髄播種のない症例でも、播種再発予防として、24Gyまでの全脳全脊髄照射を行う。ただし、乳幼児に対する放射線治療は、神経学的晩期合併症(認知能低下)をもたらすため、放射線治療を避けるか、または照射時期をできるだけ送らせる戦略が取られることが多い。
化学療法は、髄芽腫への効果が認められている抗がん剤として、シスプラチン、カルボプラチン、ロムスチン、シクロフォスファミド、イフォスファミド、ビンクリスチン、エトポシド、メソトレキセートなどが知られており、これらを組み合わせた多剤併用療法を繰り返し行う。
予後
予後因子として、年齢、播種の有無、手術摘出度、組織型が知られている。低年齢(3−4歳で区切ることが多い)、播種有り、低い摘出度、退形成性髄芽腫と大細胞型髄芽腫で予後が悪い。
3−4歳以上で播種がなく、ほぼ全摘できた場合の5年無再発生存率は70−85%であるが、播種があるか亜全摘切除しか受けられなかった3−4歳以上の症例での5年無再発生存率は60%となる。退形成性髄芽腫や大細胞型髄芽腫の場合はさらに生存率が下がる。
3−4歳以下の場合は、放射線治療を避けることもあり、5年無再発生存率は50%程度である。しかし線維形成性/結節性髄芽腫、もしくは広範な小結節形成を伴う髄芽腫で、全摘出術を受けられた場合は、75%以上の生存率が見込めるとされている。
文献
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