ごーりんしょうこうぐん (きていさいぼうぼはんしょうこうぐん)ゴーリン(Gorlin)症候群(基底細胞母斑症候群)Gorlin syndrome; basal cell nevus syndrome
小児慢性疾患分類
- 疾患群11
- 神経・筋疾患
- 大分類6
- 神経皮膚症候群
- 細分類18
- ゴーリン(Gorlin)症候群(基底細胞母斑症候群)
病気・治療解説
概念
Gorlin症候群(ゴーリン症候群)は1960年Gorlin RJによって報告された発達上の奇形と遺伝性高発癌性を併せ持つ神経皮膚症候群である。別名母斑基底細胞癌症候群、基底細胞母斑症候群などとも呼ばれる。発達上の奇形には手掌・足底皮膚小陥凹、二分肋骨ないし癒合肋骨、椎骨異常、顎骨嚢胞、大脳鎌石灰化があり、発癌には基底細胞癌、髄芽腫、卵巣腫瘍の発生 がよく知られている。またGorlin症候群では早期診断、早期治療が望ましいが、症状が全身にわたるため診療各科を回り診断が遅れる傾向がある。
病因
Gorlin症候群の責任遺伝子はPTCH1であり、すでに100以上 の遺伝子変異が報告されている。多くは挿入・欠失変異であり、PTCH1のハプロ不全で発症するが、現在まで遺伝子型と表現型の関連は知られていない。 PTCH1はがん抑制遺伝子に分類されており、加齢や紫外線、放射線照射等による組織のLoss of heterozygosity (LOH)により、基底細胞癌等の腫瘍が発生する。
疫学
アメリカ人口では57000人に1人の有病率が示されている。日本国内では、2009年の厚生労働省難治性疾患克服研究事業の中でGorlin症候群の全国一次調査が行われ、300人を超える患者が確認され、有病率は少なくとも23万5800人に1人と推定されている。
臨床症状
発達上の奇形には、手掌・足底皮膚小陥凹、二分肋骨ないし癒合肋骨、椎骨異常、顎骨嚢胞、大脳鎌石灰化があり、発癌には基底細胞癌、髄芽腫、卵巣腫瘍の発生がよく知られている。それぞれの症状ごとに好発年令があるため、経時的に診察して早期診断、早期発見をすることが望ましい。
診断
現在までにアメリカ、イギリス、オーストラリアからGorlin症候群の診断基準が提唱されているが、中でもKimonis ら(USA) によって報告された診断基準が最も頻用されている。その内容は6つの大項目(基底細胞癌、顎骨嚢胞、手掌足底小陥凹、大脳鎌石灰化、肋骨異常、1親等以内の本症家族歴)と6つの小項目(大頭症、先天奇形、骨格異常、X線異常、卵巣線維腫、髄芽腫)からなり、その中で2つの大項目、あるいは1つの大項目と2つの小項目があれば、臨床的にGorlin症候群と診断することができる。
本疾患ではすでに診断基準が提唱されているため、主要症候があれば診断自体は容易だが、幼少期にはまだ特徴的症状が出現しないため、早期診断が困難な場合がある。また常染色体優性遺伝でありながら新規の突然変異が多く、家族歴が存在しない症例も多い。したがって臨床症状がまだ未出現であることが予想される状況では、PTCH1を始めとする遺伝子診断を考慮する必要がある。
治療
根本的治療はない。基本的に対症的であり、症状に応じた治療を選択する。
20歳過ぎに好発する基底細胞癌には外科療法と化学療法が行われる。近年、基底細胞癌と髄芽腫に対する様々な分子標的治療薬が開発され、現在米国で臨床試験が順次進行中である。今後はこうした新薬を中心とした新しい臨床治療の発展が期待される。
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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