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ぐるこーすろくりんさんだっすいそこうそけつぼうしょう
グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症Glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency

小児慢性疾患分類

疾患群9
血液疾患
大分類8
遺伝性溶血性貧血
細分類16
グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症

病気・治療解説

概念

赤血球酵素異常症は、赤血球機能を維持する上で重要な解糖系、ペントースリン酸回路、グルタチオン代謝・合成系、ならびにヌクレオチド代謝に関連した酵素の異常による。わが国の先天性溶血性貧血の原因で多く見られる赤血球酵素異常症では、解糖系酵素異常症としてピルビン酸キナーゼ(PK)異常症、グルコースリン酸イソメラーゼ(GPI)異常症、ペントースリン酸経路ではグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)異常症、そしてヌクレオチド代謝系ではピリミジン-5′-ヌクレオチダーゼ(P5N)異常症の頻度が高い。

疫学

わが国では、PK異常症とG6PD異常症が比較的多く、他はまれである。遺伝形式は常染色体劣性遺伝で、臨床症状を呈するのはホモ接合変異、ないしは複合ヘテロ接合変異で、まれにヘテロ接合変異でも軽度の貧血を呈することがある。G6PD異常症は赤血球酵素異常の中で最も頻度が高い疾患で、世界で4億人以上がG6PD遺伝子異常を有するとされる。G6PD異常症はX連鎖性劣性遺伝によるため発症するのはほとんどがヘミ接合体異常の男性である。女性のヘテロ接合体変異は通常臨床症状を呈さない保因者である。アフリカ、地中海沿岸、東南アジアでの頻度は高いが、日本人の頻度は約0.1%である。臨床上問題となる例はされにまれである。

原因

現在までに15種の酵素異常症が遺伝子レベルで病因解明がなされている。多くはミスセンス変異であるが、ナンセンス変異、塩基欠失、塩基挿入や異常スプライジングもある。通常、一次構造が正常とは異なる変異酵素が産生され、酵素活性の低下や酵素分子の不安定性により赤血球代謝を障害して溶血をきたす。PK異常症では、解糖系の障害によりATPの産生が低下し、脱水により赤血球は有棘赤血球となり、変形能を失い、脾内の網内系細胞に捕捉されることにより溶血する。G6PD異常症では、NAPDHの産生障害、更にはグルタチオンの還元に障害を来しており、赤血球が酸化ストレスに曝されると、ヘモグロビンは酸化・ストレスを来しHeinz小体を形成し、このような赤血球は網内系において溶血に至る。

症状

PK異常症では貧血、黄疸、脾腫、胆石症と、慢性溶血性貧血の一般症状を呈し、貧血は感染などのストレスで溶血が増強する。貧血の程度は異常酵素の性質により様々である。一般に、貧血・黄疸は幼・小児期に気付かれ、その程度は遺伝性球状赤血球症より重症である。G6PD異常症は慢性溶血例よりも、酸化的ストレスによる急性溶血発作が特徴的である。誘因として、薬剤、感染、手術、ソラマメなどが知られている。薬剤では抗マラリア薬、サルファ剤、スルホン剤、解熱鎮痛薬などが報告されているが、年齢、体格、遺伝的素因による薬剤代謝の個体差もある。感染などを契機に溶血発作(hemolytic crisis)やヒトパルボウイルスB19感染などによる無形成発作(aplastic crisis)をおこすことがある。

治療

PK異常症では、遺伝性球状赤血球症ほどの効果が得られないにしても、摘脾によりヘモグロビン濃度にして2g/dl程度の上昇が期待できる。頻回な輸血を要し、鉄過剰症などの危険性が高い例は摘脾の適応である。代謝異常に即した治療法は開発されていない。G6PD異常症では、まず溶血発作を惹起するリスクを避け、急性溶血発作をできる限り予防する。急性溶血発作を生じた場合には、十分な補液を行い遊離ヘモグロビンの尿中への排泄を防ぎ、急性腎不全に至ることを阻止する。ハプトグロビン製剤を投与することもある。慢性溶血例では、脾腫を認めるが摘脾は通常有効でない。抗酸化作用を有するビタミンE製剤の投与が有用であったとする報告もある。

予後

一般には天寿を全うする例が多いが、中には新生児期に死亡する例や頻回の輸血によりヘモジデローシスを合併し、成人に達するまでに死亡する重症例もある。

参考文献

1) 藤井 寿一:総合臨床 48:1, 1999
2) 別冊日本臨床 血液症候群(第2版) 2013
3) UpToDate®

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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