KIDしょうこうぐんKID症候群keratitis-ichtyosis-deafness-syndrome
小児慢性疾患分類
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病気・治療解説
疾患概念
全身皮膚に様々な厚さの鱗屑、魚鱗癬を生じる遺伝性角化異常症。皮膚の発赤(潮紅、紅皮症)の程度は様々である。本疾患の主なものには【5.Netherton症候群】、【6.Sjögren-Larsson症候群】以外の魚鱗癬症候群が含まれる。魚鱗癬症候群は、重症の先天性魚鱗癬に加えて様々な他臓器症状を伴うものであり、皮膚科的な治療に加え、合併する臓器症状に応じて小児科、眼科、整形外科、精神科などの専門領域での対応も必要となる。
代表的なものとして、KID症候群、Dorfman-Chanarin症候群、CHILD症候群、IFAP症候群などが知られている。KID症候群は常染色体優性遺伝性の疾患であるが、Dorfman-Chanarin症候群は常染色体劣性の遺伝形式の疾患であり、また、CHILD症候群、IFAP症候群は伴性劣性遺伝性の疾患である[1]-[5]。
病因
本疾患は魚鱗癬症候群のなかではめずらしく常染色体優性遺伝性であるが、稀な疾患で多くは狐発例である。病因は細胞間チャンネルであるギャップ結合の構成成分であるコネキシン26をコードする遺伝子GJB2の変異による[7]。ただし、無毛を合併した症例では、コネキシン30をコードするGJB6の変異によることもある。
臨床症状
皮膚症状は多彩であり、乳頭腫状角化、もしくは先天性魚鱗癬様紅皮症を呈する。乳頭腫状角化は特徴的な細かい粒状、棘状の形態をとり、とくに手掌、足底で顕著である。それ以外にも毛孔性角化性、紅色性角化性丘疹、疣状局面などの皮膚症状を呈し、口囲亀裂、脱毛、乏汗症、爪変形、皮膚の易感染性もしばしば指摘されている。
合併症
魚鱗癬症候群として、聴覚障害(感音性難聴)や角膜炎(血管増殖性角膜炎、羞明)を合併する[6]が、感音性難聴は9割の症例で重度の難聴を伴う。角膜の血管新生を伴う角膜炎では羞明を伴い、失明に至る例もある。
治療
本疾患では、皮膚に細菌、真菌、ウイルスなどの二次感染を繰り返す傾向があり、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス製剤などの十分なコントロールを受ける必要がある。また、皮膚癌、舌癌の合併例も報告されており、本疾患の予後と関連することがある[8]。
成人期以降の注意点
通常、成人期になっても皮疹の変化はみられない。
なお、コントロールが悪いKID症候群の症例では、成人期になって皮疹部への二次感染、掌蹠角化症による手指・足趾の変形や亀裂、角膜炎、難聴の増悪などがみられる。Dorfman-Chanarin症候群でも、成人期になって肝機能低下、難聴、精神遅滞、運動失調、白内障など各臓器の障害が悪化する症例がある。
いずれの疾患でも皮膚悪性腫瘍を合併する報告もあるため早期発見を努力する。
参考文献
1)池田志斈:先天性魚鱗癬様紅皮症(CIE)の臨床疫学研究.診断書と調査票の策定. 厚生労働科学研究費補助金. 難治性疾患克服研究事業(代表研究者 岩月啓氏). 稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究.平成20年度総括・分担研究報告書; 100-102, 2009.
2) 澤村大輔、池田志斈、 鈴木民夫ほか.:皮膚疾患遺伝子診断ガイドライン(第1版). 日皮会誌:122: 561-573,2012.
3)稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班による2011年最新版.先天性魚鱗癬様紅皮症とその類縁疾患.
4) 秋山真志:魚鱗癬・魚鱗癬症候群. 皮膚科セミナリウム 第10回角化症. 日皮会誌116: 1-9, 2006.
5)米田耕造:症候群に伴う魚鱗癬. 玉置邦彦ほか編. :最新皮膚科学大系 第7巻.角化異常性疾患. 中山書店 東京 2002, pp.103-127.
6) Skinner BA, Greist MC, Norins AL.: The keratitis, ichthyosis, and deafness (KID) syndrome. Arch Dermatol. 117 :285-289,1981.
7) Richard G1, Rouan F, Willoughby CE, et al.: Missense mutations in GJB2 encoding connexin-26 cause the ectodermal dysplasia keratitis-ichthyosis-deafness syndrome. Am J Hum Genet 70: 1341-1348, 2002.
8) Grob JJ, Breton A, Bonafe JL, et al: Keratitis, ichthyosis, and deafness (KID) syndrome. Vertical transmission and death from multiple squamous cell carcinomas. Arch Dermatol 123: 777-782, 1987.
9) Venencie PY, et al.: Ichthyosis and neutral lipid storage disease (Dorfman-Chanarin syndrome). Pediatr Dermatol 5:173-177, 1988.
10)Elias PM, Williams ML.: Neutral lipid storage disease with ichthyosis. Defective lamellar body contents and intracellular dispersion. Arch Dermatol 121: 1000-1008, 1985.
11) Akiyama M, et al.: Truncation of CGI-58 protein causes malformation of lamellar granules resulting in ichthyosis in Dorfman-Chanarin syndrome. J Invest Dermatol. 121: 1029-1034, 2003.
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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