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だいどうみゃくきゅうりだんふくごう
大動脈弓離断複合Interruption of aortic arch complex

小児慢性疾患分類

疾患群4
慢性心疾患
大分類57
大動脈弓閉塞症
細分類75
大動脈弓離断複合

病気・治療解説

概要

大動脈弓の一部が欠損・離断し、心室中隔欠損、心房中隔欠損、完全大血管転位、両大血管右室起始などの心内奇形を合併している心疾患。離断している部位によりA型(左鎖骨下動脈の末梢で離断)、B型(左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で離断)、C型(右腕頭動脈と左総頸動脈との間で離断)に病型分類されている(Celoria-Patton分類)。新生児早期から多呼吸、陥没呼吸、哺乳困難、尿量低下などの心不全症状が出現する。新生児期にはプロスタグランジンE1点滴が必要、また新生児期、乳児期早期に手術が必要である。

病因

左IV咽頭弓動脈の発生異常ないしは上行大動脈への血流減少が病因と考えられている。
大動脈弓の一部が欠損・離断し、心臓から駆出された血流は離断部よりも近位の上行大動脈およびその分枝にだけ供給され、離断部より遠位の大動脈の血流は肺動脈から胎生期の血行路であるPDDT(pulmonary-ductus-descending aorta-trunk)を介して供給される。従って、生存にはPDDTの開存が必須である

疫学

離断している部位によりA型(左鎖骨下動脈の末梢で離断)、B型(左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で離断)、C型(右腕頭動脈と左総頸動脈との間で離断)に病型分類されている(Celoria-Patton分類)。日本人にはA型が多く、B型は22q11.2欠失症候群に併発することが多く、C型は稀である

臨床症状

基本的には上肢には酸素化された血液が、また下肢には脱酸素化された静脈血が流れるために、下肢ではチアノーゼが出現する(differential cyanosis)。離断している部位の違いにより左上肢にもチアノーゼが出現する場合がある。なお、大血管転位を合併している場合には、上半身でチアノーゼが出現し、reversed differential cyanosisと呼ばれる。
PDDTが狭いと新生児早期から多呼吸、陥没呼吸、哺乳困難、尿量低下などの心不全症状が出現する。また、離断している部位により四肢の脈の触知に差が出現する。一方、PDDTが比較的太い場合には心不全の症状も遅れ、乳児早期になり出現する場合もある。この様な症例では四肢の脈の触知に有意差がない場合もある。
PDDTが閉鎖すればショック状態となる

診断

理学的所見が重要で、四肢に対する視診、触診が診断上有用である。必ず四肢の皮膚・爪床の色を観察し、脈を触知する。さらに、SpO2や血圧の測定を左右の上・下肢4カ所で行う。また、四肢のうち高・低2カ所のSpO2をモニターし、血行動態の変動をチェックする。心聴診所見では病態に伴った合併心疾患の心音、心雑音およびPDDTの雑音が聴取される場合がある。
確定診断には画像診断が有用である。非侵襲的方法としては心エコー・ドップラ検査、MRIが有用で、特にカラードップラによる形態・機能診断が有用である。さらに、心エコー・ドップラ検査は心内奇形の診断にも有用である。MRIも診断価値は高いが、MRI検査は深睡眠を必要とするので新生児期・乳児早期に施行する場合は十分な監視が必要である。低侵襲的方法としてはMD-CT(multi detector-row CT)があり、離断に関する形態診断はこれでほぼ診断がつく。新生児・乳児期では心臓カテーテル・心血管造影検査は省くことが多い。胸部X線、心電図も補助診断として有用である。胸部X線では心拡大、主肺動脈の拡大、末梢肺血管の増強が認められる。大動脈弓による左第1弓は認められない。心電図では合併心奇形にもよるが、多くの場合、右軸偏位、両室肥大を呈する。

治療

PDDTの開存療法が生命維持に必須であり、プロスタグランジンE1の持続静注を行う。心内奇形が心室中隔欠損、心房中隔欠損の場合には一期的に根治術として大動脈形成術と中隔欠損閉鎖術を行う。一方、複雑心奇形を合併している場合にはまず大動脈形成術と肺動脈絞扼術を行い、次に心内修復術を段階的に行う方法がある。

予後

近年、画像検査の進歩による早期診断と外科的手術成績の向上より、予後は比較的良好である。ただし、術後に大動脈弁・弁下狭窄が顕性化したり、大動脈弁逆流が出現することもあり、長い経過のfollow upが必要である

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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