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ちゅうさあしるこえーだっすいそこうそけっそんしょう
中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症Medium-chain acyl-CoA dehydrogenase (MCAD) deficiency

小児慢性疾患分類

疾患群8
先天性代謝異常
大分類3
脂肪酸代謝異常症
細分類45
中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症

病気・治療解説

概要

細胞内に取り込まれた長鎖脂肪酸は、ミトコンドリア内で脂肪酸の炭素長に応じた各脱水素酵素で順次代謝され、1ステップごとに炭素鎖が2個ずつ短くなってアセチルCoAに至り、エネルギー産生に寄与している。
中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症は、アシルCoAの中でも中鎖(炭素数4〜10)の直鎖の脂肪酸を代謝するMCADの欠損である。3〜4歳以下の、急性発症までは何ら特徴的所見や既往をもたない小児が、感染や飢餓を契機に急性脳症様/ライ様症候群様の症状を呈する。いったん発症すると死亡率が高く、乳幼児突然死症候群(SIDS)の一因として知られている。
タンデムマスを用いた新生児マススクリーニングの対象疾患であり、スクリーニングで発見されれば、飢餓を避ける食事指導でほぼ完全に発症予防ができる。

疫学

常染色体劣性遺伝疾患で、欧米白人では頻度が高い(1万人に1人)が、わが国での頻度は約13万人に1人と推定されている。

症状

新生児期にけいれん、意識障害、呼吸障害、心不全などで急性発症する新生児期発症型、乳児期以降に感染や長時間の飢餓を契機に、筋力低下、肝腫大(脂肪肝)、急性脳症様/ライ様症候群様発作、乳幼児突然死症候群(SIDS)などで発症する乳幼児発症型、稀ではあるが、中枢神経障害、骨格筋障害、肝障害、心筋障害などで学童期以降に発症する遅発型がある。

診断

診断の手引き

治療

急性期の治療
急性期は対症的な治療に加え、十分量のブドウ糖を供給し、早期に異化亢進の状態を脱する事が重要である。急性脳症様/ライ様症候群様発作として発症した場合は中心静脈ルートを確保し、グルコース投与量を6-8mg/kg/min以上を目安とする。

慢性期の治療
① 異化亢進の予防
発熱を伴う感染症や消化器症状(嘔吐・口内炎など)の際は、糖分を十分に摂るように指導し、経口摂取が出来ない時には、医療機関に救急受診し、血糖値をモニターしながら早期にブドウ糖を含む補液を行うことは、重篤な発作を防ぐためにも重要である。
② 食事療法
特に乳幼児においては食事・哺乳間隔を短く保ち、飢餓による低血糖を防ぐことが重要である。脂質摂取制限や特殊ミルクなどを用いた食事療法などの必要はない。但し、夜間低血糖を繰り返す場合、非加熱コーンスターチを1-2g/kg/回程度を内服する事がある。1歳未満の乳児では膵アミラーゼの活性が不十分であるため、非加熱のコーンスターチは乳児に開始するべきではない。MCTミルクは禁忌である。
③ L-カルニチン投与
MCAD欠損症に対するカルニチン投与は不要である。ただし、栄養状態などによってはカルニチンが低下する場合があるため、遊離カルニチン、アシルカルニチン値をモニターし、カルニチン投与によって正常下限程度まで血清遊離カルニチン値を上昇させるのが推奨される。

予後

飢餓を避ける食事指導で急性脳症様/ライ様症候群様の発作を予防できれば予後が良い。乳幼児期に急性発症した場合、その程度によって神経学的予後は左右される。

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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