えむえいちしーくらすつーけっそんしょうMHCクラスⅡ欠損症major histocompatibility complex class II deficiency
小児慢性疾患分類
- 疾患群10
- 免疫疾患
- 大分類1
- 複合免疫不全症
- 細分類9
- MHCクラスⅡ欠損症
病気・治療解説
概要
MHCクラスIIは単球、マクロファージ、樹状細胞、B細胞などの抗原提示細胞、胸腺上皮細胞に恒常的に発現し、外来抗原由来ペプチドをCD4陽性T細胞に提示する役割を果たす。MHCクラスII欠損症は1978年に最初に報告された疾患で、抗原提示が障害されるため獲得免疫が誘導されず、液性・細胞性免疫不全症を来す。Bare lymphocte syndrome type IIとも呼ばれる。
病因
MHCII遺伝子の転写調節因子の異常によってMHCクラスIIが欠損する。プロモーター領域のX box に結合する転写調節因子複合体regulatory factor Xの構成タンパクRFANK、RFX5、RFXAPの異常と、転写に重要な役割を果たすトランスアクチベーターであるCIITA (MHC2TA遺伝子)の異常が報告されている。いずれも常染色体劣性遺伝形式を示す。
疫学
2011年に報告された日本における免疫不全症疫学調査では、MHCクラスII欠損症疑いの患者は1名のみだった。世界でも100例程度の報告しかなく、まれな疾患である
臨床症状
細菌、ウィルス、真菌、原虫に対して易感染性を示す。重篤な経過をたどることが多く、移植を行わないと生後6ヶ月から16歳までに亡くなるものが多い。まれに軽症な患者が存在する。Candida albicans、Giardia Lamblia、Cryptosporidium感染による難治性下痢症をしばしば認める。Cryptosporidiumによる胆道炎、サイトメガロウィルスなどによる肝炎、ウィルス性脳炎の報告がある。血液検査ではCD4陽性T細胞数の減少を示す。ほとんどの患者で全ての免疫グロブリンの低下を認めるが、正常なものも存在する。既知の4つの原因遺伝子間で臨床像の明らかな違いは見られない。
治療
抗生剤の予防投与、ガンマグロブリンの定期補充が推奨され、難治性下痢症を示すものには完全静脈栄養が有用なことがある。造血幹細胞移植が唯一の根治治療であり、合併症の少ない2歳前に移植を行った患者の成績が良い。GVHDのリスクは他の免疫不全症と変わらないとされている。移植後も胸腺上皮細胞でのMHCクラスIIの発現が低いためCD4陽性T細胞は低いままとなる
合併症
好中球減少症や、自己免疫性血球減少症を認めることがある
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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