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家族性良性慢性天疱瘡familial benign chronic pemphigus

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病気・治療解説

概要

腋(わき)の下や股(また)などに水疱(すいほう)という水ぶくれができる皮膚病です。中年以降に発症することが多く、治ったと思っても繰り返し同じ部位に再発する治りにくい病気です。腋の下や股間、肛門のまわりなど日頃から摩擦が多い部分にほとんどの患者さんで発症し、高温・多湿、摩擦(まさつ)、感染などで皮膚症状が悪化します。ATP2C1という 遺伝子の変異 によって起こる病気ですが、くわしい発病のしくみは完全に解明されていません。
治りにくいですが、再発をできるだけ抑えて症状を軽くする治療方法はあるため、初期の皮膚症状が軽いうちに早期に治療を始めることが大切です。

罹患数

腋の下や股がただれたようになるため、患者さんの多くが受診をためらい医療機関を訪れないことから、きちんと診断される機会が少なく、正確な患者さんの実数は世界的によくわかっていません。
欧米では人口約5万人に1人の割合と推定されています。この病気の日本人の患者さんの数についての正確な統計はありませんが、日本ではいくつかの資料・文献を元に、現在通院中の方などを加えますと300名程度ですから、少なくとも数百名以上の患者さんが日本にいると推定されます。

疫学

男女とも同程度で、青壮年期以降に発症することが多いとされています。

原因

ATP2C1という遺伝子にある 変異 が原因と考えられています。ATP2C1は皮膚の細胞のカルシウムポンプという箇所の遺伝子であることまでは解明されてきていますが、体内のカルシウムに関わる 遺伝子の変異 がある人では、なぜ皮膚に水疱が出来て治りにくくなるのかということまではまだ解明されていません。

遺伝

常染色体優性遺伝 と呼ばれる遺伝形式を示しますが、実際には、約3割の患者さんでは血縁者に発症者が見つかりません(孤発例と呼ばれます)。患者さんが孤発例の場合は、まだ発病していないその患者の弟や妹が将来的にかかる確率は極めて低くなります。しかし、両親のいずれかが発症者である場合は、男女に関係なく50%の確率で子供に遺伝します。また、孤発例のかたでも次の世代には遺伝の法則に従い50%の確率で遺伝します。

症状

腋の下や股、肛門の周囲、女性では乳房の下などの摩擦が起こりやすく皮膚の柔らかい部位に、水疱と呼ばれる水ぶくれが出来て、じくじくと湿潤(しつじゅん)します(図)。一度よくなったと思っても再度摩擦や高温多湿、多汗、紫外線や感染といった条件がそろうと、何度も再発をくりかえします。
再発を繰り返して治りにくくなると、皮膚が水分を含んで肥厚した状態(浸軟と呼びます)になりかゆくなり、さらに亀裂が入ってびらんになり、衣類などが少し触れただけでも痛みを伴います。また、高温多湿の夏期に悪化し、湿潤した皮膚の状態がつづくと二次感染を来します。その結果、水疱やびらんは、膿をともなったかさぶた(痂皮;かひ)へと変化していき“とびひ”(膿痂疹)と似ることがあり、強いかゆみや灼熱(しゃくねつ)感などの自覚症状が出現します。色素沈着を残すこともあります。下着や衣類が膿や滲出液(しんしゅつえき)で汚れたり、悪臭を伴ったりすることもあります。


図 腋の下の皮疹

治療法

根本的治療法はありません。悪化時には出来るだけ早期に症状が軽くなるように、かつ日常生活に支障を来さない程度の健康な皮膚の状態を長期間保てるようにする治療(対症療法と 寛解 状態の維持)を行います。
皮膚の症状に応じて、軽症から中等症では、副腎皮質ステロイド外用薬(塗り薬)を主に使用します。重症例ではステロイド薬を内服します。DDSの内服が有効とする報告もあります。

経過

冬に軽快を見せる一方で夏場に悪化する傾向にあります。経過は慢性で、急速に悪化と広がりを見せながら再発します。

患者さんに知って欲しいこと

高温・多湿を避け、患部を不潔にしないように気をつけ、擦れない様に保護に努め、出来るだけ乾燥させます。
具体的には、普段から低刺激性の石けんを十分に泡立てこすらずに洗い流すなどの工夫が、刺激を与えずに清潔に保つために必要となります。
湿った環境でじくじくと悪化するため、常に擦れあう部分の皮膚をさらさらに保つことが大変重要です。下着や衣類は肌に優しく刺激が少なく通気性の良い生地で、風通しがよく汗をかいても蒸れにくいデザインのものを選んで着用します。夏場に悪化して治りにくい場合は、汗をかいたらすぐに拭き取って乾燥させ、乾いた洗濯済みの清潔な衣類に着替えができるようにすることも必要です。患部からの滲出液が多い場合は、水分吸収パッドなどを下着と併用します。
エアコンなどで室内や車内の湿度や温度調整をして、発汗を抑え出来るだけ乾いた状態に保ちます。車のシートはメッシュカバーなどを用いてお尻の蒸れを抑え、温水洗浄便座で肛門周囲を清潔に保つようにします。

※難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jpより、許可をいただき掲載しております。