だいじゅうさんいんしけつぼうしょう第XIII因子欠乏症factor XIII deficiency
小児慢性疾患分類
- 疾患群9
- 血液疾患
- 大分類21
- 先天性血液凝固因子異常
- 細分類45
- 第XIII因子欠乏症
病気・治療解説
疾患概念
先天性血液凝固因子異常症はそれぞれの血液凝固因子活性が先天的に欠乏している病態である。血漿中の凝固因子抗原量と活性の関係から、抗原量と活性がともに欠如したType 1と、抗原量は正常量存在するが活性の欠如したType 2の二つに分類され、Type 1は凝固因子欠乏症、type 2は凝固因子異常症と定義される。血友病以外の先天性凝固因子異常症は血友病類縁疾患と総称されることもある。ほとんどの疾患が常染色体劣性遺伝であるが、フィブリノゲン異常症は常染色体優性遺伝である。
疫学
平成25年度血液凝固異常症全国調査(厚生労働省委託事業)において報告されている本邦における血友病以外の先天性血液凝固因子異常症の患者数を示す。発症頻度は血友病やVWDに比較すると圧倒的に少ない。
症状
凝固因子欠乏症では関節内や筋肉内といった深部出血が特徴といわれるが、鼻出血や皮膚の出血斑も多い。血友病類縁疾患の臨床症状は欠乏する凝固因子によっても様々である。新生児の遷延する臍出血はフィブリノゲン欠乏症や先天性第XIII因子欠乏症に特徴的である。またフィブリノゲン欠乏症や先天性第XIII因子欠乏症は自然流産の原因になる。
①先天性フィブリノゲン欠乏/異常症
フィブリノゲンは血小板の凝集、炎症反応の防御、組織修復・創傷治癒に関与し、妊娠の成立、維持の必須因子でもある。そのため先天性フィブリノゲン欠乏症では臍出血、頭血腫、消化管・頭蓋内・関節内出血、自然流産(習慣性流産)や創傷治癒の遅延が出現する。フィブリノゲン欠乏症の女性では排卵に伴う卵巣出血により腹腔内出血を生じることもある。一方、フィブリノゲン異常症では出血症状だけでなく血栓傾向を認める患者が約15%存在し、一部の患者では出血傾向と血栓傾向の両者を認める。自然流産の原因ともなり、分娩後に過多出血や血栓塞栓症が出現することもある。
②先天性プロトロンビン欠乏/異常症
皮下・鼻・歯肉出血、関節内・筋肉内血腫が生じる。異常症は無症候か比較的軽症である。
③先天性第V因子欠乏症
パラ血友病と称される。皮下・鼻・歯肉出血、月経過多、筋肉内血腫を生じる。重症例もあるが、血友病に比較して臨床症状は比較的穏やかで無症候例もある。
④先天性第VII因子欠乏症
皮下・鼻・歯肉・抜歯後・外傷後出血、月経過多を生じ、頭蓋内出血や胸腔内出血を認めることもある。血友病と比較すると症状が軽微であるが、凝固因子活性が1%以下の患者では重症血友病に類似した重症出血を生じることがある。
⑤先天性第X因子欠乏症
皮下・鼻・歯肉出血、外傷後過剰出血、月経過多、頭蓋内・関節内出血を生じる。出血の程度は第X因子活性と相関し、凝固因子レベルが1%以下の患者では、関節内、軟部組織、粘膜からの重症出血を生じる。
⑥先天性第XI因子欠乏症
血友病Cと称され、術後・外傷後出血を生じる。無症状も多く出血症状は比較的軽度であるが、線溶活性が亢進するため、線溶活性が高い部位での手術や外傷、抜歯時には出血傾向が強く現れる。
⑦先天性第XII因子欠乏症
通常出血傾向は認められない。
⑧先天性第XIII因子欠乏症
臍出血、臍帯脱落遅延、創傷治癒遅延、皮下出血、筋肉内・関節内出血、頭蓋内出血、自然流産(習慣性流産)を生じる。 第XIII因子は、フィブリンの架橋ならびにフィブリン塊の安定化に必須であるため、第XIII因子欠乏症では凝血塊が機械的に不安定となり、線溶系に対する感受性が高いため出血傾向を生じる。一時的に止血して24~36時間後に再び出血する後出血が特徴である
診断
治療
血友病類縁疾患の患者の出血時や手術などの観血的処置を行う際には、不足した凝固因子活性を補正するため血液凝固因子製剤や新鮮凍結血漿(FFP)による補充療法が行われる。FFPにはあらゆる凝固因子が含まれているが、含有する個々の因子量は限られているため必要量を補充しようとすると、過剰な容量負荷になる危険性がある。FFPの使用は他に安全で効果的な血漿分画製剤あるいはリコンビナント製剤などの代替医薬品がない場合にのみ適応となること、血液凝固因子欠乏症にはそれぞれの濃縮製剤を用いることが原則であるとわが国の血液製剤の使用指針では規定されている。FFPの適応は、凝固第V、第XI因子欠乏症、またはこれらを含む複数の凝固因子欠乏症のみである。投与量や投与間隔は患者の重症度と出血の程度、それぞれの凝固因子の必要な止血レベル、生体内半減期や回収率を考慮して治療計画をたてる。十分な凝固因子製剤の補充療法が行われていても、手術時の出血量などにより変動することがあるため、臨床症状と術前・術後の凝固因子活性のモニタリングを行い、適宜投与量、投与間隔を調整しながら止血管理を行う。FFPや血漿由来の凝固因子製剤の使用時には、感染症や同種免疫反応などの危険性を常に念頭におき、その適応を十分に吟味する。フィブリノゲン欠乏症、第XIII因子欠乏症では、重篤な出血症状の既往のある患者の場合、出血予防を目的として2~4週間ごとにフィブリノゲン製剤、第XIII因子製剤をそれぞれ定期的に補充することが試みられている。それぞれの疾患の止血治療薬、その半減期、止血に必要な最小必要濃度を下記に示した。
予後
生命予後は健常成人と同等と考えられている。出血頻度や関節障害の程度は欠乏する凝固因子の種類や程度によって異なるが、概して血友病に比べて少ない
参考文献
・公益財団法人エイズ予防財団 血液凝固異常症全国調査委員会: 血液凝固異常症全国調査平成25年度報告書. p10; 2014
・厚生労働省編: 血液製剤の使用指針. 血液製剤の使用にあたって第3版-輸血療法の実施に関する指針(改定版); 2005
・長江千愛, 他:その他の先天性凝固因子障害症の診断と治療. 血栓止血誌21:297-300; 2010
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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