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遺伝性膵炎

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病気・治療解説

概要

遺伝性膵炎とは、遺伝により慢性膵炎が家族の中に多発する稀な病気です。遺伝性膵炎の定義として欧米では、①血縁者に3人以上の膵炎症例を認め、②若年発症、③大量飲酒など慢性膵炎の成因と考えられるものが認められず、④ 2世代以上で患者が発生していることを挙げています。我が国では少子化に伴い明確な家族歴を得ることが困難なため、厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班が策定した独自の臨床診断基準に基づき診断されます。

罹患数

2005年から2014年の間に全国の病院を受診した患者さんを対象とした全国調査では、100家系271症例(男性153例、女性118例)が報告されています(回答率 57.2%)。この結果をもとに、我が国における遺伝性膵炎の患者数は300-500人程度と推計されています。

疫学

遺伝性膵炎自体は遺伝子の異常によるものと考えられていますので、家族や親戚で膵炎の方が多い場合、通常の膵炎ではなく遺伝性膵炎の可能性があります。

原因

膵臓から分泌される消化酵素(食べ物を溶かす 酵素 )であるトリプシンの活性化と不活性化に関わる遺伝子異常が原因であることが明らかとなっています。最も多い遺伝子異常は、トリプシンの前駆体であるカチオニックトリプシノーゲン(PRSS1)遺伝子の異常で、我が国における遺伝性膵炎家系の約4割が該当します。次に多いのが、トリプシンの働きを抑える膵分泌性トリプシンインヒビター(SPINK1)遺伝子の異常で、約3割の家系が該当します。一方、残りの3割の遺伝性膵炎家系では、原因となる遺伝子異常は見つかっていません。

遺伝

原因となる遺伝子の異常がある場合には遺伝します。しかし、遺伝子の異常があっても、全員が遺伝性膵炎になるわけではありません。カチオニックトリプシノーゲン遺伝子異常を有する場合、8割から9割の方が遺伝性膵炎を発症するとされます。

症状

幼少期より腹痛、悪心、嘔吐、下痢などの急性膵炎様発作を繰り返し、多くは慢性膵炎へと進行します。慢性膵炎になると、膵臓から消化酵素が十分に出なくなり下痢や 脂肪便 、体重減少を起こす膵外分泌機能不全や、インスリンの分泌が減少することによる糖尿病を高率に合併します

治療法

原則として通常の慢性膵炎と同じ治療をします。慢性膵炎治療の基本は、“患者さんの背景(成因)をふまえ、臨床経過上の各病期に出現する症状とその重症度、活動性( 再燃 と 寛解 )に応じて集学的に治療する”ことにあります。すなわち、腹痛や急性膵炎の発作が症状の中心である代償期においては急性増悪の予防と腹痛のコントロール、膵臓の機能が低下した非代償期には消化吸収障害ならびに糖尿病の治療といった、膵外内分泌機能の適切な補充が治療の中心となります。一方、慢性膵炎は多分に生活習慣病的な側面があります。したがって治療においては、①断酒、禁煙といった生活指導、②病期に応じた食事指導・栄養管理、③薬物療法、④内視鏡(胃カメラ)による膵石や膵管 狭窄 の治療や手術が治療の柱となります。薬物療法や内視鏡治療などを考える際には、生活指導や栄養指導の徹底が前提になります。

経過

発症は幼少期であることが多く、腹痛、 悪心 、嘔吐、下痢などの急性膵炎様発作を繰り返し、多くは慢性膵炎へと進行します。慢性膵炎になると、膵臓から消化酵素が十分に出なくなり下痢や 脂肪便 、体重減少を起こす膵外分泌機能不全やインスリンの分泌が減少することによる糖尿病を高率に合併します。頻回な膵炎発作のための入院や疼痛コントロールのために内視鏡(胃カメラ)を用いた治療や膵臓の手術が必要となる症例も少なくありません。

患者さんに知って欲しいこと

飲酒や喫煙は、膵炎の進行のみならず膵癌のリスクを上昇させますので、厳に控えるべきです。食事に関しては、病気の時期に応じた注意が必要です。すなわち、腹痛発作が症状の中心で、膵臓の働きが保たれている代償期と呼ばれる時期には脂肪の制限を、一方、腹痛発作がなくなり、膵臓の消化やインスリン分泌といった働きが悪くなった非代償期と呼ばれる時期では、過度な脂肪制限は栄養やビタミン不足をおこしてしまうため、消化酵素薬を内服しながら、むしろ十分な栄養を摂ることが大切です。
※難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jpより、許可をいただき掲載しております。