がすとりのーま ガストリノーマGastrinoma
小児慢性疾患分類
- 疾患群5
- 内分泌疾患
- 大分類32
- 消化管ホルモン産生腫瘍
- 細分類74
- ガストリノーマ
病気・治療解説
概念
膵、十二指腸に発生するガストリン産生腫瘍からのガストリン分泌過剰による疾患。
病因
孤発性の腫瘍として発生するほか、多発性内分泌腫瘍1型(MEN1)の症状として現れることがある
疫学
2002~2004年に我が国で報告された膵内分泌腫瘍は514例で、うち8.6%がガストリノーマであった。悪性率は45.5%、多発性内分泌腫瘍1型合併率は27.3%であった。小児期には極めてまれである
臨床症状
胃酸過剰分泌による消化性潰瘍や逆流性食道炎(出血、腹痛、胸やけ)と、膵酵素不活性化による下痢がある。潰瘍の特徴として、治りにくい、容易に再発する、多発性潰瘍、十二指腸下行脚以降の潰瘍、穿孔などがある
診断
確定診断には、血清ガストリン濃度の高値と胃酸の過剰分泌が共存することを証明する。空腹時血清ガストリン濃度と、胃酸分泌測定検査あるいは 24 時間 pHモニター検査が必須であり、カルシウム静注試験またはセクレチン静注試験が有用である。MEN1 の合併の有無を診断するために、補正血清カルシウム濃度測定とインタクト PTH 測定が有用である。局在診断のため、US、CT、MRI、EUS検査、SASI (ASVS)テストが有用である。血清ガストリン濃度は、ガストリノーマ患者の 2/3 で正常上限値の 10 倍以下である。1,000 pg/mL 以上の症例ではガストリノーマが強く疑われるが、胃酸分泌抑制薬服用がなく、萎縮性胃炎もない患者で血清ガストリン濃度が 150 以上 1,000 pg/mL 未満の症例では、鑑別のため負荷試験を行うことが望ましい。胃切除後の患者では 80 pg/mL 以上で高ガストリン血症と判断する。胃酸測定は 24 時間胃内 pH モニタリングもしくは空腹時の胃内 pH を測定し、24 時間モニタリングでは pH<2 holding time が 90%以上のとき、空腹時 pH では pH<2 をもって過酸状態と判断する。ガストリノーマ患者の 99%で空腹時胃内 pH が 2 以下である。局在診断として画像診断(US、CT、MRI、十二指腸内視鏡)を行う。微小なガストリノーマの機能性局在診断として、セクレチンあるいはカルシウム溶液を用いる SASI テストが有用である。
多発性内分泌腫瘍1型(MEN1)に伴うことがある。MEN1 のガストリノーマは全例十二指腸に発生しており、十二指腸原発のガストリノーマでは特に MEN1 を強く疑って検索を進める必要がある
治療
ガストリノーマは、切除術によってのみ、根治できる。ガストリノーマと診断された場合、切除術が推奨される。十二指腸ガストリノーマに対しては、リンパ節郭清を伴う十二指腸切除術が推奨される。膵ガストリノーマに対しては、リンパ節郭清を伴う膵切除術が推奨される。内科的治療としては、ソマトスタチンアナログが推奨されるほか、エバロリムスが保険承認された。ガストリノーマによる消化性潰瘍の治療、下痢などの内分泌症状に対しては高用量のPPI が推奨される
予後
肝転移や骨転移が最大の予後因子であり,初診時に肝転移をもつ患者の5 年生存率は44~75%,10年生存率は12~47% と報告されている。びまん性肝転移の場合,5 年生存率が28~65%,10 年生存率は6~37%である。膵ガストリノーマが十二指腸ガストリノーマに比し予後が悪く,散発性ガストリノーマがMEN 1 ガストリノーマに比し予後が悪いのは,肝転移率の差に原因がある
参考
膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET) 診療ガイドライン 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン作成委員会
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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